狂喜
その夜、怜央の父が所有しているうちの1つの廃工場に怜央はいた……
冷たい蛍光灯の光が、机の上のファイルに淡く反射する。
そこには、今日仕掛けた“実験”の結果が詳細に記されていた。
誰が恐怖で声を震わせ、誰が羞恥で手足を硬直させたか
誰を追い詰めると、心底震えるのか
玲央は椅子に深く座り、指先でファイルをなぞる。
その表情は、完全な恍惚。
目は細く笑い、唇の端がわずかに吊り上がる。
「…こんなにも人は面白いのか」
彼は映像を再生する。
密室で震える男の手
小さく泣きながら助けを求める女
その姿を何度も何度も何度も何度もリプレイし
怜央は果てるのだ。
玲央は口元を隠すように手を当て、吐息混じりに笑う。
心の中で繰り返す。
「もっと…もっと苦しめ…」
部屋中に静寂が漂う中、彼の目だけが鋭く光る。
苦痛の反応は、数字や記号のように頭の中で整理される
その瞬間瞬間が、彼の快楽そのもの
玲央は椅子から立ち上がり、微かに背筋を伸ばす。
誰も気づかない、誰も逆らえない――
恐怖と絶望に満ちた人々を支配し、楽しむ悦びが、彼を満たす。
「…ああ、面白い。人の心は、こんなにも脆い」
狂気は抑えきれず、静かに、しかし確実に、彼の全身を貫く。
ここでは、命も感情もすべて遊び道具。
人の苦悶こそが、玲央の悦楽そのものなのだ。