第三十五録:聖華の女王 四節「ハロー、プリマ」
圧縮した超過高密度の魔力を頭上から落とされたリネットの元いた場所は陥没、石化の解かれた石畳は無惨にも粉々に粉砕されその下にある石化した大地には穴が空いており土煙があたりに飛散する。
「そのままぺしゃんこになれば良いものを」
…そんな脅威的な威力にも関わらず、蔓が穴から現れさらに蔓に包まれた物体が現れる。
リネットだ、奴は刹那の思考で防いだ…。
「アハハハ!ざぁんねん!!これが貴女たちの奥の──
リネットの視界に映るのは弓を構えたわしの姿、それに絶句して固まる。
わしは全力で弦を引き絞り矢を放った、状況を理解してリネットの顔は青ざめる。
理由は単純、わしの放った矢は特別製…あのステンノどのが拵えた"遮断の鏃"当たれば終わりの必殺の矢…リネットはステンノどの魔力を感じ取っている、だから焦っている。
奴の選択肢は避けるしかない。
「う、うぉあぁぁぁあ!!!」
わしの狙いは頭部、リネットは顔の前で両手をクロスさせての防御に加えて何重にも魔法防御を重ねる、少しでも減速させようと必死になっていた…がそれは無駄に終わる。
"遮断の鏃"はまるで紙でも射抜く様にして狙い目掛けて直進、リネットは壊れたそばから魔法防御を展開してゆくがやはり無駄に等しい。
「あぁぁあ!!クソがぁぁあ!!」
悪態をついたリネットは恐怖と怒りで顔を歪ませた、そして覚悟を決めた様子で左腕をかざす
「ほう!そうきたか!!」
奴はリネットは利き手ではない身体強化を集中した左腕を犠牲にして矢を逸らした、首の皮一枚繋いだ…と言った様子。左腕は完全に破壊され辺りに肉片が転がった。
さて…"遮断の鏃"の効果はいかに?
「がぁぁぁあ!?回復が!魔法が乱れる!?」
効果覿面、神が力を込めた矢…その本来の効果は魔法の遮断だがステンノどのは奥の手の為に効果はこの程度にとどめた。
わしらの作戦も大詰め、トリーナたちで隙を生み、矢でリネットを混乱に陥れる。
奴は今、さまざまな可能性を考えているだろう…まだ仲間はいるのか?、なぜステンノの力を持っているのか?、ここにいるのか?…
優位性を剥ぎ取られたリネット。
わしはその思考の隙を与えない、すぐさま鞭で追撃に走る。
「ッ!!この!調子に乗るなよ!!」
強がるが余裕がない奴はこの鞭の威力を知っている、魔法が従前に扱えないリネットは避けるしかない。右から迫る鞭の軌道を読み回避行動を取る…だがわしはリネットの動き合わせて軌道を変える。
「ガァ!?」
鞭は奴の右顔面に直撃、右目を潰した。
ダメージを受け、魔法を扱えない魔法使い…そんなリネットがとった行動は──
「っ!なるほどのう!!」
魔法が使えぬ代わりは魔力の放出、単純な魔力操作で魔力の塊に指向性を持たせて放つ。
油断ならん奴じゃ"遮断の鏃"は魔法を阻害するだけで魔力操作には効果がない。
効果を理解したリネットの反撃、無尽蔵の魔力による魔力弾の雨霰。
「ふむ…悪あがきじゃな」
確かに奴は今できる最善の行動で戦っている、だが魔力弾の精度が低い。
まぁ…急拵えの付け焼き刃にしては上出来な部類ではあるが、それだけじゃわしには及ばない、リネットとの攻防が続く奴は時間を稼ぐことにした様子、おおかたは"遮断の鏃"の効果切れを狙っている。
「足元がお留守じゃ」
「あぁ!?」
右足首に鞭を絡ませて拘束、すぐにリネットを振り回し遠心力を加えて地面へ叩きつけた。
「舐めるなぁ!!」
地面との衝突の寸前に魔力弾を挟んで衝撃を逃す、しかしそれは損傷の半減にしか繋がらない奴は少なからずとも傷を負っている。
その証拠にリネットは口から血を吐いていた。
「カハッ…グゾガァ"………アハ、アハハハ!!」
わしを睨むリネットの表情が怒りから笑顔になり狂った様に笑い出す。
「こんなっ!!魔法を使えないと思ったのか!?つけ上がるなよ!!」
怒りを発露させ地面に手をやるリネット、地面に魔力を流すと魔法陣が浮かび上がる。
「設置型の術かのう」
「あぁ!!そうよ!これであの矢の効果は関係ないわ!一回きりの大魔法よ!さぁ死ね!!!」
リネットの背後に純白の百合が出現、光を収束している、ラッパ状で横向きの花から極光が放たれようとしている。
「わしも…旦那様みたいにするかのう」
「何をしようにももう遅いわよ!!」
そして極光が放たれた、わしは防御を固めて光に耐える…この世界に来て忘れていた光に焼かれる感覚、痛みに耐えるが衝撃に押され地面を抉りながら後退する。
「ハァ!ハァ!」
魔法が止みわしはその場に膝をつく…耐えはしたがかなりいい物を食らってしまった。
リネットの方へ視線を向ける…足元の魔法陣は消えてゆくのが確認できる。
「ハハハハハハ!!言い様ねぇ!そのダメージで私の魔力弾を防ぎ─────にゃあ
狂乱の声に混じる、澄んだ鳴き声が静かに確かに響く。




