第三十九録:再生 二節「謎の気配」
翌日、新しい身体に魔力を馴染ませるためステンノ神は一室に篭り切りになった。
ルシュエーラとドロシーは一緒に遊びメディその見守り、トリーナさんたちはこの街の国立図書館へ向かう。
クイーンズガーデンのおかげで護衛の必要もない…つまりは俺たちは暇をしている。
昼下がり、城の正面にある外階段に腰掛けて座り夜天羅は俺の膝に頭を乗せて寝転がる。
「暇じゃのう…」
「だなぁ」
うにゃん…にゃ…
コイスケもゴロンと寝転び日向ぼっこに目を細めてウトウトと船を漕いでいた。
部屋ででダラけるのも午前中で飽きてしまい外に出たはいいものの暇である。
「トリーナたちについて行けばよかったかのう」
「図書館か、暇は潰せるかもしれないな…いくか?」
何か面白い本でもあれば暇は潰せるかもしれない…待ち時間と意識するとなぜか時間の進みが遅くなる。
「どうしようかのう…あまり邪魔す───」
「うお」
急に夜天羅がガバッと起き上がる、驚き顔を見ると真剣な顔…いや周りを警戒している。
「どうした?」
「森の中に誰かおる」
誰かいる…か、夜天羅の探知精度は高いそんな彼女が"誰か"と言った。
「敵か?」
「わからんのじゃ…しかし不自然じゃな」
「不思議?」
「うむ、わしが気配を感じ取った瞬間すぐにわしの探知範囲の外にでたのじゃ…まるで焦ったようにのう」
おかしな話だ、まるで夜天羅の探知範囲を知ってるかの様な動きをする…俄然、怪しい。
俺たちは立ち上がり顔を見合わせて走り出す、コイスケも自体を察して俺の影の中に潜む。
城からその気配のした場所へは数十分で到着した、案の定…辺りには誰もおらず人がいた痕跡もない。
「……集団ではなさそうだな」
「じゃな…わしが察知したやつも一人だけじゃったしな、逃げ足が早いのか今の所は気配がないのう」
さて…どうするべきか。
正体不明の人物はどういう訳か夜天羅の探知範囲を掻い潜る事ができる…そして恐らくは集団ではなく少数か一人だけ。
主戦力は俺と夜天羅だけ…メディさんがいるにはいるが無理はさせたくない。
何よりドロシーとルシュエーラちゃんに危害を加えられるなんてたまったもんじゃない。
「城に戻ろう」
「うむ、皆に知らせんとな」
うにゃん?にゃ!
コイスケは影から顔を出してある方向をジッと見つめている、こういう時のコイスケの行動は─────
敵に余計な動きをさせないため俺と夜天羅は即座にコイスケが見つめた方向へ全力で走る。
「捉えたのじゃ!!」
やはりコイスケの野生の直感はすごい、捉えたのならそう易々と逃げれはしない。
ここからは敵との追いかけっこの始まりだ、俺は走りながら刀を抜刀する。
夜天羅へアイコンタクトを行い別行動を取る、俺は少しズレて離れた位置から追う。
森から俺たちにアドバンテージがある、このウルシヴの羽織は森の中でのみ無音なれる。
夜天羅はなぜかバレているだから俺が森に紛れて姿を消す。
「止まらんか!」
夜天羅が見事に敵を目視で捕捉した、木々を飛び回る黒ずくめの"ソレ"に驚きを隠せない。
その姿はまるで忍者だ、服装から何から何まで忍者だ…疑問は尽きないがそれも奴を捕まえれば済む事だ、しかしまだ距離がある。
斥候…なんだろうかやはり足が速い、俺たちと同じスピードで動いている。
…少し横槍を入れてやるか、俺は走りながら太枝を斬り槍の様にして持ち投擲する。
「!!!?!??」
忍者は迫り来る太枝を間一髪で避ける、こんな攻撃が当たるとは思っていない…が、奴は夜天羅から目を逸らした。
「…ッ!!」
夜天羅は忍者が足場にするはずの太枝を鞭で巻きつけへし折った、新しい足場もなく落下。
「…そうくるか!」
忍者は即座に鉤縄を取り出して木に巻きつけ落下を防ぎ振り子の要領で逃げようとする。
「逃すかよ」
俺はナイフを投擲して縄を斬る、流石に忍者も打つ手がなく今度こそ地面に着地した。
そこを俺と夜天羅が挟み撃ちにする、もう逃げられはしない。




