第三十六録:望郷 三節「償い」
クイーンズガーデン内部…石化が解除された城は当時の姿のまま全てが残っていた。
街の方でさえ俺たちの戦闘の跡以外は今すぐそこへ住めるほどの状態。
「…やっぱり城はどこもすごいな」
フィリッツランド城もそうだったがやはりその国の権威の象徴…まぁクイーンズガーデンは権威どころか防衛装置的な側面もあったらしい。
「ほら、こっちよ。こっちが来客用の部屋になるからここで休んじゃいなさい。」
ステンノ神の案内で部屋に通された、中は豪華な内装の部屋がありベッドも今すぐにでも使える状態だった。
「す、すごい!当時のシ、システムそのままだ!術式もちゃんと作動する!!」
隣の部屋、トリーナさんたちの方から声が聞こえてくる。
「……システム?」
「なんのだろうな?」
二人して顔を見合わせて疑問を口にした、するとステンノ神が軽く笑いながら話す。
「アハハ!あれよこの国のライフラインの事ね、古いシステムだけど劣化がないから余裕で動くわよ」
一千年前の生きたシステムか、なるほど…トリーナさんたちからすれば価値のあるもの。
よそ者の俺たちからすればちんぷんかんぷんだがインフラが生きているということは───
「風呂にも入れるのかの!?」
「えぇ入れるわよ、好きに使ってちょうだい」
「助かるのじゃー!!お前様!ちょっと先に入らせてもらうのじゃ!」
「あぁ、わかった」
バタバタと部屋に入っていき風呂があるであろう場所へ直行する夜天羅。
「じゃあまた、時間になったら城門に集合ね」
「了解だ」
そうして各々が休息をとり始める、俺は夜天羅が風呂から上がるまでソファに腰掛けた。
────私は一人陽が差し込む廊下を歩く、美しい光沢を私を反射させ姿を映す。
床を鳴らしながら歩みを進めた、目的の場所…それはリネットの自室。
正直な所…それがある場所へ行く事にあまり意味がない、あの子が起こした事それが全て。
でも…私は知らねばならない、リネット・ユーネリカという人のその本当の内側…もちろん理解なんてできない…それでも最後にあの子を知ってあげないといけない。
それが導きの神として友人として私にできる残された償いなのだから…
一室の前で足を止めた廊下に響く足音の残響音が無くなり静寂が訪れる。
私はそっと扉に触れた…開けるために扉を押す
ギィ…と軋み上げた扉はゆっくりと開き、薄暗い部屋が視界に入ってきた。
……あの頃と何一つかわらない、本に埋もれた部屋はこの国の女王らしからぬものだ。
あの子はあの時代…いや数千年に一度の魔法の才を持って生まれた。
恵まれた魔力量、理解する知識、柔軟に動く身体…あの子の持つ才能全てが魔法使いに特化していたが…何より一番の才能は魔法が好きな事、それが何よりも変え難い才能だった。
魔法を全力で楽しみ無限に知識を吸収し膨大な魔力で実践、成長しないはずがない。
唯一のデメリットは心だった、あの子はメンタルが弱かった…でもあの時の私はそれをあまり気にしていなかった。
才能に溢れたあの子なら成長と共に強くなるどうという私の傲慢な期待。
そして人の速すぎる生の時間をあの時の私は理解してなかった。
人を導く神のくせにたった一人の人間すら正しく導くことができなった私の罪。
部屋に入りリネットの机へ向かった、机の上は乱雑に散らかり本が高く積まれている。
私は机の端の方へ追いやられていた一冊の本を手に取るそれは著者も題名もない本、リネットの日誌だ…埃を払い───今…自分が取った行動に違和感を覚えた。
石化が解除されたはずの本の埃を払う?おかしい、石化をされていたのなら埃など積もらないし石化後に積もったとしても解除時にとりはらわれているはずだ。
「…あの子は長い間ここを離れていた?」
結論は単純だではなぜ離れていたのか?不老不死の魔法を開発する為にどこか場所を移した?
「……探すのは後回しね、先にこれを見ましょう」




