右腕
自分の表と裏どちらにも莫大な金が必要と考えた怜央。
そこで裏金作りと組織化を計画していた玲央は、
忠実に任務を遂行する右腕が必要だと考えていた。
標的は黒田という男――
ある宗教団体の活動でPR活動に訪れた時初めて出会った。この男が欲しい。と
頭脳明晰で忠誠心を育てやすい人物だ。
玲央は密かに、黒田の妹が通る帰宅ルートを調べ上げ、事故を精密に仕組む。
信号タイミング、歩行者の動き、車の位置――すべて計算済み。
その日、事故を計画的に起こした玲央は影から巧みに介入し、事故後に偶然を装い妹を介抱する。
黒田の目には、妹を救った「偶然の英雄」が現れたように映る。
実際はすべて玲央の仕組んだ演出だった。
数日後、玲央は黒田を呼び出す。
「妹さんは無事だ。安心していい」
黒田は心底安堵し、感謝の涙をこぼす。
「命の恩人…一生、恩を返します!」
玲央は淡々と条件を提示する。
「その恩はここで返してもらえるかな。君には僕の組織の運営を任せたい」
黒田は迷いなく頷く。
妹を救った恩人だと信じている
その恩義で心理的に縛られた右腕
表向きの忠誠ではなく、心底から従う忠誠
表向きの完璧な社会人、裏で冷徹な計算者――
玲央は、この二重生活の中で完全に操る右腕を手に入れた。