第四十二録:国家 四節「対策」
「これは…全盛期の私の力が込めて作った物になるわ」
「んん!?そんな貴重な物をわしらに!?」
同意見だな、驚きすぎてフリーズしてしまったが夜天羅のいう通りだ。
「いいのよ、作ったはいいけど正直かなり扱いにくい物なのよ」
そう言ってソレイユさんはまず白鞘の短刀を手に取り俺へ差し出す。
「壊縁、私の遮断の力…それを断ち切る方向へ振り切った物がこれよ、見えないものすら切れるわ」
俺は短刀…壊縁を受け取り鞘から引き抜く…刃渡は30センチほど、うっすらと紫に色付いた刃は寒気がするほどに美しく吸い込まれる様な感覚を覚える。
「すごいですね…」
「でも…注意として壊縁はあらゆる物を断ち切るから壊縁に対して強化や魔法を重ね掛けは出来ないから耐久性は低いわ」
つまり…物理的な物にには弱いが魔法や魔術の様な実態のない物には絶大な効果があるのか。
「夜天羅にはこっちよ」
残りの注連縄を夜天羅へ手渡す、アクセサリーの様に見えるそれを受け取る。
「罷夜来…壊縁とは違いこれは遮断の通過させない方向へ振り切った物よ」
「ほー…通過させない?扱いにくい様な感じはせんがのう」
「魔法使いからすればそれはほぼ手錠よ、魔力の一切を外へ出せないわ」
なるほどな、魔法や魔術は魔力を放つのが基本だこれは身体強化も例外ではない魔力を体に覆う事で強化が可能になる、しかし罷夜来はその一切をゆるさい。
「ありがたいですが…どうして俺たちにこれを?」
「…もちろん魔王ノ宿木に対する対策よ、でも私はよほどの事態に備えた装備がそれよ。」
「よほどの事態ですか?」
「ええ…それは魔王ノ宿木が外に出てくる可能性よ」
あり得るのか…そんな恐ろしい事態が。
正しい順序すら無視して夜天羅から魔王ノ宿木が離れる…すなわちそれは魂へのダメージになる。
「…可能性としては魔王ノ宿木の元の持ち主に出逢ってしまった場合ね…そうなれば。」
「力が強制に還ってしまう?」
「正解」
無い話ではない、外法を行うほど強い怨みを持ち他人の体を乗っ取り転生してまで復讐を止めない執着心…そんな奴が自分の力を取り返さないはずが、探さないはずがない。
「その場合…魔王ノ宿木は夜天羅の外に出さないのが一番、最悪は壊縁で斬る。」
夜天羅を傷つけるなんて…絶対に嫌だ、でも…死が迫るそんな状況なら迷えば死ぬのなら…俺は…。
つい夜天羅の方を見てしまう…それは彼女も一緒だったようだ。
「大丈夫じゃ!お前様にそんな事させないのじゃ!」
そう微笑み俺の手を握る夜天羅…暖かく柔らかな手に安堵感が心を包み込む。
「俺も…夜天羅をそんな目に遭わせない」
「はいはい、イチャイチャしないの」
…そう言われると急に恥ずかしさが込み上げてくる。
「ま、あなたたちはその調子でいいわ、心の隙を作らないのが一番よ…私からの用事は終わりよ」
「わざわざ…ありがとうございますソレイユさん」
「ありがとうなんじゃ!」
「どういたしましてー」
俺が立ち上がる事を察したのかコイスケは床へ降りて大きく伸びをした。
立ち上がり俺と夜天羅は部屋を後にする。
───「コイスケちゃん」
んにゃん?
声を掛けて呼び止めると振り向きこちらを凝視する愛らしい黒猫を私は抱き抱えた。
んんー?
大人しく抱っこされて私の腕に収まる…出会って日が浅い私に身を預ける。
「ちょっとの間愛でてもいいかしら?」
私は飼い主である縁継と夜天羅へ少しの間一緒にいていいかの許可を取る。
「コイスケが嫌がってないですし…いいですよ」
「じゃあまたあとでの〜」
夜天羅が部屋を出る前にコイスケを撫でると直ぐにゴロゴロと喉を鳴らす。
パタン…二人が私の部屋から退室した、私はソファへ座りコイスケをローテーブルへ下ろす。
普段はテーブルに乗らない様に言われているのか恐る恐るとテーブルに座った。
「念には念をね…」
にゃん?にゃんにゃー?
首を傾げるコイスケに私は小さな鈴を取り出して赤い首輪に鈴を取り付ける。
「もしもがあれば…これであの二人を守ってあげてね」
んー?にゃん!!
言葉と思いが伝わったのかそれとも当たり前だ!と言っていれのか力強く鳴くコイスケ、私はその様子を見て頭を撫でた。
「……ありがとね」




