第四十四録:死の進軍 三節「怒り」
「バカがッ!!不用意に近づきやがって!死ね!!!」
ボゴボゴと地面が揺れ始めた…すると地面から手が生え始めた。
「伏兵か」
俺の腕を掴もうとする死体の腕を切りザディルさんの隣に戻る、やはり一筋縄ではいかない物だ自分が弱いことを理解している。
「やっぱダメでしたね」
「…なに焦らず行きましょう」
そう言って右手をゆっくりと横へ伸ばし前方に振ると円を書く様に10本の剣が宙に現れた。
その内の一本、細身のレイピアに似た剣を手に取る。
「……クソ腹立つぜェ…"天剣"ザディル!!」
ジェンドゥルとドラゴン以外が猛進してくる、数は…300、いや400はいるだろう死体の山。
中にはほとんど骨の奴もいる、よくこれほどの死体を集めてきたもんだ。
「貴方には…心底呆れます。」
ザディルさんの一言の後に浮いていた9本の剣が死体を刻んでいく、的確に正確無比に術式の核を破壊する。一撃、一撃で動く死体からただの遺体に変わっていく。
ザディル・ロールシャッハの本気の操剣術、天に舞う剣…二つ名通りのその実力。
「さて…あとはどうしますか?まだ兵がいますか?」
余裕その物だ、相手にすらならない。
「〜ッ!!!?」
ジェンドゥルの顔が醜く歪んでいくそこには怒り、恨み、嫉み…負の感情がぐちゃぐちゃに詰め込まれている。
「……アハ、アハハハ!!これで死んでりゃいいものをッ!!あーあぁ!!"アレ"を出さなきゃなぁ!!!」
狂乱だ、狂乱したジェンドゥルは上を向いて高笑いをしただがすぐにスン…と一瞬にして静まる。
「自傷!?」
「おやおや…穏やかではないですね」
急に両手首の内側…動脈を掻き切ったそんな事をすれば…案の定、大量の出血。
異様な雰囲気に俺とザディルさんはアイコンタクトを取り俺はジェンドゥルに向かい疾走、周りには護衛の様にザディルさんの剣が援護をしてくれる。
ジェンドゥルに近づくとなれば…やはりドラゴン"サウザンドメイル"が動き出す。
「やれぇ!!近づけさすな!!」
命令を下すとサウザンドメイルは丸くなる…まるでタイヤの様に…なるほど!!
瞬間、予想通りに高速回転しながら迫り来る、回避はできるが…相手は死体だ。
次は何をしてくるか予想はつかない。
警戒は解かずに俺は回避をしてみる、すると─
「そうくるか!」
避けた瞬間にバックで戻ってきた、死体だからこそ身体への負荷を無視した動きをする。
次は刀で受け止める、ザディルさんの剣も援護をしてくれ難なく堰き止めた、だが…離れればまた襲ってくる。
「ザディルさん!」
「任せてください」
俺がサウザンドメイルを相手をしている間にザディルさんがジェンドゥルを阻止しにいく。
ザディルさんは鋭い突きの一撃を放った…しかしそれは血溜まりから生えた大剣に阻止された。
「アハハ!おせぇよバーカ!!!」
「ッ!!ジェンドゥル!貴方はッ!」
俺は異様な雰囲気を察してサウザンドメイルをテコの原理持ち上げ投げて持ち主に返してやった。
再びザディルさんと合流をする。
「なんか…ヤバいかんじですか?」
「えぇ、かなり」
状況は芳しくない様だ…血溜まりから現れたあの異様な大剣、明らかにおかしい。
土煙の中に見えるシルエットが増える、何かを召喚したジェンドゥル。
「後悔しろ!!お前らはなぁ!!死んでも魂は残らねぇよ!!コイツの餌になるからなぁッ!」
煙が晴れて現れたのは甲冑を着込んだ騎士、左手には青く光るカンテラが妖しく光を放つ。
ただおかしい点は───
「頭部がない?」
「デュラハンです、あれは禁術の一つ、作成方法があまりにも上気を逸している…人類史における負の遺産」
「ご名答!!作るのに苦心したんだぜぇ?妖精の新鮮な死体を集めて上質な肉体に埋め込み魂を燃料にさせるのはよぉ!!!」
…聞くだけで悍ましい所業、禁術にされるのも納得がいく。
「…貴方でしたか、4年前に起こった妖精国の殺害事件の犯人は」
怒り、明らかな怒りがザディルさんから感じられる…。




