第四十六録:旅路 五節「腑に落ちない」
「うわーん!眠いですよザディルさーん!!」
上空、私が手綱を握る飛龍は軽やかにかつスピードを出している。
ハミルトンは少し駄々をこねる様に私の後ろで何か文句を言っていた。
「今回は仕方がありません、早くアルカラドへ向かう必要がありますから今は我慢してください」
…村への魔物と暗殺者の襲撃から夜を過ぎ日が差す前にすぐに村を出た。
暗殺者たちから有益な情報は得られなかった…魔術で記憶を盗み見たが教会の関連は確認できず…あるいは依頼者を調べればまた結果は違うのだろうが恐らくはもう処理をされている。
ただ…事実として偽騎士どもを狙ったそれはまごう事なき事実だ。
「それは…そうですけどぉ」
「もうあと4日ほどの辛抱ですよ」
「もうって!長いですよー!」
自分で言っていても長い…加えてこれからは野宿だ、私たちが村に宿泊でもすればまた迷惑が掛かる、食糧なんかの補充に寄るぐらいが限界だろう…ハミルトンはそれがわかっているから少し駄々を捏ねている。
「むぅ…私の訴えは置いてです、教会が本当に関わっていたらどうするんですか?」
愚痴を吐くのに満足したのかハミルトンは私へ質問を投げかけてくる。
「…正直な話、今回の件で教会をどうこうはむずかしいでしょう、ですが"カード"は持っていて損はありません。」
「…あの、まずなんで教会を敵視しているんです?」
あぁ…そうかハミルトンはヨリツグさんとヤテンラさんの件を知らないのか。
二人とも縁があり私の様な近衛騎士と行動を共にしていれば避けられない問題。
「貴方には伝えておいていいでしょう」
私は"魔王ノ宿木"について、それがヤテンラさんの中に存在している事…教会が殺そうとしている事実を伝える。
「ヤテンラさんが逸話で語られる様な暴虐な魔王だなんて!ありえませんよ!」
ヤテンラという人物を知るハミルトンならそう言う事はわかっている、私も同意見だ。
「んー?…教会を敵視する理由はわかりましたし魔王ノ宿木を狙う理由もわかりましたが…本当にそれだけなんですかね?」
「と、いいますと?」
「やー…なんと言いますか、いくら過激派とはいえ短絡的な印象を受けます。」
「別の理由があると?」
「うーん…」
唸り、答えのわからないものに自分が知る限りの知識で近いものを出そうと考えに耽るハミルトン。
「あっ!もしかして!"魔王ノ宿木"を使ってなにかしようとしてるんじゃないですか!?」
「───」
…ハミルトンからすれば答えがわからず冗談のつもりだったろう、しかし私からすれば予想外過ぎる発言だった。
「………」
「ちょ、ちょっとザディルさん?冗談ですよ?」
私の態度がおかしい事に焦りの表情を見せてあたふたとしている。
「…案外そうかもしれませんね」
「え?いやいや!本当に冗談ですよ!?そんなトチ狂ったことをすればタダじゃすみません!」
「魔王の力を手に入れれば?」
「…状況は変わりますね、いや!まずヤテンラさんから奪えるものなんですか!?そもそも過激派でも厳格な教会がそんな───」
そこまで言ってハミルトンは言葉を止めた、厳格な…か。
「…偽騎士から聖痕の魔術使用の痕跡が検出できれば貴女の冗談は冗談で無くなる可能性はありますね」
「えぇー!!言っといてなんですが絶対に面倒な事になるじゃないですか!!」
「なりますねー下手したら戦争です」
ハミルトンは顔を青ざめて非常に嫌そうな顔をしている。
「ふふっ…大丈夫ですよ、戦争になんて私たち近衛騎士がさせませんよ」
「…それはどっちの意味ですか?」
「どっちでしょうねぇ」
「ちょっとー!!」
広い空にハミルトンの声が響き渡る…このまま何事もなくアルカラドへ着きたいものだ。




