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英雄
玲央はまだ小学生だったが、父譲りのカリスマ性を自然と身につけていた。
学校では、友達が困っているとさっと手を差し伸べる。
宿題を忘れた友達にノートを貸し、いじめられている子には静かに肩を貸す。
教師たちも「堂嶋君は素晴らしい子だ」と褒めたたえる。
ある日、校庭で小さな火事が起きた。
玲央は怖がる友達を励ましつつ、持ち前の判断力で大声で指示を出す。
水を運ぶ役割を率先し、みんなを安全に避難させた。
その姿を見た先生や友達は、まるで小さな英雄を見たかのように拍手した。
帰宅後、父が微笑む。
「玲央、お前は誰かを導く才能がある。忘れるな」
玲央はにっこり笑って答える。
「うん、楽しかった」
しかし、庭の隅で見えない角度から、玲央は小さな紙切れを拾い、指でそっと折り曲げた。
それは誰も知らない、小さな秘密――ただの子供の遊びのように見えるが、後に巧みに人を動かす
「初めての計算」
の感覚の始まりだった。