第三十五録:聖華の女王 一節「上っ面」
「ッ!!」
足を止められた…超速の魔法が俺の頬を掠める頬からは血が滴り地面に落ちた。
なるほど…そういう魔法か、リネットが発動したもの、それは───
「自身の強化か…」
光の中から現れたリネット、その様子に内心驚きを隠せない。
切り落としたはずの右腕、半壊した左腕、裂いたはずの左胸部から肩まで…その全てが回復された。
装いも変わった華やかな衣装…それに人により近い形になる、蛇の様だった半身には2本の脚があり長い前腕や尖った長い耳は無くなりサイズも成人女性そのもの、唯一の異形はそのエメラルドグリーンの瞳と鱗に覆われた長い尻尾…いや、蛇だ尻尾の先端は蛇の顔になっていた。
恐らくだが…リネットは力を使い完全な融合を果たしたのではないか?
そう思えるほど歪さが排除されていた、半人半神でいいのか?それとも神なんだろうか?
どちらにしても───
「振り出しか…」
とは言ったものの…俺にはダメージが残リネットは完全回復プラス強化か、目に見えて有利なのはあちらだ。
あの無茶な動きはコレがあったからか、だけどまぁ…頼まれ事を放り投げる気はない。
リネットの所業はここで終わらせなければならない、奴はその神聖な見た目に反して心は外道そのものだ。
「さぁ…異邦の男よ第二ラウンドの開始、あのサムライの様に殺してあげるわ」
あの侍か…ここへ迷い込んだ当時の日本人はメデューサの恋人だった、それを邪魔になるからと殺しておいてよくもまぁ…。
刀をリネットへ向ける…やはり狙うは首、ここまでの攻防で奴に生半可ダメージは通らない、すぐに治してしまうそれが強化されたなら尚更。
先に仕掛けてきたのはリネット、熱線に加えて魔力で生み出した棘のある蔓を鞭の様にして同時に攻撃を加える、その物量に俺は防蟻をせざる得ない。
「ッ!?」
小さな何かに触れたと思ったら衝撃と破裂音が襲ってきた、周囲に目をやると小さな花が漂よっている、発生源を探ると棘の鞭から放たれていた、触れると爆発する花か…
防戦一方、さっきまでと真逆の立場に立たされる、リネットは強化されているがまだ対応圏内
威力も同じだ違いはその豊富な魔法。
…当たり前の様に別の魔法を併用している、これがリネットの本来の実力なんだろう、俺は攻撃をいなしながら隙を探る。
「アハハハ!!さっきの勢いはどうしたの!?」
有頂天、自分が優位ゆえに気が大きくなって俺を煽る…だがそんな煽りに乗るほど切羽詰まる精神状態ではない。
…戦いでは冷静さを失ったら負けだ、冷静に確実にリネットの懐に入り刀な間合いに持っていく、そうすれば勝ちの目が見えてくる。
証拠にリネットはやはり遠距離での攻撃だ、つまり俺を近づけたくない。
「……一度、地獄を見るか」
俺は逃げる足を止めて立ち止まった、その様子をリネットは攻撃の手を止めて警戒、いつでも魔法を放てる様に杖を構えていた。
一度、大きく深呼吸をしてから今出せる全力の速度で走る、一直線に。
「!!なにを!」
リネットは予想外すぎる行動に一瞬だけ動きが遅れるがすぐに攻撃を再開。
数多の魔法が俺に迫り来る…怖くないと言えば嘘になる、痛いのも勘弁だがリネットに近づくには強引に突破するしかない。
腹を括り覚悟を決めて地獄の釜に突っ込む、必要最低限の攻撃を凌ぎつつ速度を緩めず前進。
花の爆弾が筋肉を殴り、棘の鞭が皮膚を裂き、熱線が肌を焼く。
「っ!おぉぉぉ!!」
痛みを誤魔化す為雄叫びを上げる。
「この!頭おかしいんじゃないの!?」
リネットは焦り冷や汗を流している、コイツは回復する術がない状態でこんな事をする俺を理解できない。
相手との距離があと数メートルにまで縮まる、余裕がなくなったリネットは一際大きな魔法陣を展開、蓮華の花を思わせる花が出現の新手の魔法に俺は警戒する。
「ッ!死ね!!!」




