第十九録:与えらたのは─ 一節「与える側」
──それから私たちはロボットを
ドロシーと名付けて部屋に連れ帰った。
ドロシーは興味深々な様子で部屋を走り回る
楽しそうな電子音が響く。
「楽しそうね」
「だね…あ、ドロシー!」
走ることに夢中になってなっていたせいか
棚に車輪が当たりころげてしまう。
"(><)"
ディスプレイに顔文字が表示された。
ニックは慌ててドロシーの元へ行き起こしてあげる
それに感謝する様にアームを上下させる
"ありがとう!"
微笑ましい光景、私は思わず笑みが溢れる。
その時、部屋のドアがノックされた。
入ってきた研究員。
「エミリー、実験の時間よ」
呼ばれた私は部屋から出て
研究員の後についてゆく、会話はなく黙々と廊下を進む。
案内された部屋に入室。
「待っていたよ…始めましょうか」
部屋にいたのはこの警戒の副主任、であるカトレア・ウィンストン。
無表情な彼女はそれだけ短く告げると
端子を繋ぎ、幾つかの短い映像やテストを淡々とこなしていく。
感情がどう育っているのか?感じているのかを
日々数値化をしてゆく。
味気のない流る作業の様な実験が終わり退室
柏木博士のおかげで研究員との関係は悪くはないが彼女は別だった。
いつも無表情を貫いている様に見えるがどこか
違和感を感じることがある。
…こう思ってしまうのは恐らく研究員の会話を聞いてしまったせい。
この計画の立案したのはカトレア副主任らしいが
柏木博士に反対、一度は頓挫した様だ
それからどういう訳か計画が許可されたが主導は柏木博士
それを良く思ってないとか…真意はわからい。
私が事実のドアを開くと地べたに座るニックと
対面で静かに鎮座していた。
「エミリーお疲れ様!ドロシーに色々と教えていた所なんだ!」
"エミリー!エミリー!来た!"
ニックが教えていたのか私の名を呼ぶドロシー
ディスプレイには笑顔が表示されていた。
二人に近づき私はニックの隣に座る
「えぇ私がエミリー、よろしくね」
アームを掴み握手を交わす。
"うん!よろしく!よろしく!"
目の前をグルグルと走るドロシー、愛嬌のある動作などはまだプログラム。
これから二人でこの子を育てていく。
日々の楽しみが増える事に嬉しくなり笑顔になる。
"エミリー!笑顔!素敵!素敵"
「ありがとう」
ドロシーと過ごす日々は幸せだった、時間がすぐに過ぎてゆく
それに比例してドロシーの人工知能が育っていった。
独り立ちとはいかないが一人で研究所内を
走り回る日が増えて研究員とも話すことが増えた。
そんな生活に陰りが見え始めたのはドロシーの一言。
"柏木!カトレア!仲良くない!"
確かに二人は噂もあり主任、副主任と言う関わりが
ある役職にも関わらず最低限の交流しかしない
私も話しているところを二、三回見た程度
「それは…まぁそうね、仲が良いといいんだけどね」
「ドロシー、人と関係を持つとは複雑で
難しいものなんだ…どちらが悪い訳じゃないさ」
ニックは諭す様に話しかける。
どうしても相性というものが邪魔をする。
それに噂が本当ならカトレアは博士に
嫉妬をしているず…時間が解決してくれるだろうか?
"?…でも仲良くが一番!"
純粋で無垢な子供の様な思考。
でも…私もドロシーとは同意見だ
悪いより良い方が気持ちが晴れやかになる。
「ドロシーも感情が理解できればいいのにね…」
ポツリと呟いてしまった。
人工知能であるドロシーには感情の機能は搭載されていない
私たちの顔や声色で感情を判断している。
「感情か、なぁエミリー…ドロシーにも感情を与えてみないか?」
「え?」
ニックからの思わぬ提案だが魅力的でもある
ドロシーが感情を理解すれば今よりももっと深く繋がれる…
しかしそんな大層なこと私たちの独断でしてよいのだろうか?
「…博士は情報を与えてはいけないと言っただけさ!
感情を魂を分けてはいけないとは言っていない」
言われなかっただけでそれが良くはないことは
私もニックもわかっているでも…
「……秘密に?」
「そう!3人だけの秘密、魅力的だろ」
"秘密!秘密!悪い事?"
画面にハテナマークが表示される
「いやドロシー秘密はね大事な約束さ」
悪戯な笑みを浮かべるニック。
ドロシーはそれに対してその場でくるくると回り始める。
"約束!大事!3人だけ!"




