第三十七録:託されたもの 三節「ルシュエーラ」
静かな寝息を立てる棺桶の少女。
頭が混乱してしまう、正真正銘の生きている少女…リネットの暴走時にこの国の国民は全て石化されてリネットに吸収され養分にされた。
この少女は石化されたが吸収を免れて生き残った…奇跡、そう言っていいだろう。
「!!お前様!これは!?」
「あらあら!!」
夜天羅とトリーナさんも棺桶を覗き少女の存在に驚愕を隠せない…ここからの問題は山積みだ
まさかリネットとの戦闘から1日経たずに大事件が起きるとはな。
……俺は眠っている少女へ視線を移す、年齢は5〜6歳ほどだろうか?
恐らくいやほぼ確実にメデューサ神が関わっている、ここはメデューサ神の家だ関わってないはずがない。
すると…騒ぎ過ぎたせいでか少女の目が覚めてしまう、マズイ!今少女の目の前には見知らぬ奴しかいない、この少女からすれば恐怖以外の何者でもない。
少女は上半身を起こしてこちらを見た、まだ寝起きで頭がボーッとしているのか少女からのアクションはない。
俺たちに緊張感が走る、誰も身動きが取れない
だがドロシーは違う。
「ねぇ!私はドロシー!」
無邪気さゆえに空気を読む事はしない…しかしドロシーのそれはいい意味でだ。
「え〜?私はルシュエーラだよ〜」
……何というかおっとりした子だ、肝が座っていると言っていいのか?
ルシュエーラと名乗った少女は取り乱す様子もなく俺たちへの警戒がない。
「……嘘、でしょ」
俺たちは声の方向へ視線を向けた、そこに居たのは──ステンノ神。
驚愕している様子だが人目もはばからず目に涙を溜めて駆け出して少女を抱きしめる。
「ん〜???おねーさんだれ〜?なんで泣いてるの〜」
「…貴女に会えて嬉しいからよ」
「え〜?嬉しい〜?」
にへらと笑うルシュエーラ対して俺たちは状況についていけない…ただステンノ神がここまで取り乱すならメデューサ神関連で間違いない。
「…恥ずかしい所を見せちゃったわね…ごめんなさい」
ステンノ神はルシュエーラから離れて涙を拭って謝罪の言葉を口にした。
「いえ…あのこの子は?」
「この子は…妹、メデューサの娘よ」
「!!そう…なんですね」
頭の隅にその考えはあったがまさか本当にそうだとは思わなかった、ステンノ神からすればこの子は姪になるわけだ。
そりゃあ…感極まっても仕方がないよな…死んだ妹の───そこまで考えて気がつく。
この子のルシュエーラの今の状況を…気が付きたくなかった、考えたくなかった…。
この子の両親はもう………っ!
拳に力が入る、部外者の俺はリネットへの怒りが湧く、奴はこんな幼い少女から親を奪ったのか!!
「…詳しい事は上で説明するわ、行きましょう」
ステンノ神は優しく抱き抱えるルシュエーラは拒否する事なく身を任せていた。
…本能的にステンノ神が自分の身内だとわかっているんだろう、小さい子はそういう機微に鋭く敏感だ。
俺たちはリビングへ戻り残っていたアルケイドさん、クラシックさん、エバーリンデさんへ一通りの状況の説明をした。
あまりの事態に驚いていた、強引にではあるが状況を飲み込んで貰った。
全員が落ち着き畳に座る、ステンノ神の膝の上に座りポケーと俺たちを眺めるルシュエーラ。
先に俺たちはルシュエーラに対して自己紹介を済ませる。
「…さて最初から説明しましょうか、まずはこれね」
ステンノ神が取り出したのは名もない一冊の本だった、それをトリーナへ渡す。
「そのしおりを挟んだ部分を読んでみて」
トリーナさんはページをめくり言われた箇所を読む、読み終えると次へ…と読み回してゆく。
本はリネットの日誌だったそこには普段の生活やメデューサに子供がいた事が綴られている。
…そして不穏な一文を最後に日誌が途絶えている事。




