目覚め
大学生になった玲央は、キャンパス中から称賛される存在だった。
学業優秀、サークル活動も完璧、教授陣からも「未来のリーダー」と期待される。
友人たちは口を揃えて言う。
「堂嶋君、なんでそんなにできるの?」
玲央は微笑むだけ。
その微笑みの奥には、他人の心理を読み取り、行動を操る冷たい計算があった。
ある日、大学の研究室で、新しいサークル企画の実験が行われた。
それは動物実験を伴う心理学の簡単なプロジェクトだった。
教授の目を盗み、玲央は動物の反応を観察するだけで満足せず、実験対象に小さな苦痛を与える方法を試してみた。
「反応が面白い…」
声に出さず、静かに楽しむ。
その瞬間、心の奥底にある快感が目覚める。
他人の感情や行動を操ることだけでは飽き足らず、苦しむ対象を見て、自分が支配している感覚に陶酔する自分に気づいたのだ。
さらに、キャンパス内での人間関係にも応用する。
小さな嘘で友人を動揺させ
些細な情報で優越感を味わい
周囲の弱みをこっそり利用する
すべてが楽しい。
すべてが支配の道具になりうる。
夜、部屋でノートを広げ、クラスメイトやサークルのメンバーの情報を書き込み、観察結果を符号で整理する。
紙の上の数字や記号は、単なるメモではなく人の心理を操る地図であり、同時に自分の欲望を増幅させる装置だった。
玲央の瞳は鋭く光る。
笑顔の下に潜む冷酷さは、もう完全に芽生えていた
――
表の完璧さと裏の残虐性が、完全に共存する瞬間だった。