第四十八録:派閥 一節「聖都市リーリゼルカ」
───教会本部"聖都市リーリゼルカ"
フィリッツランド国内に存在する教会の聖地、小さな宗教都市その中心に教会の総本部リフロディア大聖堂、とある一室にから声が響き渡る。
「これは!?ベロニカ様!!一体どうなっているのですか!!」
「落ち着きなさいアルメリア」
私はベロニカ様に事態の説明を荒々しく求める、通告なしの城への訪問以降ギルバート聖の動きがおかしい…遂には異邦者へ聖痕の使用による被害すら出した。
権力の暴走、乱心…あまりにも目に余る行動に教会内部は混乱している、さらに──
「ギルバート様を他の教皇様が庇われているのも納得いきません!即刻、教会審問にかけて聖人指定及び教皇の地位を剥奪すべきです!!」
でなければ…でなければ戦争になってもおかしくはない!それだけは避けねば起こさせてはならない!
「わかっています…問題は教皇が半々に別れている事です、教会の二分化は国と争うより先に内部抗争が起きます。」
「ッ!!」
私はそれ以上何も言えなくなる、そんな大規模な内部抗争が起きれば教会の存続が危ぶまれてしまう。
雁字搦めだ…今は国王の寛大な心で表向きは何とかなっているが裏では近衛騎士が動いている!主にギルバート辺りではあるがこれがいつ牙を向くかわからない。
「…教皇会議は話になりません、どこまで行っても平行線な話し合いで時間の無駄でした」
教皇の二分化ゆえに話は停滞、無理に進めて仕舞えば抗争の引き金になり得る。
「…仕方がありませんね、アルメリア貴女はフラウリンへ向かいなさい。」
「フラウリンへですか?」
先日…大々的にニュースがあった、遺跡フラウリンが呪いから解き放たれ国として復興していると。
「これは…他の教皇へまだ共有していない話よ、フラウリンの代表は元"神"です」
「なっ!?」
衝撃的な発言だった、我々リフロディア教の神はリフロディア様だけ。
急に他の神様がいるだなんて完全な予想外。
「その反応も無理ありません、しかし…今頼れるのは彼女だけです。フラウリンへなら教会からの支援として怪しまれることなく向かえます。」
フィリッツランド国や他の国に頼れない…そんなことをすればベロニカ様の立場が危うくなりギルバート聖をどうにかする前にベロニカ様が教皇を剥奪されてしまう。
「これをフラウリンの代表へ渡してください」
そう言ってベロニカ様から手渡された一通の封書…教皇のみが使用可能な封蝋付き。
私はそれを受け取り大事に懐に仕舞った。
「わかりました…ベロニカ様もどうかお気をつけてください」
「えぇ…世話をかけますねアルメリア」
「とんでもありません!」
柔らかな笑みを私に向けてくださるベロニカ様、尊敬する方からの信頼…私はそれに全力で応えたい。
「では失礼します」
───パタン…扉がしまりアルメリアが去った、彼女には苦労をかける。
私は机に広がる再び報告書に目を通した…よくない情報ばかりが羅列されている。
「…本当にどうしたと言うですかギルバート」
ポツリと独り言が漏れ出る、異邦者召喚の後だアルメリアから異邦の魔族の報告を受けてから明らかにおかしくなった。
「何を焦っているのですか…」
報告書から受ける印象はこれ。
何かずっと追い求めてきたものが現れたから早く手に入れようと焦っている。
少し言葉は過ぎるかもしれないが…ギルバートの化けの皮が剥がれた様にも思える。
これまで品行方正なだけだった分、驚きが大きい…だが1番の驚きは──
「この根回しね…」
教皇の半数がギルバートの手に落ちている、弱みを握り脅しをかけたのか…この数は異常だ。
相当前から準備をして備えていたことになる。
「だからこそ…不気味なのです」
まず…いつ現れるかもわからない魔王ノ宿木を待っていた事だ。
数百年現れてなかった事を人の身で待ち続けるのはあまりにも不可解。
彼は人間ではない?…いえそれはありえない。
「…いくら考えても答えは出ませんね」
今は…アルメリアのフラウリン訪問に期待するしかない、情けないことに教皇自ら動くことができない。
「高すぎる地位というのも考えものですね」
影響力が高いが故に自由に動くことができない、周りに守られているギルバート以外は。




