第三十八録:あの子のために 五節「失敗作」
頼まれた魔物で唯一…ステンノ神が注意を促したのはバーサクノスフェラトゥ…
人形の吸血を好む魔物、血を吸えば吸うほど力を増すそうだ。
問題は…ステンノ神が知る千年以上前からいる事だ、曰く実験の成れの果てだそうで、人ではなく人に近い動物での実験で生まれたらしく"神の痕迹"関連だと言っていた。
「ここか…」
「雰囲気あるのう」
俺たちが訪れたのはフラウリンの地下だ、過去のフラウリンはバーサクノスフェラトゥを倒すことができずに誰も触れられない様に地下奥深くに封印した…負の遺産をどうするかの時に今回のリネット暴走。
俺は刀を抜刀、夜天羅も鞭を構える…互いに気合いを入れてから扉を開く。
中は薄暗く、広い…奥が見えない。
至る所が茶褐色で汚れていた…恐らくは古い血がこびり着いたものだろうな。
部屋の奥から殺意を感じる、鎖の音がやかましく唸り上げりた。
暴れている、自身の鎖を解きご馳走にありつきたい…バキンッ、金属が壊れる音が響く。
さらに連続して破壊音が響き渡りうるさい足音が耳に入る。
ガァァアァァァア!!!
現れたのは化け物だった…おおよそまともな生命の形をしていない。
肌は緑色で両手足には長い爪、ハエの様な赤く大きな複眼…血を吸うための長い針の様な尻尾、いったい…どんな実験をすれば生命をこうも弄ぶことができるのだろうか?
飛びつこうと寄ってきたバーサクノスフェラトゥに対して刀を振るう。
右腕を切り落として俺は追撃で蹴り飛ばした。
「!!」
驚いた…直前で方向を変えて致命傷を避けた、俺の速度について来れる。
ステンノ神が忠告するわけだ…油断はできない
ヤツも石化されていたせいで状態は当時のまま
つまりはリネットがどうするか悩むレベルだ
だがまぁ…俺のそばには夜天羅がいる、アイコンタクトを取り俺はすぐに追撃へ。
ゴァ…ガァァァ!!
無くなったはずの右腕を振りかざすノスフェラトゥ…再生速度が段違いで早い。
刀で受け止める、まるで鉄同士がぶつかる様な感触と音…爪の硬度が異常だ、くらえばタダでは済まない。
「!!」
ノスフェラトゥはその鋭利な尻尾で俺を狙う…しかしそれは赤い鞭により止められる。
ガァ!?
夜天羅に気を取られている隙に俺はノスフェラトゥの右腕を弾きそのまま袈裟斬りにする、さらに心臓を突き刺した。
ゴァ…ゴプッ…アァアァァァ!!
それでもダメージを気にせずに攻撃を仕掛けてくるが…ノスフェラトゥが視界から消える。
次の瞬間にノスフェラトゥは壁に激突した、夜天羅が尻尾に絡めた鞭を使い投げ飛ばした。
俺と夜天羅による猛攻…だがバーサクノスフェラトゥは壁から平然と立ち上がり向かってくる
…ステンノ神からはコイツへの勝ち方は血を流させることと聞いている。
なんでも血はいくらでも凝縮して蓄え続ける、その血液を魔力に変換して回復などをしている、流した血は急速に劣化し蒸発、だからヤツには血を流し傷を回復させ続ける。
「…気の長い戦いになりそうだ。」
向かってくるノスフェラトゥの攻撃を捌いていく、なぜかわからないが俺に執着をしている。
夜天羅には目もくれない…もしや血液の多い方を優先して狙っているのか?
「チッ…」
頬をノスフェラトゥの爪が掠める、軽く出血する程度軽いもの…やはり強いのは強い。
我が身を顧みない暴力的な戦い方だ、これだから不死性のある奴らは…。
面倒な事にそれができるだけまだ余裕がある証明でもある、ノスフェラトゥからは焦りが見えない。
攻防が続く…変わらずノスフェラトゥはノーガードで俺はかなり斬りつけて血を流させた。
にも関わらずに様子は変わらずだ…これは予想以上に血を蓄えている可能性が高い。
……最初の時に首を狙ったら避けた、やはり首を落とすのが一番早いのだろう。
「ッ!!」
ノスフェラトゥの爪を受け損ねて飛ばされた。
追撃を交わして体制を立て直す。
俺は夜天羅へアイコンタクトを送る、頷く彼女を確認して俺は作戦を行動に移す。
ノスフェラトゥとの攻防の最中、再び右腕を切り落とすそして──夜天羅の鞭が顔面を捉えた、ノスフェラトゥの視界が一瞬闇に消える。
そして…首に向かい刀を振るった。
「ッ!!…おぉおぉぉ!!」
予想はしていた…この状況になれば首に守りを固めるだろうと。
俺はこの瞬間に刀の強化をいつもの倍に上げる
その代わり解魔の瞳の解放率を下げた、そのおかげか徐々に刃が首にめり込んでゆく、斬れる確信を得た俺は思い切り刀を振り抜く。
ゴァ!?
バーサクノスフェラトゥの首が宙を舞う、まだだ!俺は頭部をさらに切り刻んだ。
…これで再生するならもうとことん付き合ってやる。
ドサ…力なく崩れ落ちるバーサクノスフェラトゥの体、その体から血が蒸発していき干からびたしたいだけがそこに残る。




