第三十五録:聖華の女王 三節「油断大敵」
「あの外道!!」
想定外に次ぐ想定外、リネットの目覚めそれにクイーンズガーデンを使った完全融合…生き汚いとはこの事だろう、見てくれは神聖そのもの
中身は外道…アレは人の命を吸い取り続ける事で生存ができる神として不完全な存在。
禁術の代償しかしリネットはそうは思っていない…哀れな、哀れな壊れた人間の末路。
私の奥の手を確実にリネットへ当てるにはまだ足りない、奴が油断してくれなければ気付かれてしまう、奥の手が躱されるとこちらの勝ちの目がなくなる…その前に彼女をどうにかしないといけない。
チラリと隣に視線を向けた、そこには鬼がいた
静かに怒りを燃やしリネットを強く睨む文字通りの鬼がいる。
今すぐにでも飛び出して行きたくて仕方がない
だが理性でそれを押さえ込んでくれている。
彼女は拳を強く握る行き場のない激情…それを必死に抑えている。
私は思考を巡らす…こうなれば魔法を解除してヤテンラにリネットの相手をしてもらい──
頭の中で作戦を組み立てる。
「みんな、聞いてちょうだい今から───」
───「ふぅ…」
ステンノ殿との話を思い出す、わしの役目はリネットを引きつける事…それを喜んで引き受けた、こやつを許せない旦那様にあんなことした一矢報わないと気が済まない。
リネットとの睨み合いが続く、わしに対して警戒をしているそれは旦那様とは違い弓を装備しているからだろう、距離を取ればわしを見失い何処から狙われるかわからない。
「貴女…魔族かと思ったら鬼じゃない、なんでいるのよ」
「………」
リネットから問いが投げかけられるがわしはそれを無視、攻撃の隙を伺う。
「ハッ!なによあの男みたいに何も答えないわけ?あれ貴女の仲間でしょ?それとも…それより深い仲だったり?」
揶揄う様に不快な言葉を並べ嫌な笑みを浮かべまるリネット、神聖なの見た目だけだ。
奴のセリフに怒りが湧いてくる…だが今は感情に流されてやらない、動揺を誘うなら最初にしおくべきだった。
わしはリネットの問いかけに対して鞭で答える
が…不意打ちがよほど聞いたのか常に防御魔法を展開してあの防御より高威力の攻撃でなければ突破するのは無理だろう。
…その懐に入り込むなら別だが。
「効かないわよ、さっきの不意打ちな時にでも仕留めておくべきだったわね…ま!それも無理だけど」
わかってはいる、だが攻撃の手は止めない。
リネットはわしを下に見ている…今こうして攻撃をしているのを嘲笑っているだろう。
それでよい、そのままで何も知らぬまま慢心していてほしい。
「じゃあ…そろそろ私の番かしら?」
「っ!!」
リネットは手を前にかざし魔法陣を出現させたその瞬間にはわしに光弾を発射させる。
驚きはしたが回避…魔法の発動があまりにも早い、それに…手癖も悪いときた。
光弾を回避したその直後わしの足元にも魔法陣を展開、棘の蔓が出現するもわかりやすい。
本当の狙いはわしとリネットを囲む様に展開された薔薇の檻。
……クイーンズガーデン文字通り女王の庭園、ここはリネットの庭。
攻防が始まる…といってもリネットは片手間で完全に遊んでいる、わしを脅威とも認識していない檻で囲んで余裕を出している。
悔しいが…今の手持ち装備では決定打は無理。
まぁ…そもそも決定打を決めるのはわしの役目じゃない。
それにしても…ステンノどのの予想通りに事が進んでおる、この後は頃合いを見てトリーナたちの出番じゃ。
無尽蔵の魔力に任せた魔法がわしへ襲いかかる
一つ一つの威力は大したことはないがこの檻の中を埋め尽くす勢いで魔法が展開されてゆく。
わしの武器が鞭で良かった、広範囲に振るう事で今はまだ対応ができている。
奴はリネットは絶対に本気を出さない、このまま適当に魔法を垂れ流しておけば勝てるから本気を出す必要がない。
「さて…そろそろかのう」
集中を高め一際大きく力強く鞭を振るう。
鞭が空気を裂き乾いた破裂音を響かせる、その衝撃波でリネットの魔法を一掃、視界がクリアになる。
「へぇ!!今のは少し驚いたわ…でも───」
そう言いかけるが急に辺りを警戒するリネット無理もない、見知らぬ魔力を検知すれば警戒せざる得ない。
「衝撃圧縮魔法"エアバースト"!!」
リネットの頭上から魔法が襲いかかる、薔薇の檻を破壊するほどの超高威力。
トリーナたちが扱う魔法は溜めが長ければ長いほど魔力を圧縮、威力が増す。
あの森で使用した時が5割の威力だとすると今はその三倍の威力。
リネットの顔が引き攣りすぐさま魔法を展開、流石の速さ…だが一足遅い。




