第三十七録:託されたもの 二節「眠り姫」
「あら〜どうしました〜?」
俺たちの背後から間延びした穏やか声が聞こえてきた振り返るとトリーナさんがいた……あっまずい!!
そう思った時には遅かった、階段を降りようと出した足はほんの少しの段差に躓き俺に向かって落ちてきた。
視界がスローモーションになる、ゆっくりと落ちてくるトリーナさんその表情は驚き焦っている。
受け止めるしかない。
俺は受け止めるために手を広げたが先に動いたのは夜天羅だった、俺の前に出てきてトリーナさんをキャッチした。
「おねしは!気をつけんか!!」
「ひ〜ごめんなさ〜い!」
トリーナさんの首根っこを掴み怒る夜天羅、不注意も悪いが…半分以上は別の理由で怒ってるなぁ…
「ま、まぁ夜天羅その辺───ガチャ。
何かが外れる金属音と共に重々しい扉の鍵が開いた、全員の言葉が止まり視線が扉に集まる。
「開いた…よな?」
「…開いたのじゃ」
急になぜ開いた?今は誰も扉に触れてなかったはず──違う…夜天羅がトリーナさんを受け止めた時に触れていた、原因はそれしかないだろうが謎は残る。
「…………」
俺と夜天羅はどうするかで迷い、トリーナさんは状況がよくわかっていないが俺たちの様子を見てただ事ではない事は察している。
静寂が一層俺たちへ緊張感を募らせていく。
そんな中ドロシーが声を上げる。
「みんな!開いたよ!」
こちらへ視線を向けるドロシー、声色が早く開けてと催促している。
「…俺が開ける。」
場所を考慮して腰に携えたナイフを取り出して逆手で構える、いつ襲われてもいいように警戒をして左手で扉に触れた。
冷たい無機質な感触が手に伝わる、試しに少し力を入れてみると見た目とは裏腹にスムーズに動いた…開く事を確認できた。
俺は後ろの夜天羅へアイコンタクトで合図を送る、彼女は一度頷きドロシーとトリーナさんを退避させる。
一度…深呼吸してから覚悟を決めて扉を開き中の様子を確認するそこは8畳ほどの広い一室、そこは意外にも明かりが付いていた。
煌々と照らされた広く白い部屋…そこには奥には一つだけものが置いてあった。
「……棺桶?」
それを連想させる物がポツンと置かれていた、一先ずこの部屋に危険がない事が確認できた。
「みんな…大丈夫だ」
背後の夜天羅たちへそう告げた、俺は警戒を半分解きナイフを鞘へ戻す。
夜天羅たちも部屋に入ってきたトリーナさんは興味津々で部屋を見渡している。
「ぬわ!?ドロシー!?」
ドロシーは夜天羅の腕から抜け出すと棺桶へ向かい一直線に向かっていく、本当に珍しい…ドロシーがこんな行動を取るなんて…
流石に俺がドロシーを抱えて止めた。
「わー!?ヨリツグ!ヨリツグ!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれドロシー」
…ドロシーに先に棺桶の中を確認させるわけにはいかない最悪遺体が入っている可能性がある
それはあまりにも刺激が強すぎる。
「ふん!!」
「うお!?」
ドロシーが俺の手から脱出して駆け出す、素早い動きで棺桶に到達、中を覗き込むドロシー。
「………違っちゃった」
中を見たドロシーは落胆した表情で声色も沈んでいた……違う?ドロシーの言葉が気になる。
とぼとぼとこちらへ戻ってきたドロシーを夜天羅は屈み優しく話しかける。
「ドロシーよ…どうしたのじゃ?」
「ドロシー…ドロシー、勘違いしちゃった」
「ふむ…」
「エミリーと似た感じがしたから…」
「そうかそうか…それは気になるのう、わしらもドロシーの力になりたいから次は相談してほしいのじゃ」
「…うん」
話を聞いた夜天羅はドロシーを抱き抱えて優しく寄り添う、遺体ではなさそうなのはよかった、しかしエミリーと似た…か。
俺は棺桶へ近づきその中を確認する。
部屋と同じ白い棺桶…薔薇の装飾が施されたそれは一般的なサイズよりやや小さい。
子供用と言われれば納得できるサイズをしている…棺桶の前まで到着その中を見て驚愕した。
「!?」
そこに居たのは────小さな女の子だった。




