第三十八録:あの子のために 一節「生きる道」
「…ここで終わり?」
アルケイドさんが疑問を口にする、酷く中途半端な所で日誌が終わっている。
「ん〜?違うわ〜これ…切り取られてない〜?」
トリーナさんは本ガバッと開く…確かに数ページが紛失していた。
「そこから先は私が本の代わりよ、日誌で出てきた"特定の相手が触れる事で発動する魔術"で私が触れて初めて内容が知れたのよ」
メデューサ神はそれほどリネットを…その周り全てを警戒していたんだろう、それだけ精神的に答えた。
「この後は…メデューサの勘は当たったわ、すぐにあの人格のリネットは襲撃をしてきた、その様子が文書ではなく映像として残っていたわ」
そう語るステンノ神は寝ているルシュエーラの頭を撫でる、慈愛の顔を向ける。
「…それでルシュエーラはあの地下へ?」
「そうね、メデューサが応戦して分霊が二人を逃がすために奮闘したわ…そうよね?」
「!?」
ステンノ神は廊下の方へ視線を向けた、俺たちは驚きそちらへ向く、そこには───
「リネットの分霊じゃ!?」
夜天羅は身構えて鞭を手に取りトリーナさんたちも臨戦体制を取ろうとする。
「ストップ、彼女は敵じゃないわ」
ステンノ神が制止した敵である分霊を庇う、その行動に夜天羅たちは混乱する。
俺は分霊に初めて会う…違和感、確かにリネットに似ている気がする。
ふと…棚の写真に目がいく、いやまさか!!
「この分霊はメデューサの分霊よ」
「!!?!?」
驚き過ぎて言葉が出ない、飾っている写真を見比べる…雰囲気は似ているが髪色や体格は似つかない、しかし唯一俺たちが写真では判別できない部分がある…目隠しの部分だ。
そして…それを知るのはステンノ神とルシュエーラのみだろう。
「メディはメデューサと融合した後は操られるフリをしていたのよ…いつか誰かを待つために。」
「……奴と魂が繋がっていたのは本当よ、だからステンノ様と協力は出来なかった、私にできたのはステンノ様の存在を隠し通す事」
「なるほどのう…で、あの時に解放されたのじゃな?」
「はい…皆さんには危害を加えてしまいすみません」
リネットの分霊…改めメデューサ神の分霊、メディは深々と頭を下げる。
「確かに…思えば不可解な点がいくつかあったのう、分霊を殺さぬ理由あれは嘘じゃな?」
「正解、分霊は死んだら本体へ力と魂が還る事はないわ分けた時点で完結しているのよ…リネットが魂を繋げたのは無理やりね。」
そうか…あの瞬間までステンノ神の存在は決してバレてはいけなかった…その重要な役目をメディさんは果たしてくれていたのか。
「わ〜!そういう事情なら謝罪なんてとんでもないですよ〜!!」
「ありがとうございます…」
「…その後はどうなったんじゃ?」
夜天羅は警戒を解いて話を本筋に戻す、トリーナさんたちも座り直す。
「あの時…リネットは万全の準備をしてきました、本体であるメデューサ様の応戦虚しく…そして操られる前に琉唯様はなんとか魔法で遠くに飛ばす事で脱出、ルシュエーラ様は間に合わず隠し私が石化させる事で吸収を免れました」
急な襲撃の中で取れた最善の行動…それから千年…待ち続けたんだろう、リネットを打破できる部外者を…そして現れた俺たちが。
「正直に言いますと…琉唯様の子孫の方がここにいるのは奇跡かと思います」
メディはトリーナさんを見つめる、その瞳には涙が溜まっている。
「奇跡…わしは運命じゃと思うのう」
「ふふ、そうねそうかも知れないわ」
笑うステンノ神、少し穏やかな雰囲気が流れる…色々と衝撃的な話しばかりだった。
もうリネットが居なくなり縛るものは何もない三人はもう自由だ。
「それで、これからなんだけど…また私の頼みを聞いてくれないかしら」
再び、ステンノ神からの依頼。
今度はどんな頼み事をされるのか…夜天羅、トリーナさんたちと顔を見合わせる。
「俺にできる事ならなんでも」
「わしもじゃ」
「はい〜、私も同じです〜」
「ルイと同じく」
「わ、わたしも!」
「私も賛成です」
全員が快諾、断る理由はない。
純粋にこの三人の力になりたいと心から思う。
「ありがとう、じゃあそうね…私からの依頼は────神である私を殺してほしいの」




