第三十七録:託されたもの 一節「地下」
「変わった様式の家ですね…」
アルケイドさんがキョロキョロとリビングを見渡す、俺たちは家に靴を脱いで入る…中はまさかの日本風の家だった外観は街に合わせて洋風、ステンノ神の妹メデューサ神の夫はこの世界に召喚された日本人だから中はその人の希望だろう。
「こ、これなに?テ、テーブル?」
エバーリンデさんがこたつが気になり
広い居間にはわざわざ造らせたのか畳が敷かれており座椅子と掘り炬燵があった…歴史の資料館でしか見たことのない様な昔の物だ。
「それは日本のコタツってヤツ、まぁローテーブルみたいなものよ…ちなみに冬にそれに入ると出れないわよ」
「あ、あ、危ないんですか?」
「そうね…コタツから出たら最後よ」
「…間違ってないけどそれただ頼まれ事されるやつじゃないですか」
「????」
間違ってないが…言い方が不穏すぎる、エバーリンデさんは困惑してキョトンとしていた。
夜天羅が炬燵の正しい使い方を教える。
「な、なんだ、ただの暖房器具なのね…」
ちょっと残念な様子のエバーリンデさん、この国の人類史を調べにきたら別の世界の異物だからな…やるせない気持ちもあるだろうな。
「侮ったらダメよー?本当に出れなくなるから」
確かに…心の中で同意する。
「…変わった家ですがおかしい箇所は見受けられませんね。」
他の部屋を見ていたアルケイドさんが戻ってきた、確かにそんなおかしい箇所は見つからない。
「………」
チラリとステンノ神に視線を向ける、1人佇み何かを考えている様子、夜天羅も気にしている…二人して顔を見合わせるがどうにもできずにもどかしい。
んにゃん?にゃんにゃー
「どこいくのー!!」
コイスケが走り出して廊下へ向かっていく、それを追いかける無邪気なドロシー。
「な、なんだか…き、綺麗すぎてお、落ち着かない…」
エバーリンデさんは落ち着かない様子で部屋を見回っている、他の遺跡と違い石化で当時のまま保存されていた状態で何もかもが本当に当時のままだ…忌避感を抱くのも無理はない。
「これが…メデューサ様ですか」
棚に立て掛けられた写真、そこに写っていたのは精悍な顔つきで体格の言い日本人男性と白い長髪の目隠しをした女性の仲睦まじい夫婦が赤ん坊を抱っこしているものだった。
「……いい写真じゃない」
ステンノ神は写真を手に取り静かに写真を撫でるその表情は哀愁漂う表情で柔らかく笑う、亡き妹とその夫の写真…思う所はあるだろう。
にゃん!にゃんにゃ!!
「ん?コイスケ戻ってきたのか」
いつの間にか俺の足元にいたコイスケは鳴き声をあげてこちらを見つめる。
「ドロシーはどうしたんじゃ?」
にゃんにゃ!!
再び廊下まで歩くとそこで止まるコイスケ…どうやら着いてきてほしい様子。
ステンノ神とトリーナさんたちがいるリビングから二人で離れてコイスケの後をついてゆく。
廊下を進み曲がると庭の見える縁側が現れた、植えられた立派な木にはブランコがあり風で寂しく揺られている。
その縁側の突き当たりを右に曲がった場所には階段があったが上に行くのではなく下に行くもの、つまり───
「地下があるのか。」
にゃんにゃ!!にゃん!
コイスケは階段を降りていく、俺と夜天羅もそれに続いて降りた…そこには扉があるがこんな平穏な家に似つかわしくない重厚な鉄の扉、それは何物も拒む様に佇んでいる。
「あ!!ヤテンラ!ヨリツグ!!ふたりともきた!!」
扉の前にはドロシーがおり扉をペタペタと触っていたが俺たちに気がつき笑顔で迎える。
ドロシーはそんな集中してなにをしていたんだ?
「ねぇ!!ヤテンラ!ヨリツグ!この扉こわせないの!?」
「……何かあるんじゃな?」
…ドロシーは無邪気でたまに無茶なことも言うがこれは違う、真剣に俺たちにお願いをしている事がわかる。
「ヤテンラ!ヤテンラ!違うよ!"ある"じゃなくて"いる"だよ!」
ドロシーのその一言に驚き顔を見合わせる、わざわざ訂正すると言うことは───
「ドロシー…だれかいるのか?」




