第四十八録:派閥 五節「その正体」
「失礼致します!」
精悍なよく通る声…聞き覚えのある声に驚きその人物へ急いで視線を向ける。
「ゴルドー・アルレッド近衛騎士!!?」
「やあアルメリア!久しぶりです!」
気さくで人当たりの良い笑顔がわたしに向けられる、その明るさに私は彼から目を逸らしてしまう。
「彼が助言をくれた人よ」
「!!」
意外な…いや私は納得した、ソレイユ様へ助言ができる人物は限られているそこに私という要素を含めればその人物は1、2人に限定される。
少し考えればゴルドーは1番の候補だ。
ゴルドーは私の隣へ席に着く。
「元気そうでなによりです」
…彼も基本的に忙しく城から離れられない、私はギルバート聖の件でこの頃は聖都市を拠点にしていた。
「…ゴルドー近衛騎士、どうしてここへ?」
「私はソレイユどのに助言を求めたくてここへ…アルメリアも同じですか?」
やはり…彼らもギルバートの、"魔王ノ宿木"の件で来たんだろう。
"魔王ノ宿木"についてあまりに情報が乏しすぎる…情報がありそうな"ユダ遺跡"へは特殊な防御魔法で入ることすらできない。
「ま、貴方たちが私に助言を求めたのは大正解よ…"魔王ノ宿木"も"降魔礼讃"も求める答えを教えてあげる。」
…降魔礼讃?聞いたことのない組織の名だ、ゴルドーが知りたいことには違いない。
「まずは…魔王ノ宿木ねこれは───」
ソレイユ様の口から語られる"魔王ノ宿木"の正体、私もゴルドーも驚愕の一言。
「……なんてことですか!!」
「これは予想外ですね…ソレイユ殿、単刀直入に聞きますギルバート聖は────」
「そ、魔王アマガルムの転生体よ」
「───っ!?それが…それが本当なら私たち人ではどうにもできないではありませんか!」
思わず私は声を荒げてしまう。
複雑だ…まずギルバート聖が転生体という確たる証拠が何もない、現状では難癖になる。
「…そうね、人である限り人の法で縛られ守られるわ」
「今のまま…ギルバート聖を殺せばただの殺人になってしまいますね」
ゴルドーが難しい顔をして右手の甲を額に当てている、その通りだ…ギルバート聖には手を出せない…暗殺はもってのほかそれに不可能だ。
ギルバート聖の直属部隊"戒罰執行隊[アズライル]"は暗殺対策のプロ中のプロ。
「もし仮に殺したとしてもリフロディア様ではなくギルバートが崇められる対象になり得ます。」
過去の文献によれば"聖骸戦争"でも戦死した教皇を崇めて神の様な扱いになった記録が残っている…静かに見守ってくださるリフロディア様より身近な尊敬し敬愛する教皇へ傾倒する。
その心情は理解ができる…できるがこれはリフロディア様への冒涜だ。
「…この事についてヨリツグ殿とヤテンラ殿はどこまで知っているのですか?」
「魔王ノ宿木のルーツは話したわ…ギルバートに関しては今貰った情報から導いた答えだからね…知らないわ」
そう言ってベロニカ様の手紙を見せる。
「…くっ!!この様な場面で一番使いたい彼方ノ鏡が使えないとは歯がゆい!」
彼方ノ鏡は便利な反面、弱点がある…それは魔力波形さえ知っていれば傍受されやすい事、使用者が少ないゆえに特定も早い。
もちろん対策してはいるが…その対策を破られまた対策してと応酬が続いている。
「あの子たちはまだオーザンガールにいるんでしょ?なら接触できるでしょ?」
「いえ…タイミングが悪いことに依頼でオーザンガールを離れた様です」
「行き先は恐らく遺跡のどこかでしょうね、なんでも恩人の漂流物を探してるそうよ。」
彼らは異界の門へ向かいながらゆっくりと旅をしている…国が彼らを異界の門に送り届けるのも不可能。
最北の地"オルタリアム"へ足を踏み入れると言う事はあの外魔たちと戦闘をするということだ、彼らは大丈夫だろうしかし彼らに着いて行く兵士に犠牲が出る。
…1番の問題は鍵が外魔の手に渡っている事だ
異界への道を開く鍵には力があるそれを嗅ぎつけた外魔は鍵を取り込んだ、そのせいで敵の戦力は大幅に強化され外魔を封じざる得なくなってしまった。
「ま、ヨリツグたちならそうそうやられる事はないわ、彼らに伝える方法はあとで考えましょう…次は降魔礼讃ね」




