第三十八録:あの子のために 四節「煙蛇」
休憩を終えた俺と夜天羅は次の獲物である"スチームスネイクの生息場所へやってきた、意外にも場所は近くレーヴァテインで1時間ほど。
「これはまたなんとも…」
「確か…スチームスネイクの煙だっけか」
木々の間からは蒸気が立ち上り霧散してゆく、レーヴァテインから見ると森全体が霧がかった様にみえる。
ステンノ神からスチームスネイクその中でも大蛇を指名されたのだが…
「この様子だと降りても危険だよなぁ」
「視界が確保できんからのう…」
「気配はどうだ?」
「うーむ…流石に特定は難しいのう、何かしらの気配はするのじゃが」
やはり…降りてみるしか手はないかもしれない
このまま悩んでいても仕方がない。
「…見えなくても俺の気配はわかる?」
「む!当たり前じゃ!お前様のものなら絶対に間違えはせんのじゃ」
「じゃあ…夜天羅は上から非殺傷の矢で支援を頼む、俺は降りて探ってみる終わったら音で合図を出すよ」
「うむ!気をつけての!」
夜天羅へそう伝えて俺はレーヴァテインから飛び降りて木々を飛び跳ねて地面へ。
「すごいな…」
視界のほぼ全てが白煙に覆われる、きちんと見える範囲は半径5メートルあるかどうか…
「…それにしても静かな森だな」
夜天羅は気配がすると言っていたが…俺には生命がいる様に感じられないが…この白煙だけが唯一の魔物であるスチームスネイクがいる事の証明になる。
ガンッ…鈍い音が背後から聞こえてくる、振り返ると矢とその横に蛇が横たわっていた。
「!?早いな!もう襲ってきたのか!」
さっそく夜天羅の支援に助けられる、しかし…まぁ普通に大きな蛇だ、ニシキヘビぐらいはありそうなサイズ。
普通の蛇との違いは背に生えている並んだ突起物、どうやらここから煙を吐き出している様だ
「囲まれたか?」
集中して気配を探ってみると微かに音が聞こえてきた、魔物が集まってきている。
俺は拳を構えて臨戦態勢に入った、まだ襲いかかってはこない…スチームスネイクも様子を伺っている。
あのニシキヘビのサイズぐらいのヤツなら噛まれても俺に牙は通らないが厄介なのがその能力、獲物に噛み付くと毒の代わりに二酸化炭素を吐き出す…流石の俺でも多量に吸えば気絶する。
この視界を覆う白煙とは違い透明なのも厄介さのレベルを上げている。
……段々と気配が濃くなってきた、すると一匹が襲いかかってきた。
さっきのやつと変わらないサイズのスチームスネイク、俺は即座に切り伏せる。
これが開戦の合図と言わんばかりに次々と襲いかかってきた。
だが…いくら来ようとも敵ではない、淡々と殴って払いのけていく。
頭を的確に殴る事でスチームスネイクを気絶させる…これでも坊さんの息子だ、無益な殺生はしたくはない。
「…とりあえずはこれで全部か?」
辺りには数えるのも億劫な数の蛇が地面で気絶していた、しかしだ…目的の大蛇がいない
これだけの騒ぎを起こせば現れてもおかしくないはずだ。
「いや…重役出勤か」
バキバキと音を立てて向かってくる姿はまだ見えないが木々を薙ぎ倒すサイズだ。
音が大きくなっていく…明確に意思を持ってこちらへ近づいてくる。
俺は音の方向に向かい走り出す、少し進んだ先に大きな影が見える。
ようやく…白煙から目的の大蛇がお出ましだ
俺に向かって大きく口を開けて丸呑みにしようとする。
「させねぇよ」
迫る大口に俺は全力で蹴り上げた見事に下顎にクリーンヒット、バキバキと骨が砕ける音と感触が足に伝わる。
スチームスネイクは仰け反り気を失っている様子で前に頭が落ちてきた、俺は追撃で頭部を殴りスチームスネイクを仕留めた。
「…案外あっさり終わったな」
コイツの等級は確かラビリンスドリルワームと同じで二等級…頼まれた魔物の中では一番低い等級だった。
俺は手を鳴らして夜天羅に合図を送った、すぐさまレーヴァテインが降りてくる。
「お前様ーって…えらくごつい蛇じゃのう」
「大蛇なだけはあるよな」
軽口を叩きながら夜天羅と一緒に蛇を縛り上げて紐をレーヴァテインに繋げる。
「ひとまずは帰るか…」
「じゃな…大荷物じゃしのう、ステンノどの曰く次が本命じゃからな」
俺と夜天羅はフラウリンに帰り魔物を渡したあとはすぐに次の…最後の魔物がいる場所へ向かう、急ぐ理由はステンノ神とメディのタイムリミットが1週間しかないことだ。
魔法の要である身体を用意できない事には意味がない…それに早く集めればそれだけ人体錬成に時間をかけられる。




