第四十一録:確かな兆し 五節「魔王」
「…まずは三人の認識として"魔王ノ宿木"とは時代の魔王を生み出すための力の継承であってるかしら?」
俺、夜天羅、一二三さんは首を縦に振り頷く多分だがゴルドーさんたちも同じ認識だろう。
「これね魔王になるって部分は合ってはいるけど根本が違うわ」
「魔王の部分は?」
「"魔王ノ宿木"その本来の役割…違うわね目的は器を乗っ取る転生よ。」
「は!?」
なんだと!?いや待て…落ち着けソレイユさんの言葉が本当ならなぜ夜天羅が無事なんだ?
「…ならどうしてわしは乗っ取られんのじゃ?」
「それがねーどうも不具合が起きてる?感じかしらね?正直前代未聞すぎてほとんど憶測でしか言えないわ」
「…憶測じゃない部分は?」
「それは魂がヤテンラ一つだけってことよ、本来なら力と魂がセットのはずの"魔王ノ宿木"がなぜか分離しちゃったみたいね」
「……よかった」
安堵から俺はソファに身を預ける…焦った、何かの条件やタイムリミットがあるかと思ってしまった…。
「あのぅ…なら魂はどこに行ったのだす?」
「これもわからないわ…正常なら地獄行きの後に正しく輪廻するはずなんだけど…そうでないなら最悪ね」
「そうでない可能性があるのか?」
「あるわね、大いにあるわ」
…それだけ魔王という存在は脅威なんだろうか、ソレイユさんが知っているのなら少なくとも一千年前から敵対関係になる…気になる事がある。
「なぁ…魔族はなんで人族の敵になってんだ?こんな多種多様な人がいて魔族だけが敵な理由が知りたい」
「…きっかけは魔族が魔物かどうかではじまり
魔物近いことが判明してね…それから軋轢が生まれ戦争からの長い冷戦そして…魔王戦争ね」
「もーねぇ歴史に追いつくのに5日も掛かっちゃったわ、おかげで肩が凝って困るわよ」
ソレイユさんは右手で自身の左肩を揉みながら愚痴をこぼす…僅か5日で一千年の歴史を把握したのか…何という規格外の能力だ。
「それで魔王が誕生しただすか?」
「いえ…もっと碌でもないやつのせいよ」
渋い顔をして答える、魔王の誕生自体が訳ありってことだろうソレイユさんはため息を吐いてから口を開く。
「魔王は元神よ」
「…詳しくきかせてほしいのじゃ」
「奴の名はアマガルム…何をしでかしたかは掟で話せないから奴の罪状は省くけど要は本来の目的通りセフィロトを使ったのよ…地に堕ち人になったやつはどうしたと思う?」
「…魔王になった?」
「いや待つのじゃ人になったのじゃろ?」
「そうよ、ヤテンラ…だから後天的に魔族になったのよ」
また…厄介な情報だな、後天的に魔族に成れるなんてそれだけで碌でもないのがわかる。
「外法…胎殺餓喰、魔族を…喰う事で自身で取り入れ血を入れ替え成り代わる魔法儀式の一種よ…ほんと外法も外法よ。」
…かなり聞くに耐え難い様な魔法なんだろう、途中言葉を濁す箇所があったのは口にするにはあまりにも惨い工程があるのか。
「そ、そげな方法で魔族になって魔王になって…何がしたかったんだすか」
「神界への復讐ね…手始めに人族を攻略を始めたわ上手くいってたはずだったんだけどね、流石に事態を重く見た神界は元身内の不始末って事で"神が直接関与しない"という掟の元で人に一つの異能を授けたわ…勇者と言う名の特攻能力をね」
魔王の対抗手段としての勇者か…王道と言えばそうだが神の身勝手な気がしないでもない、ただアマガルムって奴は掟を逆手に取ったのかもしれないな。
「他になにか聞きたい事は?」
「そがな危険な奴の…アマガルムの魂はどこに行った変わらないだすか?」
「わからないわね、わかってたら私が殺しに行ってるわよ」
ソレイユさんにここまで言わせるか、それほどの大罪を犯した証拠でもあるな。
「…魔王ノ宿木を手放す方法は?」
「現状はないわね、神だった私の全盛期の力+入念な準備をしてどうなるかって感じよ」
そう簡単にはいかないか…やはりきちんと婚姻の儀式を行い神から堕ちるしかないのか。
「日本に帰って婚姻儀式をするしかないのう」
「あら?婚姻の儀式?」
俺は今の夜天羅の状況などをソレイユさんへ伝える。
「なるほどねぇ…穏やかな堕落の仕方ね、正しい手順と儀式なら魔王ノ宿木を魂から引き剥がせるわ。」
「さて…と三人とも悪かったわ、乗り込んできて話の邪魔をしちゃったわね」
「い、いえ!大丈夫だす!知りたい情報は全部知ることができました!将軍様にも良い報告ができるだすよ!」
「なんだ…アイツの指示だったの」
「所で…ソレイユさんは俺たちへの用事って言うのは?」
俺はソレイユさんへ当初の目的を尋ねる…一体何の用事でここへきたんだろうか?
「……ちょっと事情が変わったわ、また来るわね」
「?わかりました」
そう言い残しソレイユさんは部屋を退室、一二三さんも続いて出て行った。
「邪気の原点を知れたのはよいが…進展はなかったのう」
ソファからベッドに移りゴロンと寝転ぶ夜天羅、確かに…前進はしなかったが有益な情報だ
「教会が躍起になるわけだな」
「じゃなー本当に厄介な力じゃ!」




