第四十一録:確かな兆し 四節「間の悪い事」
「あらーなかなかハードね」
他人事の様にのほほんと野次馬をしている桔梗…まぁ実際、他人事なのはそうだが。
「そ、そんなぁわだすあの二人と敵になりたくないだすよぉ…」
縁継さんと夜天羅さんは良い人だと感じているし実際そうだと思う、それも敵対したくない一面ではあるが一番の理由は戦闘力だ。
まず勝ち目がない逃げるので手一杯、森での一件が証明している。
透過の瞳での不意打ちなら…と考えるが触れた瞬間に反撃が返ってくるだろう。
それほどの差がわだすとあの二人にはある。
「ほら、指令書は最後までちゃんと読みなさい」
桔梗はわだすの隣にきてある箇所を指差す、そこへ視線を落とし読んでいく。
「…調査方法はわだすに一任する?」
「だから敵対しない方法を選びなさい」
そうだ…普段隠密行動ばかりで無意識に今回も隠密だと思ってしまった、そうとなれば!。
「わだす!二人さに直接聞いてくるべ!!」
「ちょっと?椿ちゃん?」
思い立ったったら吉日、わだすはすぐに部屋を飛び出して縁継さんと夜天羅さんの部屋へ向かう。
─────パタン…
「あ、あら?どうしたの椿ちゃんすぐに帰ってきて?もしかして…」
止める間もなく出て行った椿ちゃんが心ここにあらずの状態で戻ってきた…失敗したのだろうか?
「……………」
「つ、椿ちゃん?」
私の言葉には答えずゆっくりと目が合う、本当にどうしてしまったのか?すると──
「こ、こうして…こうしてたべ……」
そう言って身振り手振りを始めた、両腕を前に出して抱きしめる仕草そして唇を尖らせる……あぁなるほどね。
「イチャイチャしてる所につっこんだのね」
「んだす……」
つまりこのおバカちゃんは先走りまくって扉を勢いよく開けたら……わたしはその場面を想像してしまう。
「あは…あははははははははははっあはは!!」
「そ、そんな笑うことないだすよ!!」
これが笑わずにいられるだろうか?否、答えは否だあんまりにも面白すぎる。
顔を赤らめて私に可愛い抗議を始める椿ちゃん、純情なこの子には刺激が強過ぎたか。
「ひっ、ひぃ、あはは、ごめ、ごめんごめん」
「もう!わだすは思い出すだけでもう!」
椿ちゃんはさらに顔を赤くさせツノまで淡く赤に染まる、帰る前にいいものが見れた。
「あはは、あー笑った笑った…ま、その調子なら大丈夫そうね、あとは椿ちゃんなりに頑張りなさい」
「うぅ…ありがとうだす」
「じゃあね」
私はそれだけいい八重ノ島へ帰った…椿ちゃんがあの様子なら私がいなくても大丈夫。
────俺と夜天羅は座って抱き合ったまま呆然としてしまう、勢いよく一二三さんが訪ねてきたかと思うと俺たちを見て動きが固まり意識を取り戻したかと思えば勢いよく去って行った。
見られて恥ずかしいとそう思うより何故あんな勢いで訪ねてきたかのほうに意識がいく。
「な、なんだったんだ…」
「なんか急ぎの用かのう?」
用事か、確かにそうだろうけど…
「がっつり見られたな」
「んー?別にいいのじゃ」
夜天羅は特段気にしていない様子でさらにぎゅっと密着する俺と同じ様に抱きしめる。
「〜♫」
上機嫌な様子の夜天羅……なんだか疑問やらなんやらが一気にどうでも良くなった気がする
まぁ…今度、一二三さんに何の用事か聞けばいいか。
───3日後、俺と夜天羅…それから目の前に一二三さんと三人でテーブルを囲んでいた。
あれから何度か城内で顔を合わせるがその度に顔を赤くして逃げられる始末だった。
だから夜天羅とあちらから接触してくるまで静観していた…それが今日、一二三さんが訪ねてきたもちろん今回はきちんと扉をノックしつだ。
「あ、あのぅ…こないだすみませんだす」
「全然大丈夫ですよ」
「わしらは気にしとらんのじゃ」
いまだモジモジしている一二三さん…見られた俺たちではなく見た方がダメージ?でかいのはなんだかモヤっとするが…そんな嫌だったか?まぁ…人それぞれか。
「それで今日はどうしたんじゃ?」
「はいぃ…あの…そのぉ」
かなり言いにくそうに言葉を詰まらせているが…そんなに聞きにくいことなのか?内容が想像できない。
「ほれ!しっかりせんか!」
「はい!二人のことを教えてください!!」
「んん?」
俺たちの事を教えて欲しい?意図がわからず困惑する隣の夜天羅も似た様な感じで少し困っていた。
「…その、教えるって一体なにを?」
「というより急にどうしてじゃ?」
「実は──」
一二三さんが俺たちに経緯説明し始めた、それを聞いてさらにわからなくなる…一二三さんの行動がだ。
「…そんな包み隠さず話してよいのか?」
「将軍様はわだすに一任すると命を下しただす、だからわだすはこの指令で1番成功すると思っただす!」
さきほどとは違い真っ直ぐ俺たちと目を合わす一二三さん…彼女の能力を考えればこんな真正面からでなくともよかったはずだ。
「それに…お二人は良い人だす、嫌われたくはない…だす」
…その言葉に一二三さんの心情が少し見てとれる、ただでさえ恨みを買いやすく神経を使う隠密行動を生業としている。
いくら能力が隠密に向いているからといって本人の気質がそうとは限らない。
夜天羅と目が合う、どうやら気持ちは同じらしい。
「いいですよ、答えられる範囲なら」
「わしもじゃ」
「あ、ありがとうございだす!!」
そこから…一二三さんによる質問が色々とあったが大体は当たり障りない事ばかりだった。
特段答えを渋る様なことはない。
「あと…夜天羅さんの"魔王ノ宿木"についてだす」
これも知っているのか…ただ"魔王ノ宿木"については俺たちは知っていることはほとんどない
「すまない"魔王ノ宿木"についてはほぼなにも知らないんだよ」
「逆に何か知ってたら教えて欲しいくらいじゃ」
ガチャ!扉が前触れなく開かれた、そこに立っていたのはソレイユさん。
「ど、どうしたんですか?」
「ごめんなさい、二人に用事があったんだけど話が聞こえてね…ヤテンラが"魔王ノ宿木"って本当?」
「そうじゃよ…言っておらんかったかのう?」
カツカツと早足で夜天羅に近づきジーッと夜天羅を見つめるソレイユさん、その表情は真剣そのものだった。
「……薄々はそうじゃないかと思っていたけどまさか…そう…次元を渡っていたのね」
「ソレイユさんは知ってるんだすか?」
「まぁね、知りたいなら私が話すわよ?」
渡りに船だ、俺と夜天羅も魔王ノ宿木の詳細について知りたい所だ。
現段階では次代の魔王を生み出すための力…ぐらいの情報しかない。




