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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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余談「縋ること:前編」

───夜でさえ茹る蒸し暑さが容赦なく襲ってくる…が、それは外の話だ。

空調の効いた部屋にいる俺と夜天羅それにコイスケには無用の心配だった。

「文明に感謝だなぁ」

「どうしたんじゃお前様」

「いやぁ快適に過ごせてる今に感謝してる。」

「それはそうじゃな…しっかしまぁ外は暑いのう」


二人で話しながらアイスを食べて雑談を続ける

「夜天羅の時代はどうだった?」


「わしの時代も夏は暑かったが…ここまでじゃなかったのう、それにわしは山に篭っておったからな山は意外涼しいからのう」

「親父やお袋の時代もここまでじゃなかったらしい今の時期には涼しくなってきたらしい」

「テレビ見た温暖化ってやつかのう」

「まぁそんなとこだな」


本当に他愛のない雑談、ゆったりとした時間が流れる…時間は日付が変わる少し前。

今は夏休み半ばだ夜更かしをした所で何問題はない、課題もすでに終わらせている。

「お、日付が変わったのう」

「だなー…そろそろ寝る?」

俺はテレビから夜天羅の方を向く、すると夜天羅は何やら悩んでいる様子だった。

「どうした?」

「のう…ちょっと気分転換に散歩に行かんか?」


「いいよ」

…夜天羅が外に出ようと言うのは珍しい、自分の邪気の事を理解している。

だから極力は出ない様にしているし出れたとしてもこの書院から出た林の方を少し行ったお地蔵さんがある場所までだそこから先は寺の結界から外れてしまう。

「コイスケも行くか?」

にゃん!にゃんにゃにゃん!!

鳴き声を上げるとすぐさま猫用ベッドへ走り丸まる。


「……さいですか」

「嫌だったみたいじゃな」

そんなコイスケの様子を見つつ俺と夜天羅は外へ出る準備をした、と言っても靴を履いて懐中電灯を持ち虫除けを持ったくらいだった。

「じゃあ行こう」

「うむ!」

扉を開けると世界が違う、涼しかった室内とはまるで正反対の世界だった。


「やはり暑いのう!」

「夜でこれだもんなぁ」

陽が差してなくてこの暑さ、もはや日中に外なんて…もはや拷問だ。

でもあの暑さの中で親父は法衣を着て涼しい顔してんだもんなぁ…素直にすごい。

そんな事を思いつつ懐中電灯を道へ照らす。

「さ、お前様いくかのう」

「あぁ」


俺と夜天羅は林の踏み分け道を進んでゆく、ここへは今日の様に夜天羅と散歩で何度か通ったことがある。

「〜♫」

隣にいる夜天羅と手を繋ぐ、彼女は上機嫌で歩いてゆく。

今から行くお地蔵さんがある場所は少し開けた場所になっておりそこにはベンチがある。

なんでも昔は小さな社があったがそれは夜天羅の封印をより強固にする為のものだったが封印が安定した頃には潰して今の本堂だけになったと聞いた。

「お、やはり涼しくなってきたのう」

「林に入るとそうだな…案外涼しいな」

書院から出た時より確かに涼しい、暑いのは暑いが何もしないでも汗が出てくる様な状態にはならなさそうだ。

そんな調子で俺と夜天羅は雑談をしつつ数分歩いてゆく。


手を絡めて歩く最中夜天羅はついに腕に抱きつき俺と歩き出す。

「んふふ、いいのうこうして腕を絡めて歩くのはのう」

笑顔を向けてくる夜天羅に変わらず俺はドキドキしてしまう、明るい彼女の笑顔に目が眩む、顔が暑いのは夏のせいだろう。

夜の林には虫の声と俺たちが歩く音だけが聞こえる。


そんな中…灯を照らす箇所に白い靄がかかる。

霧…だろうか?この場所で初めて見た。

「…おかしいのう急に霧が出てきたのじゃ」

「本当だな…それになんか涼しすぎないか?」

さっきよりも気温が落ちていってる、いくら林の中は涼しいとはいえ夏とは思えないほどの気温をしていた。

「……幽霊か?」

「…来るのかのう?ここ寺じゃぞ?」

夜天羅の言う事も一理あるが…わざわざこんなとこまでくる幽霊なんて…成仏でもしたいのだろうか?


「でも確か…結界は邪気を抑えるのに特化してるから他の機能はないんだよな?」

「来空からそう聞いとるのじゃ、邪気のおかげで他の者は寄ってこないとの」

幽霊なら邪気の影響が薄い、あくまで人と妖のみに作用する死んだ幽霊なら効き目はない

ただ邪気の圧に寄ってくるはずがない。

幽霊からすれば得体の知れない強大なナニカがいる。


「…やっぱりなんかいるっぽいな」

「じゃな…お前様の予想が当たっていたみたいじゃな」

視界の端で捉えたのは謎の影だった、俺と夜天羅は背中合わせになり視覚を補い合う。

「…せっかくの雰囲気が台無しじゃ!」

そう憤る夜天羅、気持ちは俺も同じだ。

良い感じで二人の世界に浸っていたというのに。


「…っ!そこか!!」

目の端に捉えた黒い影その顔面に向けてアイアンクローを放つ。

解魔の瞳を開放した状態だ抜け出せるやつはそうそういない。

「ぎゃぁぁぁあわぁぁあだだだだだだっ!!!」

ジタバタと逃れようとする男の幽霊…若い、俺より少し上か下手をすれば同い年かもしれない…幽霊の様子からひとまずは悪霊の類ではないことが確認できる。


「コウくんを離してよ!!」

そう言って現れた女性の幽霊は俺に掴み掛かろうとする…が。

「なんじゃもう一人おったのか」

「キャッ!!えっ!?」

あえなく夜天羅に掴まれて拘束される、文句を言おうと女の霊は夜天羅を睨むも鬼である夜天羅に驚き固まる。

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