第四十六録:旅路 一節「許可」
「ゴルドー君。」
[ザディルさん、貴方から連絡とは!…厳命の綴り関連ですか?]
「それもありますが…先に報告しなければならない事があります」
私はジェンドゥルの件の詳細をゴルドーへ話す、ヨリツグやヤテンラが関わっていること、高い確率で教会が関わっている事を告げた。
[また教会ですか…]
溜め息でも聞こえてきそうなほど呆れた声、彼方ノ鏡の向こうで頭を抱えているのが容易に想像できる。
[…ほぼ確定ですか?]
「えぇ…私の能力で触れた際に"催眠、幻術系の魔術"だけわかりました、その他の詳細は一切不明…おまけにプロテクトを施されているとなると答えは自ずと…」
[……聖痕の可能性が濃厚ですね]
私の能力は触れた物の詳細を読み取る、物なら製造年数からどう使い込まれたまで…対象が人なら身長から体重はもちろん魔力総量や使用魔術までわかる。
だが今回この偽騎士たちに触れた時の違和感、ノイズが掛かった様に一点だけ情報が読めなかった、"プロテクト"。
わざと魔術を複雑化させ情報を隠す…高等魔術、普通プロテクトぐらいならどうにでもなるが…私が読めないほど重ねに重ねて複雑化した"蜘蛛ノ巣"だ、これを読むのは私の能力でも不可能に等しい。
だからアルカラドのプロテクト専門の解錠屋に頼む他ないだろう…。
[ザディル、今向かっている先はアルカラドですね?]
ゴルドーはこれまでの情報から私たちの行き先を予測する。
「あぁ、ゴルドー君が思っている通りだ解錠屋に頼むつもりだ、蜘蛛ノ巣を解錠してくれたらあとは私の能力で詳細がわかる」
[わかりました、私からアルカラドへ連絡を入れておきましょう]
「忙しいのにすみません」
[いえ!忙しいのはお互い様ですよザディルさん!]
「そう言って貰えると助かります、もう一つの件ですが…"私の魔剣"の使用許可をお願いします。」
[!!]
ゴルドーからの言葉はないが驚愕しているのが手に取るようにわかる。
魔剣…近衛騎士に貸与されるその騎士のため制作した専用の武器、それを総じて魔剣と呼ぶ。
あまりに強力な兵装のため有事以外はアルカラドで保管をしている。
[…了解しました、許可します。]
「ありがとうございます」
少しの沈黙の後にゴルドーから許可が降りた、私が魔剣を使用するのは2、3年ぶりになる。
[…では、ザディルさん報告ありがとうございました!お気をつけて!]
「あぁ…そちらも」
これでゴルドーとの連絡は終わった、さて…あとは問題なくアルカラドへ向かうだけ。
「…能力以外で魔剣を使わなければいいが」
「えー?どうしましたー?」
ポツリと呟いた言葉に反応したハミルトン、全ては聞き取れなかったようだ。
「いえ、なんでもありませんよ」
私は聞こえていないのをいい事に適当に言葉を濁しておいた。
「??」
「ほら、ハミルトン前を見て運転してくださいよ」
「えー?空の上なんですから大丈夫で─へぶぁ!?」
言った側からハミルトンは浮かんでいた魔物であるソラクラゲにぶつかる
「んぁー!!普段は雲の中にいるのになんでこんな時だけいるんですかー!!」
文句を言いながらソラクラゲをひっぺがして空中に投げる涙目のハミルトン。
「ふふっだから言ったではありませんか」
「ちょ!ザディルさん!前にいるの知ってましたね!?」
文句の矛先がソラクラゲから私に変わる、知っているか知らないかで言えば知っていた。
「またぶつかりますよ前を向いてください」
「もう!降りたらなんか奢ってくださいよ!!」
自分のミスなのになぜか私が奢ってあげる事になった、少しの理不尽さを感じながらも退屈しない空の旅だ。




