第十六録:渓谷都市ディープホワイト 五節「潜む者」
「…神の文明ね。」
「ここはまさに失われた魔法技術の結晶ですわ!」
「そんなにすごいのかのう?」
「それはもう!わたくしたちの扱う魔法は基本的に
多人数を前提に扱うのは魔力の問題もありますが
多人数でなければ魔法式を処理しきれないのですわ。」
「この失われた技術が可能にするのは魔力消費軽減と圧倒的な魔法式の軽さですわ!」
「ちなみに再現しようとしてできたのが魔術よ」
興奮ぎみに語るレミリアと補足を入れるネローズ
変わらない暗い廊下を進んでゆく。
カツ、カツと俺たちの足音だけが廊下にこだまする
下の街に降りるための階段を探す、幾つかの扉を
開けたものの何かしらの個室があるばかりで次に繋がる道がない。
「道ないねー!どこだろ?」
「ここまで来てないとはね!反対側だったかな?」
今しがた歩いてきた道を振り返る。
長く、奥は暗闇が支配していた。
「流石に一箇所しか降りる場所がない事は無いと思うんだがなぁ…」
「ひとまず端まで行くかのう?」
「ですわね、戻るのはそれからにしましょう」
相談の結果、この廊下の突き当たりまで行くことにした。
うにゃん?んにぃ?
影から出てきたコイスケは廊下の奥の方をジーっと見つめている。
「コイスケ?行くぞ?」
にゃんにゃーにゃんにゃ!!
声を掛けると元気に返事をして着いてくる。
…なにか居るような…気のせいか?
少しだけ後ろ髪を引かれるが俺は歩き出す
10分、歩いた先の扉を開くとそこには─
「まさか昇降機しかないのかな!」
ハハと笑うウルの目の前にはリフトがあった
かなり大型の物で20人は余裕で入る代物。
「動く…のか?」
「わたくしたちの出番ですわね」
「あー…魔道具かぁ」
機器類に該当する場所に魔力を流す
レミリアとその周囲を調べるネローズ。
「不具合は無さそうですわね…どうネローズ?動かす事はできそう?」
「大丈夫よ、コレ単独で完結しているわ
ありがたいのは魔力を流すだけで動くことね。
中は完全にロストボックスよ」
「じゃー!下に行けるのー?」
「そうね、早速動かすわよ」
ブランカは無邪気で楽しそうに問う
ネローズは魔力を流す、するとゴウンと音を立ててゆっくりと動き出す。
「…順調だな」
「いいことじゃないか!」
「まぁ、そうなんだがゴーレムとやらがまだ現れて無いのが不安だ」
「ハハ!多分下じゃないかな?」
ウルは街を指差す、なるほど街の警護を
いまだにしているのか…なんとも物悲しい気持ちになる。
「街にいるならそこは調べられておらんのか?」
「…過去、ここを調べようとした者たちは
口を揃えて"街に怪物がいる"らしいですわ。」
「詳細もわからないね!なんせ誰も語らないからさ!」
「えぇ…なんだそれ?報告義務とか無いのかよ」
「ないんだなこれが!だから下に着いたら即戦闘もありえるよ!」
「おま、そういう事は早く言えよ!」
ハハと笑うウルを横目にそれを聞いて俺たち全員は戦闘態勢を整える。
つまり、俺たちはこれから未知の敵と戦闘になる…正直言って不安でしか無い。
ガコン、軽い振動と共にリフトが止まった。
辺りを警戒するが特に何も無い。
夜天羅、ネローズ、レミリアの三人の反応もない。
「来ない…のか?」
「…逆に不気味だね!」
にゃ?にゃん!
コイスケが俺の足をペシペシと叩く
「どうした?」
俺は視線をコイスケへ向けるとコイスケは
ある一定の方向を凝視していた、その方向へ俺も視線を向ける、そこには──
「なんだあれ?」
建物の影から小さい何かがこちらの様子を伺うように顔を覗かせていた。
俺の視線に気がつくと慌てて身を引いて逃げていった。
「どうしんだい?」
「いや…なんか変なヤツがこっち見てたがどっか行った」
「…この三人の目を掻い潜ってかい?」
ウルの言いたい事はわかる
この三人の探知能力は高い、それは疑いようがない。
「魔力、生命探知にすら反応のない者ね…厄介よそいつ」
「こうなると注意して進む以外ないのう」
「だな…コイスケまた教えてくれよ」
にゃん!!
コイスケをひとなでするとまるで
任せろと言わんばかりの自信に満ちた鳴き声を上げる。
俺たちは周囲に警戒しつつ歩いてゆく。
相変わらず薄暗い街中を照らす、統一された様に白い建物が目に映る。
「にしても広いな…コレだけの街を地下に作ったのか」
「すごいよね!不思議なのはなぜこの様に
隠す様に街があるのか判明してないらしいね!」
「主な説として閉鎖都市だと…
ここ丸ごと魔法技術の研究所なんて言われてますわ」
それを聞き合点がいく、違和感があったのは都市全体の色調の統一だ
研究所と言われれば納得が行く、都市と呼ぶにはあまりにも無機質。
それに隠す様に存在している事がその説を補強してしまう。
何かやましい事をしてたんだと邪推してしまう
「なぁ…遺物は探さないのか?」
「いやぁ!それなんだがゴーレムを
倒して済まそうと思ったんだけどさ!現れないね!」
「…お前って案外脳筋だよな」




