第四十録:再建 四節「空から来たる者」
───旦那様が飛び去ってはや3時間程が経つ、この国に今は三人と一匹だけになった。
今は時間を持て余してルシュエーラと遊んだりして皆で過ごしている。
「お姉ちゃんにも立派なツノがあるんだね〜」
わしのツノを見てルシュエーラはそんな感想をポツリと呟く。
「いいじゃろー」
「私のはまだ小さいんだ〜」
……この子は今何と言ったんだ?"私のは"?
ルシュエーラの隣に座っていたソレイユどのへと視線を向けると驚いた表情で目が合う。
それもそのはずだルシュエーラにはツノなんて生えていないのだから。
「…ほー、ルシュエーラのツノはどこに生えておるんじゃ?」
「え〜とね今出すね〜」
そう言ったルシュエーラは力むと頭の辺りから赤い炎の様なゆらめき現れて短いツノが形作られた。
「幽鬼…まさか、いや…そうか…日本人の血が入っているものね」
「あの手記には書かれてなかったがのう」
「多分…あえて書かなかったのかもしれない、魔族と間違えられる可能性を危惧したのでしょうね」
わしとソレイユどのはルシュエーラに聞こえない様にひっそりと言葉を交わす。
魔族…千年前の時代でさえ人と対立関係だったのがソレイユどのの言葉からわかる。
「それにまさか幽鬼とはのう…」
幽鬼、鬼でも稀に生まれてくる物質的なツノのない鬼だ…特徴はこの溢れる魔力で可視化されたツノ、これは魂の可視化と来空のやつは言っておった、そして…幽鬼は異常なまでに妖術の才能がある。
鬼の特性の頑丈さと力に加えて妖術。
ルシュエーラが真面目に鍛え成長すれば…果たしてどれほどの傑物になるのやら。
「お姉ちゃんどう〜?」
「んー?将来立派なツノになるのじゃ!わしが保証するのじゃよ!」
「ほんと〜!」
「ほんとじゃ!」
「そうよ、ルシュエーラはよく寝る子だもの」
「寝たらおっきくなるの〜?」
「わしの国では寝る子は育つというんじゃよ」
「そうなんだ〜!」
満面の笑みを浮かべるルシュエーラはよほど機嫌がいいのか足をパタパタと遊ばせている。
…平和な時間だ、コイスケも日向ぼっこでうつらうつらと眠りこけ────
「…人がこっちに向かって来てるのじゃ」
「なんですって?私が受け継いだクイーンズガーデンの仕様はあの時から変更してないわよ!?それを突破して来たのね」
儀式前に侵入者のクノイチが来たその時から仕様が変わっていないつまりは招かざる客。
「速いのう…」
「多分…ドラゴンかワイバーンにでも乗ってきてるんでしょう」
「ステンノどのはルシュエーラを連れて城へ避難するのじゃ」
「……いえ私は後衛になるわ逃げるのは最後、わかっているわよいざとなれば逃げるわよ」
ソレイユどのはわしが何を思っているのかをわかっているその上で自分は残ると言った。
ならわしはそれを信用する。
「来よるぞ!やはり上空じゃ」
高い木々より上から超高速に飛来するなにか、風を切り現れたのは───
「グリフォン!?なんて珍しい!」
上半身が鷹、下半身は虎…全身が真っ白の美しく気品を感じる獣が風を巻き上げわしらの前に降りたった、その巨大な体躯から見下ろす様に鋭い眼光がこちらを睨む。
わしは鞭を構えソレイユどのは手のひらに魔法陣を展開させる。
緊張感が高まる、その時─ポロン…琵琶の様な弦を弾く音が耳に入ってくる。




