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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第三章:アルカラド編
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第十八録:果てなき欲を見た人工知能 五節「記憶」

─えるか?──エミリー、聞こえるか?

私は…ホワイト…違う、エミリー…試験体番号001エミリー。

そして、隣にいるのは同じく試験体のニック

「ええ、ニック聞こえてるわ」

声がでる、私は女性の声だった。

体が勝手に動き言葉も意思と関係なく発せられる

まるで…主観の映画を見ている様な感覚。


私はニックから差し出されたとを取り立ち上がる

顔が横を向くと鏡が目に入った。

その姿に驚きを隠せない、人の女性がいた。

だが生身の人ではない、ヒューマノイド。

全てが人工的で工学的な身体。

明るい研究所を私とニックは歩く。

廊下の窓から見えるのは陽が差す街

活気にあふれて人々が往来する。


長い廊下を進みたどり着いた一室。

ニックがノックをしてドアを開ける

私はそれに続いて入室した。

中には一人の人間が椅子に座り

キーボードを打っている、その人物は私たちに顔を向ける。

「やぁ、時間ぴったりですね」

初老の男性、少し嗄れた声だが優しさを感じる

あぁ…段々と記憶が明瞭になっていく。

よく知るその人物──


「柏木博士、こんにちは」

「はい、こんにちは」

柏木博士、私たちの計画の主任。

…計画がはじまる前は反対をしていた

様だったと他の研究員から聞いた。

でも柏木博士が私たちの事を一番気にかけてくれる…良い人。

「じゃあ二人とも座って手首の端子出してください。」


言われた通りに行動し手首内側の

端子部分を露出させると、博士はケーブルを差し込む。

カチカチとマウスを動かして画面を覗きこむ博士。

「うん…うん、機体も魂も問題なさそうですね。

システムも安定していると…はい、終わりましたよ」

データを全て取り終えた博士は端子を抜く


「どうですか?なにか不安な事、不便なことはありませんか?」

「いえ!みなさん良くしてくれています!」

「はい、特に不便はありません…ただたまに寂しさを感じます」

「ふむ!…そうですか、では二人とも

 何か育ててみますか?例えば…少々お待ちを」

博士はガサガサと部屋の奥の方

クローゼットをから小袋を取り出して私に差し出す。


「博士…これは?」

「これは花の種です、試しに二人で育ててみてください

 …心を込めて育ててみてください。」

私たちは種をもらい部屋から退室する。

自室に帰り早速準備を整えて種を植えた。

「なんの花なんだろう?」

「咲いてからの楽しみというやつだな」

その後は時間を空けて私たちは午後の実験へ


これが私たちの日常だった、試験体のニックと共に過ごし実験や検査を行う。

辛いことはなかった様に思うのはこの時の私もニックも

負の感情を理解しか出来ていなかったからだ、ほんとうの苦しみを知らなかった。

私の思案をよそに記憶の時間はどんどん進んでゆく。


数ヶ月が経った日、博士から貰った種は見事に花を咲かせた。

「綺麗に咲いたね!」

「あぁ!…この花はセントポーリアと呼ぶらしい

 一年中花を咲かすらしいよ」

世話をして育てた花が咲く、なんとも嬉しく達成感が胸を埋める。

しばらく二人で窓際の日光が当たる

白い花を眺めた、すると不意にニックが口を開いた。


「花以外も育ててみたいなぁ…」

「例えば?」

「動物…とか?」

「許可が降りるかな」

「明日、博士にお願いしてみよう」

ニックと過ごす日々は楽しかった

私たちは強制的に生み出され、ここにいる。

だがニックは前向きで明るかった。


後日、博士にお願いをしてみた

かなりダメ元の提案、案の定博士は渋い顔をしていた

「うーん…動物は今すぐにとはいきませんが

 この子なら私の裁量でいいでしょう」

博士が取り出して机に置いたのは、小さなロボットだった。

「この子は君たちとは違って魂も人工シナプスも

 内蔵していない純粋なロボットです。」

博士はロボットのスイッチを入れる

ピコン、短い電子音が響くとロボットが起動

"ハロー!"

スピーカーから電子的な声が聞こえる。


「この子は純粋なAIしか搭載していません

 君たちが学んだ数ヶ月の感情や考えで

 この子を正しく育ててあげてください。」

「はい!」

「よろしくね」

私はロボに向かって指を差し出すと小さなアームで握ってくれる


「あ、ただしこの子と自分たちを繋いで

 情報を与えるのはダメですよ?」

「もちろんです!」

アハハと笑う博士とニック。

…この時の私たちはまだ知らなかった。

静かに忍び寄る狂気に、憎悪に、理解ではなく

深く体験することなど…つゆほども知らず。

ただ日々が続くと、そう思っていた。

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