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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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余談「真夜中の初日の出」

「んぁ……??」

明るい…霞む視界とぼんやりとした意識が現状の理解を遠ざける。

夜天羅とこたつで寝転んで…そこまで思考が巡るとすぐに今の状況を理解した。

俺はすぐに部屋にある時計を見た…いつも通り寝ている間に年を越した。

「0:10か…それなりに寝たな」


「んん…」

俺が動いてしまったせいか眠っている夜天羅が身じろぎをした…暖かい体温を感じる。

暖房の効いた部屋の中とはいえこの居心地の良さと人の温もりから出ていくのは口惜しい。

それを表すかの様に俺はギュッと夜天羅をほんの少しだけ強く抱きしめた。

反射的にだろうか、夜天羅からも抱きしめ返される…余計にここを離れたくなくなる。


しかしだ、あと数分もすれば寺の方へ初詣でに人が訪れるもしかしたら早い人はもう寺にいるかもしれない。

「行かないとなぁ…」

「ん〜?」

そんな事を考えていると胸元がゴソゴソと動く、見てみると夜天羅と目があった。

どうやら起こしてしまったらしい。

「明けましておめでとう」

「明けましておめでとうなのじゃ」


夜天羅と寝転び抱き合ったまま新年の挨拶を交わす、なんかこう…いいな。

恋人と初めて迎える新年は恋人と始まった。

正直な所このままダラダラしていたいだが…残念な事に俺は今から両親の手伝いに行かねばならない。

「あっ…」

夜天羅は短い声を上げる、残念そうな悲しい声だ…俺は誘惑を振り切り抱きしめていた夜天羅を離していそいそとこたつから這い出る。


「もう行くのかの?」

「あぁ行かないと裏方が大変だからな…んんー!」

立ち上がり背伸びをして寝ぼけた体と頭を覚醒させる、今から肉体労働が始まる。

うちの寺では絵馬だったり破魔矢にお守りを販売しているからそれの運搬。

あとはこの年明けの1月1日の深夜だけお雑煮を配っているからそれの手伝い。

このお雑煮が檀家さんや参拝客に受けがいい、だからかうちは深夜1日の深夜帯はまあまあ混む。


軽く身支度を済ませて扉へ向かう。

振り返ると夜天羅がおり出ていく前に抱きしめられる。

「……寂しいのぅ」

ボソリと辛うじて聞こえてきた夜天羅の心の声、無意識に出てしまった言葉。

普通の恋人同士なら他愛のない別れの言葉だが彼女の…夜天羅のコレは他とは違う。


集団から外れ一人取り残される、それは夜天羅の人生の大半だったろう。

どうしても過去の暗い気持ちが掘り起こされて顔を出す…仕方がない事だ夜天羅は封印が解けてまだ一年もたっていない、過去を振り切るにはまだ時間がいる。

そんな夜天羅に俺ができる事は────


「本年もよろしく、今年も良い一年にしような」

「!!」

彼女を強く抱きしめ返してこれからも、この先もずっといると伝える事だ。

「あぁ!よろしくなのじゃ!!」

俺の想いが伝わったのか先ほどの雰囲気はどこかへ行き夜天羅の明るい声が返ってくる。

名残惜しさを残しつつ夜天羅と離れて靴を履き

彼女の方へ振り返る。

「じゃあ…行ってくる」

「うむ!気を付けてのう!」


夜天羅はあの太陽の様に明るい笑顔で俺を見送ってくれる、彼女を見て自然とこちらも笑顔を返す、年の初めに目にするものとしてこれ以上はないだろう。

俺は晴れやかな気持ちで書院を後にして寺の方へ向かった、親父とお袋に新年の挨拶を済ませていつも通りの忙しない元旦が始まる。

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