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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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余談「淡く散る想いは心の火炉へ。」前編

────私は、私たちは理不尽にこの世界へ転移をさせられた。

混乱に継ぐ混乱、その私たちを諌めてまとめたのは大崎君だった…クラスのリーダー的な人で私の様な日陰者には縁のない人。

目の前にはまるでファンタジーの世界の王様が私たちに説明を始めた…どうやら私たちに協力をしてほしいらしいがまだ状況がうまく飲み込めない、流れに身を任せているとまた事件が起きた。


なぜか覡君を敵視するアルメリアと名乗るシスター、険悪な空気が流れ一触即発。

人が…人に向ける敵意に本物の殺意に私は怯えて足を震わせ近くにいた友人と抱き合うことしかできなかった。

その場を騎士がなんとか収めた…その後のことはよく覚えていない。

気がつけば用意された部屋にいた、ぼんやりと覡君見ていたが彼だけゴルドーさんに連れていかれていたのだけは覚えている。


───うか、優香!!

ハッと思考の海から引きずり上げられた、顔をあげて声のした方へ視線を向ける。

友人の茜が私を見つめており目が合う。

「ぼーっとしてどうしたのよ?」

「え、あ、ごめん…ちょっと考え事してた」

私は改めて周りを見る、食事が並ぶ円形のテーブルを友人の茜と霜田とその友人二人。

今まで関わりのない彼らとテーブルを囲んでいるのは茜が霜田に気があるからだ。


「んじゃ、明日その人んとこ行って依頼についていこーぜ!」

そうだ…急遽、私たちは城からここアルカラドにやってきたその理由は訓練のステップアップだとか。

今は移動直後という事で1週間の休暇を与えられていたそこで霜田はとある依頼に誘われたから一緒に行かないかと持ちかけられたのだ。

私は嫌だったが茜が心配でついて行く事に。

乗り気じゃない状況につい考えに耽ってしまう、今だってそうだ。


私は手に持ったグラスの冷たい飲み物を飲み干し、料理に手をつける。

茜と霜田やクラスメイトの会話に耳を傾ける、色々な話題が出る中必ず出てくる話題があった。

「覡のやつなんであんな事したんだろなー」

そう…覡君がなぜ城から窓を破り出ていったのか?この数ヶ月間の私たちの話題だった。

そんな事が出来るのも驚きだがゴルドーさんからの説明すら煙に撒く様に誤魔化される。


…覡君とは話した事すらない、それはクラスのほとんどがそうだ。

でも…私は気がつけば彼を目で追う、一目惚れというやつだろうか?

自分自身の心に問いかけても答えがでない、それは恋を知らないから…人を好きになった事がないからだとそう無理矢理納得する。

「さ!腹一杯になったしいこーぜ!」

霜田そう声を上げる、先ほどまでテーブルに広げられた食事は消えてなくなっていた。


私は再び現実に戻り皆と同じ様に席を立ち後をついてゆく。

国にお世話になっている私たちは寮に向かいアルカラドの街並みを5人で歩き帰路に着く。

私はこの街並みに安心感を覚える、現代日本に少し似た近代的な装いは懐かしい。

…お父さんもお母さんも心配しているんだろうなぁ、日本にいる両親には申し訳ないと思っているがどうしようもない。

少しだけホームシックな気分になる、私は黒に染まりゆく空を見上げた。


「…覡?」

霜田がそう呟く、私はすぐに空から視線を外して霜田を見ると一点を凝視している。

その先には───確かに覡君がいた、今の空模様の様な黒い羽織に刀を携えた彼が黒猫と共に街頭のそばに立っていた、それは…それはまるで誰かを待つ様に。

そう考えて私の心臓は不安で早鐘を打つ、誰といるのか、誰と待っているのかとその横顔を凝視する。


「だれだ?」

霜田に話しかけられた覡君は怪訝な顔をしていた…クラスメイトだというのに顔を覚えてないらしい。

多分、彼は誰の顔と名前も一致しないんだと思う…それほどクラスとは関係が薄い、同じ教室にいたのに不思議なものだ。


霜田と幾つか言葉を交わす覡君…ついに我慢できなかったのかあの疑問をぶつける。

「あ、その、なんで城から飛び出したのかなって」

おずおずとそう問いかける霜田に覡君は無表情…に見えたが一瞬だけ嫌そうな顔をしたのを私は見逃さなかった。

「色々と事情があったんだよ、俺も」

当然はぐらかす覡君…理由を話せないのは私たちがほぼ他人だからだろう。

…そう思うとチクリと胸が痛む。

ずいぶんと理不尽極まりない自分勝手な痛みだなと私は自嘲気味に思う。


「それがなんなのかきいてんの!」

茜が痺れを切らして声を荒げる、そんな声を荒げなくとも…と私は茜に声をかけようとする。

「……」

無言の覡君…いや何かを考えている様子にみえる…そうか、茜が誰かわからないのか。

「ちょっと、もしかして名前わかんないの!?」

「すまないが全員わからん」

「はー!?っ私は千木茜よ!」

「お、おうそうか」


ハッキリと…誰と言われてしまう。

再び…自分勝手な痛みが胸を襲う、学校で話しかけてすらなかったのだから当たり前だ。

私の視線に気がついてほしいと覡君から声を掛けてほしいと…呆れるほど他人任せな自分に嫌気がさす。

なんで…私は行動を起こさなかったのか、多分それは自分の気持ちが曖昧でフラフラしていたからだ……結局私が原因、その時だった。

「お前様ー!」

「夜天羅!」


私たちの背後から明るく澄んだ声…覡君の視線が私より先に向けられた…彼の、見たこともない柔らかな顔で。

ドキリと早鐘を打っていた心臓が一際大きく跳ね上がった。

世界から音が消えた、考えない様にしていた事、気が付かない様にしていた事が。

現実になってしまう。

心がキュッとなる…書いたの自分だけど。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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