第三十九録:再生 三節「正体」
「さぁもう逃げられんのう」
「……ッ!!」
忍者の正面には俺が、背後には夜天羅が迫る…全身黒ずくめで顔すら見えない、だが…ひどく動揺している様に感じられる、忍者刀を逆手に構えて警戒、戦闘の意志を見せる。
「…アンタは誰で何しに来た」
睨み合いが続く中俺は答えない前提で質問をする、戦闘は避けられないかもしれないが一抹の期待を胸に問いかける。
「……降参だぁ」
訛りの効いた口調でポツリと呟き両手をあげて刀を手放す…それにこの声は女性か。
俺は警戒を解きはしないが夜天羅が忍者の背後から鞭を巻きつけて拘束した。
…存外に大人しく降参した、逆にそれが怪しく疑念拭えない。
「ふむ…で、お前さんは何をしに来たんじゃ」
俺の隣に来た夜天羅が再度目的を尋ねる。
「オラは将軍様に頼まれて調査に来ただけさ」
「調査か…またなんでこんな時に」
「ここは定期的にわたすが調査に来てんだべな
そんで来たらびっくり様変わりしてんだもんよ」
…訛った口調のせいか緊張感が削がれてゆく、しかしまぁ…調査か信じて良いものかどうか悩むな。
ここに誰か来るのは予想はしていた、だがそれはもう少し先の事だと思っていた国の調査団とかギルドの冒険者などが変わりすぎた現状を調査に来ると踏んでいた。
しかしだ、目の前のクノイチは一人だけそれもわずか異変を察知して2日でここへ来たことになる、あり得ない。
「オラからも一ついいべか?」
「…なんじゃ?」
「なんでわたすと同じ鬼族がいるんだべ?」
「……はい?」
夜天羅と顔を見合わせる、このクノイチは自分と同じ鬼族と言ったそれはつまり───
「おぬし、悪いが頭巾をとるぞ」
夜天羅はクノイチに近づき頭の頭巾をバッと勢いよく取り払った。
顔を露にした女性は明るさに顔を少し顰める、俺たちはその額に目がいく。
…本当にツノが生えている、夜天羅のものより短いツノが前髪の付け根あたりから顔を出していた。
「…マジか」
流石にこれは予想すらしていない自体だった、衣装や刀を持ってることからもしかしたら八重ノ島関連かと思っていたが…
「島じゃアンタみたいなべっぴんさん見たことないからびっくりしたぁ」
「島…八重ノ島か?」
「うん?そうだすよ」
ニヘラと笑うクノイチ、その人懐っこい笑顔に少し警戒が緩む…なんだ…この?なんだ?
あまりにもクノイチに向いてない気がする、夜天羅も俺と同じ感想なのか微妙な顔をしていた。
気がいいし人柄も良さそうなんだが…それが隠密の職に向いているかといえばそうではないだろうな。
「うーむ…はぁ、縛って悪かったのう」
夜天羅はクノイチを拘束していた鞭を解き自由にした、座っていたクノイチは立ち上がるとこちらに頭を下げる。
「わたすの事を信じてくれてありがとうだす、わたすの名前は一二三 椿と申します!」
俺と夜天羅も椿へ自己紹介をする。
「…早速なんですがぁここで何がったんだすか?先月来た時とは様変わりしすぎて….」
「あぁ…それは──」
話しても問題ない部分を椿へ話す、リネットがいた事それを討伐した事で魔法が解けたと伝える、ステンノ神やその周りの事は明言は避ける。
「ほえー…そうなんだすかぁ」
「というかなんで八重ノ島の将軍はここを調べてたんだ?」
そもそもの原因はこれだ八重ノ島の将軍はなぜこのフラウリンを定期的にわざわざ部下を使い調査をしていたんだ…よほど重要な何かがここにあるのだろうか?
「うーん…それがわからないんだすよ、将軍様から詳細は語らずいつも"動けない俺の代わりにすまないな"…と仰られるんだよぉ」
曖昧だな…ただその将軍はここに執着をしている様子ではあるな。
「そうか…これから椿さんはどうする?」
「わたすか?一先ず…現状は知れたんで帰って報告するだす」
「そうか…わかったのじゃ」
「はい、それではぁ」
ペコリとお礼をしてフラウリンとは逆方向へ去っていく椿さん…あっさりとことが済んでしまい嬉しい反面ちょっと拍子抜けだ。
「帰ったな…」
「じゃなぁ…帰って報告するかのう」




