第三十八録:あの子のために 三節「狩り」
───俺と夜天羅は森を疾走する。
ここはレーヴァテインで約半日掛かった場所にある雷獣の森、ここには──
「シッ!!」
右拳を振るった、だが目的の対象には当たらずその後ろの木を殴る。
ヒットした部分の木が弾けて大小さまざまな木片が散らばる、抉れた木はメキメキと音を立てて崩れ落ちて地面を揺らす。
今回頼まれた魔物は三匹…ブリッツサラマンダー、スチームスネイク、バーサクノスフェラトゥ…今その一体目"ブリッツサラマンダー"その特殊個体エタニティを追いかけいる途中だ。
「すばしっこいな」
「お前様ー!今度はあっちにいきよったのじゃ」
「了解!」
再び走り出して獲物を追う。
魔力から無限に電気を生成しその電気から魔力を生み出せるという永久機関みたいなヤツだ
それを生かしてスピードがとんでも無く速い、俺たちに敵わないと判断するや否や逃げに徹している、もう1時間はこの鬼ごっこ状態。
おかげで何本の樹木を犠牲にしたかわからない
…このままではただの環境破壊者だ。
「……いたいた」
「…どうしようかのう」
俺たちは生い茂る草に紛れてブリッツサラマンダーの様子を伺う、周りを警戒してキョロキョロと見回している。
このまま出て行ってもさっきの二の舞で逃げられるのは目に見えていた…さてどうしたものか
そう考えていると夜天羅が俺の肩をつつく
「のう…奴の様子おかしくないかの?」
「んん?」
夜天羅に言われてよく観察する…変わりない様にみえ──いや確かに様子がおかしい。
微かだが息が上がっており呼吸の速度が速くなっている。
「疲れてる…のか?」
「もしや…そこまで持久力がないのかもしれんのう」
そうだとすればヤツへの対応は…このまま追いかけ回すのが正解だろう。
夜天羅と顔を見合わす、どうやら同じことを思っていたらしい…そうと決まれば。
俺は茂みからわざと音を立てて飛び出してブリッツサラマンダーへ襲いかかる。
当然、それに気がつき急いで雷速の速さで逃げ出した、一瞬でその場から居なくなり姿が見えなくなる。
「よし…」
「お前様!次はあっちじゃ!」
それから俺たちはブリッツサラマンダーを追いかけ回して森を駆けずり回る。
見つけては追いかける事2時間…疲労困憊なのかついにブリッツサラマンダーは自身のスピードを御しきれずに木に激突。
この好機を逃さずに俺は即座にナイフでトドメを刺した。
「ハァ…ハァ…やっと仕留めた」
「つ、疲れたのじゃ」
仕留めたブリッツサラマンダーを布で包んだ後に俺と夜天羅はその場で座り込み息を整える、ある意味では一番疲れた戦いだった、あれだ…持久走させられたみたいな感覚だな。
「うー…お前様ぁ」
夜天羅が座っている俺へ近づいてきて膝に頭を乗せる…要は膝枕。
ここ最近は依頼の事もあり二人きりになる機会が少なくなっていた、俺は甘えてくる夜天羅の頭を撫でる。
「…落ち着くのう」
休憩がてら二人きりの時間を過ごす、ドロシーとコイスケも今はいないフラウリンでルシュエーラちゃんの相手をしてくれている。
「うおっ」
急に夜天羅がガバッと起き上がる、少し驚いたものの満足したんだろう。
「さ!次はお前様の番じゃ」
夜天羅は自身の膝をポンポンと軽く叩くそれは早く頭をのせる様にと催促する。
「あ、ありがと」
俺は膝に頭を乗せる、膝枕はトリーナさんたちの家で依頼の話をした時以降だな…柔らかな感触が後頭部に伝わる、癖になりそうだ。
「………」
あまり…よろしくない視界だな、いや、まぁ絶景と言えばそうなんだが理性的によろしくないというか何というか…。
そんなことを考えていると夜天羅の顔が映り込む…なんでそんなニヤニヤしてるんだ。
彼女の左手が俺の頬にそっと添えられた瞬間
「んむ!?」
問答無用で急にキスをされた、夜天羅にキスをされるのは今に始まった事ではないが…当たってる!頭とかに胸!胸が当たってる!
しかも…最近できてなかったせいかめちゃくちゃ長い、もう全然離れない。
嫌ではないし嬉しいが胸の感触に全てを持っていかれている、そっちばかりに集中してしまう
「ふはぁ…」
やっとのこと…夜天羅は満足そうに唇を離した
夜天羅はニンマリと幸せそうに笑っている。
なんだか…その顔を見るだけでこっちも幸せな気分になる。




