第四十六録:旅路 三節「暗殺者」
私とハミルトンは代金を多めにテーブルへ置いて村の兵舎まで疾走、その時──
「うわぁ!?なんですか!?」
破砕音が響く、それと同時に飛竜の荒々しい咆哮が耳をつんざく。
「おや、言い忘れてましたが飛竜も結界のすぐ上には飛竜が待機してましてね」
「マロマロちゃんがどこかに行ったと思ったらそんな所に!!」
村の屋根を次々に飛び越えて兵舎が見えてきた、慌ただしく兵士が走り回りどう言う動きをしてあるのか一望できる。
「ふむ…どうやら敵は魔物を使った様ですね」
「やや!相手はバカなんですか!?」
少しの苛立ちと怒りを孕んだハミルトンの声、それには私も同じだ。
民間人を容易に巻き込みかねない危険な行い、怒りを覚えない方が難しい。
「ハミルトン、貴女は近くの民家に被害がないか確認をお願いします。」
見たところ魔物は精々4等級くらいの強さがちらほらいるのみであとは弱い魔物ばかりだ。
「了解です!このアヤ・ハミルトンにお任せを!」
そう言ってハミルトンは住宅街の方へ消えてゆく…私は再び兵舎へ目を向ける。
屋根から兵舎の正門前に降り立ち、そしてすぐに手袋を外し者に触れる。
「偽騎士も結界も無事…か」
飛竜のおかげか魔物も近付いていない…さてなら誰が結界に触れたのか?
「推理は後です…ね!」
抜刀し背後に近寄る魔物を両断、真っ二つにした魔物は血を撒き転がる。
「…ふむ、早く出てきてください。時間の無駄ですよ」
剣を振り血を払う、私に殺意を向けている誰かに問いかける。
するとぞろぞろと6人…8人と増えていき総勢で14人の武装した者に囲まれた。
「いやはや…これっぽっちで攻めてきたのですか?舐められたものです。」
私は懐からタバコを取り出して火をつける、一度長く吸い白煙を吐き出す。
「いますぐに武器を捨て投降してください。」
無言、夜襲を仕掛けてきた者たちは静かに武器を構える…この一切の事情を挟まない冷徹な様子は恐らくは暗殺者だろう。
「警告はしましたよ。」
「…………!!」
背後からの無言の強襲、刃が私に迫る気配、流石は暗殺者だ無音かつ迅速な行動…だが──
バギィッ!!その刃は届く事はない。
襲ってきた暗殺者を右の裏拳で制し意識を奪う、その光景を見た暗殺者たちには明らかな緊張が走っていた。
「貴方たちからしたらまだ13人も残っているじゃないですか、何を怯える必要があるんです?」
(バカ言え!!なぜ我々、暗殺者が雁首揃えて姿を現したと思う?奇襲から注意を逸らし一番実力の高い者に襲わせるためだ!!なのにッ!!)
暗殺者のリーダーは内心は穏やかではない、近衛騎士と言う道の相手に対して見立てが甘かった、そう思わざる得ない。
「おや?この方は15人目だったようですね…まぁ、だからと言って何も変わりませんが。」
冷たい視線で地に伏した暗殺者を見ている…誰も動けない、動けばやられるだが動かなければただの的…そう思った暗殺者は──
「…なりふり構わないことをしますね」
四方八方から暗殺者たちがそのスピードを生かし闇夜に紛れ静かな殺意、冷たい刃が私に向けられる。
「及第点って所です」
他者から見ればただ危機的状況に見えるだろう、しかし私や他の近衛騎士からしても危機にすらならない。




