第四十七録:準備運動 二節「魔剣」
喫煙所でリブラーと別れてから私はある場所へ向かう、アルカラドの最奥"魔剣祭壇"。
普段ここへ近寄るのは特定鍛治師か監視官だけだ。
「ザディル・ロールシャッハ様、お待ちしておりました」
軍服に身を包み腰には巻いた鞭と短剣を携え凛とした姿勢で私を迎えたのは監視官"ルルテア・マリアリエ"、監視官唯一の女性。
「ありがとうございます、早速ですが私の魔剣は?」
「は、ロールシャッハ様の魔剣"ファフニール"は現在、最終封印の本人認証待ちの状態にあります。」
ずいぶん早い解除だ、通常の解除工程なら私が到着してから解除作業が始まる。
しかし今は違う、リブラーが言っていた様にいつでも取り出せる状態にしているわけだ。
カツカツと無機質な廊下を歩いてゆき大きな扉の前に到着、ルルテアは扉の横にある端末を操作し魔力を流す、この大扉"警鐘の門"はこの世で6人の監視官のみが開くことのできる厳重な扉…それが今開かれる。
「ロールシャッハ様、どうぞ」
「ありがとう」
扉の脇に控えるルルテア、彼女ら監視官の案内はここまで。
窓もなく締め切られた無機質な部屋、その中には10の祭壇がありそのほとんどの祭壇には何もない、残っているのは私とゴルドーとゼルナさん3つのみ。
自身の祭壇に近づき魔法陣に触れるとすぐに認証され最終封印が解除された、私は掲げられている剣を手に取る。
「久しぶりですね…"ファフニール"」
豪華な装飾は一切ない素朴な見た目、レイピアより少し幅広で通常の半分ほどの刀身、それが灯に照らされて白銀の輝きを放つ。
魔剣の感触を確かめる、私のあらゆる能力を大幅に増幅させる私のための剣。
久方ぶりに手に持ったが管理が行き届いているおかげでよく手に馴染む。
魔剣に問題がない事を確かめ私は魔剣を専用の鞘に収めた。
「さて…ここに来た用事の一つは終わりました」
あとは偽騎士の解錠を待つのみ、私は魔剣祭壇を後にして施設の表へと戻る。
「やや!ザディルさん!探しましたよ〜」
「ハミルトン、どうかしました?」
私の元に近づいてきたハミルトン、しばらくは施設内での自由行動だと言うのにどうしたのだろうか?
「どうかしました?じゃありませんよ〜!見知らぬ場所で一人ぼっちは心細いんですよ!?」
「あぁ…それはすみません、でも部屋で休んでてよいのですよ?」
ハミルトンは長旅で疲れているはずだ、てっきり休息を取る物だと思っていた。
「そんな!もったいない!普段入ることのできない国の施設にいるんですよ!?見て回りたいじゃないですか!!」
「もしや…私に案内してほしいと?」
「はい!!」
キラキラしたまるで子供の様な目をして興奮した様子で私を見上げてくる。
「……わかりました、見せれる範囲ならいいですよ」
「やったー、ありがとうございます!」
私はハミルトンに付き合うことにした…まぁ時間潰しにはちょうどいいだろう。




