第十六録:渓谷都市ディープホワイト 四節「侵入」
「うおぉぉ…これはまた」
「はー完全に裂け目じゃな〜」
にゃんにゃー
今、俺たちは渓谷の側にいる。
馬車で3日、休息所から徒歩で数時間ののち
到着したそこはまさに断崖絶壁の谷だ
ここが過去に渓谷だったとは信じられない
地形の変化があったとは言っていたが…
自然にここまでなるものなのか?
「底が見えないね!」
「わ、わぁー…」
震えた様子で寝そべりながら渓谷を覗き込む
ブランカ、その側ではレミリア、ネローズが何やら準備を始めた。
「ヨリツグさん、コレを腕に付けてください」
レミリアから手渡されたのは腕輪だった。
俺はそれを両腕に装着する。
「付けたぞ」
「では…接続開始、魔道具"ホロウチェイン"起動」
言葉ともに腕輪が淡く光を帯びた。
さらにレミリアは浮遊魔術を使用し浮かんだ
と思ったらつられる様に俺も浮いた。
んにゃ!?にゃんにゃにゃん!
肩に乗っていたコイスケは少し
驚き強く俺にしがみついている。
「おお!?」
「魔眼の件で不安ではありましたが
無事に害がないと判断された様でよかったですわ」
渓谷にどうやって降りるか疑問だったが
全員でこの腕輪を装着して降りてゆくのか。
「すごいな!」
空中に浮くなんてなんとも不思議な感覚だ
少し楽しくなり無重力に身を委ねる。
「この魔道具は使い捨てな上に稼働時間が
数十分しか持たなくてね!早速降りようか。」
皆が準備をしている所を浮かびながら
ぼーっと見ていた、するとウルがふわっと浮かぶ。
「親機であるヨリツグのヤツが起動しているから
私たちは付けるだけで即起動するからね」
ネローズは腕輪を装着し終えると
言葉通り浮かび上がり立位の姿勢を保つ
「お〜!すごいのう!」
「飛ぶの久々だぁー!」
夜天羅は俺と似た様な反応。
ブランカはまるで泳ぐ様に手足を動かしている
「それじゃ、行きますわよ!」
んにゃ!!
コイスケは何かを察知して急いでおれの影の中に潜む。
「えっ」
俺と夜天羅の声が重なる。
瞬間、急加速の重力に襲われた、さながらジェットコースターのようだ。
「のじゃぁぁぁぁぁ!!お前様ぁ!!」
急に始まった絶叫アトラクションに夜天羅と抱き合ってしまう。
せめてもの維持で声を上げるのは我慢した。
それから十分は降っただろうか。
変わらず抱き合っているが慣れてきて
比較的落ち着き周りを見てみる。
「白い…壁?」
明らかな人工物の壁が現れた。
鉄…なのか?明らかに文明レベルが違う。
いきなりSFチックになった気がする…神が関わっているからだろうか?
「着きましたわ」
壁の隙間…恐らくは何かの発着場の様な場所に俺たちは足を下ろした。
しかし…なるほど、ディープホワイトその名の通りの場所だ。
「ありがとうレミリア」
「ありがとうなんじゃ」
「レミリアお疲れ様!」
皆がレミリアに礼を言い重労働を終えた彼女を労わる。
「どういたしましてですわ」
「すっごいねー!!」
「私たちとは違う文明ね…不思議だわ」
「何千年も経っても残っているとはね!」
「これだけの建造物を
ホワイトミスリルで建築するなんて…驚きですわ」
冒険者としての血が騒ぐのか辺りに興味津々なウル一行
その気持ちは俺と夜天羅も少しわかる、実際ワクワクしている。
そして全員で奥へ進んでゆく
暗いため魔道具を使い周囲を照らしていく。
レミリア、ネローズ、夜天羅による周囲の探知をしながら先頭は俺とウル。
長い一本道を進んだ先にあったのは扉。
レミリア、ネローズの魔術に詳しい二人が
扉を調べる。
「…罠なんかの類は無さそうね…魔力を流せば開くと思うわ」
「わたくしも同意見ですわ」
「じゃ!僕がやろうかな!」
ウルが扉に触れた、俺は何かあった時のために側に控えておく。
ガガッガリガリ…魔力を流された扉はぎこちない音を立てる
見た目は綺麗でも内部は劣化している様だ。
立て付けの悪い扉が開き切ると
中は廊下になっている、ウルと俺は廊下に出て辺りを確認
「…圧巻だね」
「すごいな…」
俺たちは廊下のガラス張りの窓から見た物それは──都市。
見下ろす形で遥か下に街があった
それもこの世界に似合わない近未来的な物。
高層ビルが並び先鋭的なデザイン、そのどれもが白い。




