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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第五章:帝国動乱編 第12話 亀裂 ― 正しさが分かつもの

正しさは、剣よりも鋭い。

剣は、向かい合う相手だけを傷つける。

だが、

正しさは――

同じ方向を見ている者同士を、静かに引き裂く。

帝国は今、

勝者と敗者ではなく、“信じ方の違い”によって、二つに割れ始めていた。

帝都。

数日後。


公示板の前に、

人だかりができていた。


紙には、

簡潔な文が貼られている。


『再開発に伴う移住は、

 予定通り実施される。

 住民記録は保存対象とする。』


それを読んだ人々の反応は、

真逆だった。


市民A

「……記録が……

 残るなら……

 意味は……

 ある……。」


市民B

「……結局……

 追い出すんだろ……?」


同じ文。

同じ事実。


だが、

受け取り方は、

完全に分かれていた。


***


評議院・非公式会合。


反王派の貴族たちが、

静かに集まっている。


貴族A

「……王は……

 感情を……

 政治に……

 持ち込みすぎだ。」


貴族B

「記録など、

 統治に……

 何の意味がある。」


貴族C

「民の同情を……

 買っているだけだ。」


沈黙。


貴族A

「……支持者と……

 反発者が……

 はっきり……

 分かれ始めている。」


貴族B

「このままでは……

 帝国は……

 割れる。」


貴族C

「……ならば……

 主導権を……

 取り戻す……

 必要がある。」


その言葉が、

静かに、

重く落ちた。


***


一方。


市井。


小さな集会が、

自然発生的に、

各地で生まれていた。


テーマは、

同じ。


「王は、

 正しいのか。」


商人

「……俺は……

 ありがたいと……

 思ってる……。」


兵士

「……判断を……

 任された……

 気が……

 する。」


役人

「……責任が……

 重すぎる……。」


誰も、

完全には

納得していない。


だが、

誰も、

無関心ではなくなった。


***


皇城。


高窓の回廊。


アリアは、

一人、

立っていた。


風は、

弱い。


だが、

止んではいない。


エリオン

「……分裂が……

 始まっている。」


アリア

「……うん。」


エリオン

「王の在り方が……

 人を……

 選別している。」


アリア

「……選別じゃ……

 ない。」


アリア

「……照らしてる……

 だけ。」


エリオン

「光は、

 影を作る。」


アリアは、

黙った。


それを、

否定できなかった。


***


同じ夜。


帝都の外れ。


密やかな集会。


反王派の若手貴族が、

声を落として話す。


若手貴族

「……民が……

 王の言葉で……

 動きすぎている。」


別の男

「……危険だ。」


若手貴族

「王は……

 命令していない。」


若手貴族

「……だから……

 止められない。」


沈黙。


別の男

「……なら……

 “選択”を……

 制限する……

 必要が……

 ある。」


若手貴族

「……方法は?」


別の男

「……正しさを……

 独占する。」


その言葉は、

まだ抽象的だった。


だが、

方向だけは、

はっきりしていた。


***


翌朝。


帝都の一角で、

小さな衝突が起きる。


王を支持する者と、

否定する者。


拳は、

振るわれなかった。


だが、

怒号が飛び、

互いを指差す。


市民

「……王は……

 俺たちを……

 見てる!」


別の市民

「……見てる……

 つもりな……

 だけだ!」


守備兵が、

間に入る。


誰も、

悪人ではない。


それが、

最も厄介だった。


***


夜。


皇帝ガルディアスは、

報告を受けていた。


側近

「……支持派と……

 反対派の……

 溝が……

 拡大しています。」


ガルディアス

「……当然だ。」


ガルディアス

「正しさは、

 人を……

 集めも……

 分けも……

 する。」


側近

「……王を……

 抑えますか。」


ガルディアス

「……いや。」


ガルディアス

「この亀裂は……

 避けられぬ。」


ガルディアス

「問題は……

 誰が……

 利用するかだ。」


皇帝の視線が、

暗い窓の外へ向く。


帝国は、

まだ壊れていない。


だが――

音を立てず、

確実に、

ひび割れ始めていた。

この亀裂を、

誰かが意図的に

“広げる”行動に出ます。

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