第四十一録:確かな兆し ニ節「古い知人」
「ほら、入ってきなさい」
「え?」
俺と夜天羅それにマルスさんの声が被り扉の方へ視線を向けた…すると静かに扉が開かれた。
「ありゃぁ…なんでわかったんだすか?」
おずおずと少し申し訳なさそうに顔を覗かせたのは一二三さんだった。
「腐っても元神よ、これぐらいわかるわよ…それにしても貴女も魔眼持ちなんてねぇ」
「も?他に誰が…」
「あー…俺ですよ」
俺はメガネを外して一二三さんへ解魔の瞳を露わにした。
「!?わ、わだす以外に初めて見ました!」
「まぁ…昔から人族の魔眼持ちは珍しいからね、だから強力な能力を有するんだけどね…貴女は透過の瞳ね?」
「そ、そげなことまで!!」
「透過の瞳?」
「わだすの魔眼は直に姿を相手に認識されてなければ気配や物音を消せるんだすよ」
…協力だな、この上なく隠密に長けた能力だ。
特に直にって所がヤバいな魔法、魔術それに機械類でさえすり抜けて侵入が可能だろうな。
「ふむ?…じゃあなんでわしにばれたんじゃ?」
確かに…この能力ならまず捕捉されるはずがない…まさか、そんなはずないよな?頭によぎるのは至極単純で致命的なミス。
「いやぁ…まさか、その…だれかいるなんて思わなかったんだすよ!それにあの距離で捕捉されるなんてぇ」
一二三さんは半泣きになりながら夜天羅に見つかった経緯を語る…予想が当たってしまった
つまりは魔眼を使用してなかったわけだ。
「ちなみに…縁継さんのは?」
一二三さんは躊躇いながらも俺へ問うてきた…まぁ、特段能力がバレて困るわけでも無い。
「俺の身体に害をなす魔法、魔術の解体です」
「魔眼は基本的に能力を知っていてもどうしようもないからねぇズルよね」
「…だからこそ昔は色々ありました…悲しい…」
ポロン…悲しい複雑な音色がマルスさんの心情を表している。
「あ、ごめんなさい話が逸れちゃったわね」
[いえ、大丈夫ですよ…それで何か解決策が?]
「昔の古いツテからの手紙でね、内容は…八重ノ島からの移住者よ」
まさに…さっき話していた問題の部分にドンピャな提案だった、しかし大きな疑問が残る。
「待つんじゃなんで八重ノ島のヤツがこの状況を知っておるんじゃ?」
夜天羅の言う通りだ…一二三さんを疑いたくはないがあまりにも状況が怪しい。
「それなら簡単よ?八重ノ島にはいるでしょ?瞬間移動持ち…いや正確には点と点を結ぶ魔法使い」
「……な、なぜにわかったんだすか!?」
「クイーンズガーデン使って調べればその辺はまぁわかるわよ、伊達にあの時代の難攻不落を謳った魔法だからね」
過去…魔法全盛の時代に難攻不落の魔法としてリネットが構築した魔法、出来ることが多い。
よく全員で倒せたものだ…。
[ちょ、ちょっと待ってください!つまり…その、八重ノ島の住人がフラウリンへ?]
彼方ノ鏡の向こう側でゴルドーさんが狼狽しているのが声からよくわかる。
「…そんな簡単に来てくれるのかのう?」
確かに、八重ノ島の住人だって住み慣れた愛着のある島を離れるのは抵抗があるだろう。
「その辺は多分大丈夫だすよ?すでに鬼族と天狼族から移住者がいるみたいだす」
「…一日でか?」
「はい!やはりわけぇ世代が多いだすがそれ以外の世代もいるだすよ!」
まぁ…島の中だけとなれば若い世代は外に出たくて仕方がないよな…
[…天狼族ですか!?いや鬼も私どもは知らない種族ですね…]
ゴルドーさんは夜天羅の事はずっと魔族と思っていたのだろうだから鬼を知らない。
「あー…っと、ゴルドーさん鬼は夜天羅の種族でもあります。」
[な、なんと!!]
「…わしが言うのもなんじゃがなぜ鬼族がこの世界におるんじゃ?」
そうだ!そもそもなんで鬼族が繁栄してるんだ?鬼は日本人の間だけで生まれるはずだ。
「八重ノ島の実情を知らないから予想になるけど
ベースは日本人と神の混血、それが長い時間とこの世界の魔力の濃さで鬼族として固定化されたんじゃないかしら?」
ソレイユさんの話は一応納得はできるが…実際は八重ノ島に行ってみるしかないか…
「で、移住者な話はこのまま進めていいかしらゴルドー?」
[いえ…流石に国王様へ話を通します、それまでマルスをフラウリンへ滞在させても?]
「構わないわ」
[では、失礼します]
彼方ノ鏡での通話は終了。
マルスさんが彼方ノ鏡を懐へしまう。
「しばらくの間はよろしくお願いします。」
ポロロン…澄んだ音色を鳴らすと一礼するマルスさん…どういう感情かわからないが嫌そうではない気はする。
「こちらこそよろしくねマルス」
ソレイユさんとマルスが握手を交わした。




