第四十四録:死の進軍 四節「デュラハン」
「気に触ったか?混ざり者がよぉ!!」
混ざり者か…ザディルさんに向けたセリフ、この場面でそんな事を言うのは恐らくザディルさんが人と妖精のハーフだと言うこと。
「いえ、貴方が死なないか心配なだけですよ…死ねば終わりですからね。」
「はぁ?なに──」
その時、空から降り注ぐは一閃の矢。
合音が響き渡る…夜天羅による本気の弓射、それはサウザンドメイルを貫く。
「は!?なんっ!ハァ!?!!?」
「これで対等、あのデュラハンに集中できます」
ザディルさんはデュラハンに駆け出しぶつかり合う、激しい剣戟が響き渡る。
「お前は邪魔だ」
俺は混乱している隙を突いてジェンドゥルの頭をぶん殴り声を上げる暇もなく気絶させる。
意識のないジェンドゥルにドミネーターを手にはめ動けない様に拘束する。
ザディルさんの方を見るもデュラハンは止まらない、ジェンドゥル魔術を使えない…つまり発動した時点で完結した魔術、デュラハンを倒す事が唯一の方法だろう。
俺は戦闘を繰り広げるデュラハンの背後へ周り刀を振るう…が、左腕でガードされてしまう。
「かったいな!」
そのまま押し戻され地面に着地…隙間なく覆う鎧をなんとかしないとダメだな。
俺は距離を空けて全力疾走、デュラハンに向かいドロップキックをお見舞いしてやる。
水切りの様に飛び跳ね建物にぶつかり破壊しながらめり込む。
「ザディルさん!攻略法わかりますか?」
「あれの弱点は他の操られた死体と変わりありません核である頭部の破壊です、あとはあのカンテラの魂の燃料切れを狙うかですね。」
「頭部!?そんなものどこに───」
「"ここ"です。」
ザディルさんはトントンと左胸部をしと刺し指で軽く叩いて示す、それが意味するのは──
「…埋め込んでるわけですか」
「動く死体に心臓は入りませんからね、身体に命令ができる頭部があればあとはいりません」
醜悪…それしか言葉が見つからない。
死体を弄り倒しオモチャの様に尊厳を踏み躙る、許せるはずがない。
「…止めてやらないといけませんね」
「えぇ…解放してあげましょう」
ガラガラと崩れる瓦礫の奥から姿を現す無傷のデュラハン、俺とザディルさんは再び接近して剣戟を繰り広げる。
堅牢だ、サウザンドメイルの様な硬さの鎧に技術を駆使して防ぐ…生前は名のある強い騎士だったんだと攻防のたびに思い知らされる。
無限の体力に加えてザディルさんが操る剣を弾く鎧…厄介な事この上ない!こいつただただ純粋に強い、ザディルさんと俺を相手にして互角だ。
「どうします!?」
「このまま!このままです、私が隙を作りますからヨリツグさんがトドメをお願いします!」
「了解!」
「うおっ!?」
「ぐっ!?」
大剣の強烈な横薙ぎを二人で受け止めるも押されてしまう、即座に退避。
「パワーもサウザンドメイル以上ですか…」
「嫌な話ですが…アレを作るのに数百人は犠牲にしているはずです、身体は数十人…その膨大な犠牲は主にあのカンテラに凝縮されています…いわば強力な心臓です。」
「酷い話ですね…」
「かつて愚かな人類は…兵器として運用していました、その中には嬉々として犠牲になる者もいたそうです」
「戦争が人を変える…か」
「その通りです」
悠然とこちらに歩む首無しの怪物、左手のカンテラがゆらゆらと軋みをあげ不気味に青白い残像を残して揺れる。
「ヨリツグさん…時間をください、必ず奴の鎧を破壊します。」
「任せてください」
俺はデュラハンへ駆け出して袈裟斬りを繰り出した…余裕で受け止められる、それを皮切りにさらに攻防を重ねてゆく。
「バカみたいなスピードで大剣振り回しやがって!!」
しかもデュラハンは片手でだ、左手のカンテラで塞がっている。
「危ねぇ!?」
上体を逸らして大剣を回避…片手剣の様な切り返しに一瞬反応が遅れてしまった。
「木の棒じゃねぇんだ、ぞ!!」
体制を戻して振りかぶるデュラハンに向かって前蹴りをお見舞いして距離を取る。
流石にぐらつくデュラハン…攻めるチャンスと思いきや違う、誘われてる。
わざと隙を作ってる、誘いに乗ればカンテラで頭をかち割られてしまう。
「…防戦一方だな」
…この世界に来てからこんなやつばっか相手にしてんな俺。




