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策を練る
中学に進学した玲央は、相変わらず周囲から愛される存在だった。
クラブ活動では後輩の面倒を見て、教師にも褒められる。
「堂嶋君は、将来絶対に立派な大人になるね」と担任が笑う。
ある日、学級会で小さな問題が起きた。
クラスの予算で部活の用具を買うか、修学旅行の費用に回すかで意見が割れていた。
皆が意見をぶつけ合う中、玲央は静かに観察する。
そして、ひとりひとりの性格や弱みを思い浮かべながら、絶妙な一言で全員を納得させる。
「じゃあ、予算の半分は部活に、残りは旅行に回そう。誰も損しない方法だよ」
クラスメイトは「さすが玲央君!」と称賛する。
教師も「本当に君は、バランス感覚がすごいね」と感心する。
しかし、その裏では――
玲央は密かに、紙に名前を書き、小さな記号を添えていた。
誰に何を頼めば自分の思い通りに動かせるかを、淡々とメモしていたのだ。
まるで遊びのように、しかし無意識に、人の心を操作するための下準備だった。
玲央の瞳は静かに輝く。
それはまだ子供の目だが、何かを見据えているような鋭さがあった――。