第四十六録:旅路 四節「近衛騎士」
────(なぜ…私は地べたに伏している?)
暗殺者のリーダーは自身に問う、周りを見渡すと部下たちも同じく地面へ転がっていた。
(なにをしている!誰か一人でも立て!)
そう思いながら足に力を入れようとしても力が入らない…おかしな話だ、意識はハッキリと明瞭にも関わらず身体が一切の言うことを聞かない。
(…まさか…毒か!?いやそもそも私たちは何をされた!!14人全員で襲いかかった!一部の隙すらなかったはずだ!!翻弄していたはずだ!!まさか外部から────)
「色々お考えの様ですが…それ全部違いますよ」
暗殺者のリーダーを冷酷に見下ろす近衛騎士、それを恨めしげに睨み見上げるしか許されない。
「貴方たちの敗因はごく単純ですよ」
私はタバコを取り出し再び火をつける、赤熱した先端と吐く息から白煙が舞う。
周囲に目を向ける…流石は我が国の兵士だ、魔物による襲撃がほとんど制圧され事態が収拾されつつある。
この様子だと…外に魔物は出ていないだろう。
「あぁ…すみません、少し考え事をしていました貴方たちの敗因はでしたね、私より遅かっただけですよ」
「ッ!?!!?」
(そんなわけが!じゃあなにか?先手で動き始めた私たちより早く動き!認識できなかったと!?そんな、そんなこと───)
「あり…えない!!!」
「おや?珍しい…暗殺者の声を聞いたのは初めてです」
「そんな事実!あって…なるものか!!」
感情的な暗殺者の言葉は現実を受け入れることができないことに加えて暗殺者としてのプライドが叫びをあげる。
「ふむ…では一つ近衛騎士について教えて差し上げましょう。」
私は今後の"脅し"も兼ねて兵が来る間、暗殺者に納得できる情報を与えることにした。
「私たち近衛騎士が国内の人を相手に闘うのはあまりありませんから…貴方たちの様な人から軽んじられることがありますし、現に今もそうです」
まぁそれ自体は悪いことばかりではないこうして戦いが楽になる。
それに私たちの敵は国内にいない、国外の敵に対しての武力だ…ゆえに実力を見せる事はそうそうない。
「だから…なんだと言うのだ!!」
「まあまあ…貴方に教えて差し上げるのは近衛騎士の条件ですよ」
「…条件…だと?」
「簡単です"単騎で大軍を制することができる者"それだけです」
「お前は…何を言っている!人一人が大軍に?バカを言え!!」
「そのバカを大真面目に可能なのが私たち近衛騎士です、言ってしまえば私たちは聖銀ですら敵ではありませんよ」
大国の絶対強者。それが近衛騎士の条件、私たちがいることそれ自体が抑止力。
「さっきから…ふざけたことば…かり!!…」
「あぁ…そうだ、貴方が動けないのは魔力経穴を一時的に破壊したからです、破壊された経穴は魔力の制御ができません…だから過剰な魔力で体が麻痺している状態です、あとはわかりますね?」
「ッ!!クソがぁぁ!!」
現状を理解してしまった暗殺者の絶叫、それは任務失敗に加えて自死の魔術すら起動しないと言う絶望。
叫び声を上げたのち限界だったどあろう暗殺者のリーダーは気絶。
「ザディルさ─って…なんですかこの惨状は!?」
ハミルトンが上空から現れ私の横に着地するや否やあたりの状況に驚く。
「今回の襲撃の犯人たちですよ」
「やや!!まさかザディルさんを狙い撃ちしてこんことを!?」
「…結界を破れない、なら私を殺せばいいそう思ったのでしょう」
「いや…まぁそれしか手はないのはわかりますが…行動が早すぎませんか?」
「その謎はこいつらに聞きましょうか」
と…その時ガシャガシャと幾つもの重たい足音が聞こえてくる。
「ロールシャッハ様!!」
魔物の対応が終わり、人員に余裕が出てきた兵士が数人こちらへ向かってくる。
「皆さんお疲れ様です、被害は?」
「ありがとうございます!被害規模は建物は兵舎の一部、人的被害は兵士のみで軽傷と中傷が数名で民間人に被害はありません!」
「わかりました…急で申し訳ありませんが今すぐにこの暗殺者全員に魔術尋問をお願いします」
「了解致しました!!」
一人は踵を返して兵舎へ走っていき残りの兵と私とハミルトンで気絶している暗殺者を運ぶ。




