第四十六録:旅路 二節「半妖精」
「ここはい〜い村ですねぇ」
陽はすっかり落ち月が顔を出し始めた夜に私とハミルトンは飛竜を飛ばしてこの村へ。
今は村のレストラン、テラス席で夕食を取っていた。
「でもよかったんですか?」
「何がです?」
「あの偽騎士たちを牢屋に放り込むだけ放り込んで食事なんて…」
そう言いながらハミルトンはスープをスプーンでくるくるとゆっくり混ぜる。
「あぁ…いいんですよ。」
私はグラスに注がれた赤ワインを少し揺らしてから口にした、渋さと酸味にほんのり果実の甘さが口内に広がる。
「いいって…暗殺されちゃうかもしれなんですよ!?」
「大丈夫ですよ、"アレ"を一瞬で突破できるやつなんていません」
「"結界"…ですよね?妖精特有の魔術の…つまりザディルさん貴方は…」
「まぁそうです、ハーフですよ。人の父と妖精の母、その子が私です。」
ジェンドゥルのせいでほとんどバレてしまった事だ、今更隠す必要もない。
「珍しいですね!妖精と人の間に子を授かるのは非常に難しいと聞きます…ご両親は努力した事でしょう!」
「ふふっ、おかげで甘やかされて育ちましたよ」
他種族同士で婚姻を結ぶ事は珍しくない、妖精もそうだ…しかし子を成す、この一点のみ他の種族と違う。
できにくいとは違う。言わば種族の超えられない壁がある、それは魔力濃度だ。
妖精族は以上に魔力濃度が濃い平均して人の約四倍、となると受精が難しい魔力濃度が濃いと弱い人の魔力濃度を帯びた物は異物として排除してしまう。
結果、受精が非常に困難だ。
「しかし…結界を大っぴらに使うのはこれが初めてですよ」
結界…妖精族のみが使用できる魔術、その魔力濃度を生かし他者を隔絶する結界だ…同じ妖精族なら素通りできるだろうしかし私はハーフ。
妖精族ほど魔力濃度は濃くなく人間ほど薄くはない、つまり私の結界は私以外全てが対象。
「え!?いいんですか!?」
ハミルトンは驚き席を立つ…手の内を晒して良いのか?そう思っているんだろう。
「えぇ…大丈夫ですよ、むしろ敵はさらに警戒するでしょう"コイツはまだ何か隠してるんじゃないか?"ってね」
「!!」
敵はそう思うだろう、それが教会となれば尚のこと…教会なら私たち近衛騎士の情報はそれなりに持っている、だが私がハーフと言う事は本当に親しい者…マルスやゼルナさんくらいのものだ。
「…次から敵も策を講じてくるじゃないです?」
「相手もバカではありませんからね、ハーフの私程度の結界は頑張れば突破できるでしょう」
「ちょ、不安にさせないでくだいよぉー」
安心しろと言って欲しかったであろうハミルトンは心配そうな顔をして机に突っ伏してしまう。
「大丈夫ですよ、結界を破れば私に知らせが入りますしなにより──」
「なにより?」
「結界を突破した次には私の剣が控えています、術式による自動制御でも私が向かうまでの時間稼ぎにはなりますよ」
仮に妖精族を使い突破してもそこには空を舞う剣が9本も控えている。
自動制御でも平均的な騎士相当の戦力がある。
「どんな実力者でも時間をかけざる得ないですか…暗殺者なら尚のこと責めあぐねますね」
「そう言うことです。」
私は鉄板の上のステーキを一切れ口に放り込んだ。
「さて…なんて話していれば客人がきたようですね」
「えっ!?まさか!嘘でしょう!?」
「結界に反応がありました、破られたわけではありませんが…誰かが外側から触れた様です」




