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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第五章:帝国動乱編 第18話 余波 ― 壊されなかった理由

壊れなかった場所には、

必ず理由がある。


守られたからではない。

守ろうとした者が、

一人ではなかったからだ。


余波とは、

事件の残骸ではない。


それは、

人の選択が

どこまで届いたかを測る

静かな指標だった。

公開討議所への侵入事件は、

翌朝には

帝都中に知れ渡っていた。


噂は、

誇張され、

削られ、

形を変えて広がる。


「王が追い返した。」

「兵が踏み込んだ。」

「誰かが殴られた。」


どれも、

正確ではない。


正確なのは、

一つだけ。


“壊れなかった”。


***


帝都・南門近く。


別の集会所。


人々が、

昨夜の話をしている。


商人

「……結局……

 暴力は……

 出なかった……

 らしい。」


兵士

「……守備隊も……

 入らなかった……。」


職人

「……じゃあ……

 誰が……

 止めた……?」


沈黙。


誰も、

即答できなかった。


***


評議院。


第一評議員

「……討議所は……

 閉鎖すべきです。」


反王派

「次は……

 死人が……

 出るかもしれない。」


文官

「秩序維持の観点から……

 一時停止を……。」


ガルディアスは、

黙って聞いていた。


ガルディアス

「……昨夜……

 誰が……

 暴力を……

 止めた?」


沈黙。


第一評議員

「……王が……

 現場に……

 いたと……。」


ガルディアス

「……王は……

 命令したか。」


第一評議員

「……して……

 いません。」


ガルディアス

「……なら……

 閉じる理由は……

 ない。」


重い空気が、

議場に落ちる。


ガルディアス

「壊れなかったのは……

 王の力ではない。」


ガルディアス

「場を……

 “使っていた者”が……

 選んだからだ。」


***


討議所。


その日も、

人が集まっていた。


昨日より、

少し多い。


農民

「……怖かった……

 けど……

 逃げなかった……。」


商人

「……俺も……

 殴られる……

 と思った……。」


法学者

「……だが……

 誰も……

 手を……

 出さなかった。」


農民

「……理由は……?」


法学者は、

少し考え、

答えた。


法学者

「……ここが……

 “自分の場所”だと……

 思えたから……

 かもしれない。」


その言葉に、

頷きが起きる。


***


北方。


風なき地。


アリアは、

遠方の報告を

受け取っていた。


エリオン

「……討議所が……

 別の都市にも……

 広がり始めている。」


アリア

「……自発的に……?」


エリオン

「……ああ。」


エリオン

「名もない……

 集会所だが……

 同じ……

 三つの決まりを……

 掲げている。」


アリアは、

目を閉じた。


アリア

「……嬉しい……

 けど……

 怖い。」


エリオン

「制御できない。」


アリア

「……最初から……

 する気は……

 なかった。」


***


同時刻。


南西州レイザン。


例の法学者の元に、

一通の書簡が届く。


内容は、

簡潔だった。


『公開討議所における

 暴力未遂事案について、

 見解を求む。』


差出人は、

評議院。


法学者は、

紙を見つめ、

静かに息を吐いた。


法学者

「……試されている……

 のは……

 王だけじゃ……

 ない……。」


彼は、

筆を取る。


答えを書くのではない。


“なぜ壊れなかったか”を、

自分の言葉で

説明するために。


***


夜。


帝都の空。


風が、

少し強く吹いた。


討議所の灯りが、

揺れる。


だが、

消えない。


それを見上げ、

一人の市民が呟く。


市民

「……壊すより……

 残す方が……

 難しいんだな……。」


誰に向けた言葉でもない。


だが、

確かに――

帝国のどこかで、

同じことを

考え始めた者がいた。

この流れを

“制度として回収しよう”

とする動きが現れます。

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