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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第一章:旅立ち
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第一録:月の瞳と鬼 四節「鬼を蝕む厄」

「呼べない理由があるんですか?」

「その理由でわしは封印してもらってたんじゃ」

()()()()()()()()?まるで自分から望んで封印されたみたいな言い分だ。

「ほれお前様も立ってんと座ると良い長い話になる」

夜天羅に促されて対面にする。

「わしを封印してた理由はな生きてるだけで厄災を撒き散らす悪鬼だからじゃ」

衝撃の事実にガツンと頭を殴られた気分だ

目の前の彼女が厄災を?そうは見えない、いやまてよ…。


「生きてるだけで?」

気になった部分はこれだ、この意味だけを純粋に捉えるなら夜天羅(やてんら)

何もしていないのに周りに被害をもたらしてしまうと受け取れる。

「そうじゃ…わしが生きているだけで人にも

 妖にも害をもたらすそういう毒を垂れ流してしまうんじゃ」

「それで幼な子の時に忌み子として村を追い出されてから山に籠ったのじゃ」

語る夜天羅の顔はひどく悲しさで溢れていた

淡々と語っている様に見えるが実際はそうではないのだろう。

…安易に気持ちがわかるなんて事は言えない。

しかし夜天羅の悲しみや事実を伝える怖さはひしひしと伝わってくる。


「…質問していいか?」

「なんじゃ?」

「それが本当ならなぜ俺は無事なんだ?」

今、夜天羅と出会って少なくとも

10分以上は経っているなのに俺はピンピンしている。

「それは封印とお前様に宿る力のおかげじゃ」

「封印と力…」

「そうじゃな…気になるじゃろうからまずはお前様の力について語るかの」

俺に宿る力…思い当たる節は一つだけあの眼の事だ

親父に詳細を聞こうとしたら「分からん」の一言だ、今それがわかる。

「お前様にはの解魔の瞳(かいまのひとみ)が宿っておる解体の解に天魔の魔と書く」

「解魔の瞳…?」

聞き慣れない単語だ…


「わしの厄災は毒というたが正体は強い邪気でな

 無自覚に振り撒く先も言うたが人と妖だけが死ぬ」

邪気か、要するに物質的な毒ではなくそう言う霊的な物なんだろう。

「じゃがお前様は違う邪気を取り込んだ瞬間から分解、魔に連なる

 自身に害をなす物を散り散りにして消してしまう…それが解魔の瞳じゃな」

要は入って来た物を高速で分解する能力、周囲には影響は

与えず自分のみだけが対象なのか…強力な免疫機能の様なものか?


「じゃあ瞳の色が変わったのって…」

「ん?お前様の瞳は黒と金ではないのか?」

キョトンとした様子で俺を見つめる夜天羅まさか!?俺は近くにあった鏡を見る。

煌々(こうこう)と蝋燭で照らされているおかげで自分の姿がしっかりと映し出される

そこにはあの写真と同じ瞳をした俺が写っていた。

「マジか…」

夜天羅がいるから超常の存在は信じざる得ないが自分が実際に

超常を経験するとこれが本当に現実なんだと実感する。


「ほー鏡があるのかお前様は貴族なんかの?」

自分の変化にも驚きだが夜天羅の時代感が古い

鏡を持ってるだけで貴族の発想に至るのは恐らく鎌倉時代かそのあたりだろうか…

だとしたらご先祖の話は500年も前の話になる。

「…今の時代は鏡なら誰でも持ってるから貴族じゃないす」

「ほう!豊かな時代なんじゃなぁ」

しみじみとしている夜天羅

まぁ…この時代は別の悩みがごまんとあるがそれはいいか。

しかし解魔の瞳か…そんなえらいもんが俺の身体に標準装備されているなんてな。


「俺がこの目になったって事は邪気があるから両親が来れないのか…」

「そうじゃな、いくら封印と結界のおかげで

 弱まったとはいえおいそれと人を近づけさせれん」

「…さてとお次は封印の意図について語っていこうかの」

「わしは言ったように厄災を撒き散らす、そんな自分に嫌気をさして─」

「身投げをしようとした、ですよね」

「さすがにその触りは知っておったか…まぁそれで来空と出会っての

 尼僧(にそう)来空(らいくう)は邪気をものともせずわしを止めた」

来空、恐らくご先祖の尼さんの戒名だろう

話を続ける夜天羅に先ほどの様な悲しみは少なくどこか懐かしんでいる様子。


「助けられたがわしは変われないと思うたこれがわしの性だと

 しかしな来空は二つの道を示したんじゃ

 一つ、長い、長い道のりを経て厄災を反転させ良き神にならんとするか

 一つ、封印を施し祀られ厄災を薄め神か鬼か曖昧な存在になり

 人と(つが)う事で堕落(だらく)し神格と共に厄災を捨て去る」

夜天羅の語る方法は人の俺からすればどちらも辛く長いものになる。

前者の神になるは本当に長く厳しい茨の道なんだろう

神話などでよくある良い側面と悪い側面を持つ神様に

生まれ変わって両側面をコントロールする。

後者は封印されご本尊として崇め祀られ神になって行く過程を半端に放棄

ペナルティとしてそれまで培った信仰の良い側面、悪い側面を奪われる。

だがなぜ夜天羅は後者を選んだんだ?


「わかるとおりわしは後者を選んだのじゃ憧れてな」

「憧れ…?」

「…人も妖もみな家族という群れを作るわしは…限りある生を家族と過ごす

 それにひどく憧れたんじゃ神になったらできん事じゃ」

夜天羅にかける言葉が見つからない。

なぜなら俺はその夜天羅が望んで仕方がない家族を

当たり前に享受(きょうじゅ)し続けてる。

会って間もない夜天羅を幸せにしたいと強く思ってしまう。

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