第三十四録:継戦 三節「二人」
首を捉えた刃は魔法防御に阻まれてあと一歩の所で届かない、今の攻撃が余程応えたのかリネットの顔は恐怖で歪む。
……なぜ、コイツはこうも弱腰なんだ?英雄と呼ばれたにしてはあまりにも臆病で気迫がない英雄と呼ばれた面影は影も形もない。
今も俺にカウンターを加えるならこの上ないチャンス…だと言うのにもう背を向けて逃走。
いい加減…追いかけっこにはうんざりしてきた
どうにかしてリネットを捕まえて戦闘に持ち込みたい、外に放り投げたのは失敗だったな。
まぁ過去を嘆いても仕方がない遅かれ早かれ外に出ていたと考えよう。
俺は見失わない様に距離を保ちつつリネットを追い立てる、さっきから隙を見て攻撃はしているがいかんせん踏み込みで反応される。
……そろそろ頃合いか。
それに…リネットの向かう先がなんとなくわかった気がする、予想が正しければリネットの目的の場所にもうすぐ到着する。
一体全体…何を企んでいるのか、恐らくは俺を仕留められる何かがあるだろうな。
逃げはしているものの奴は上には逃げようとしない、本気で逃げるつもりならこの石の箱庭からの脱出を考えるはずだ。
なのにリネットはそれをしない、この国に執着があるのかもしれないが…自身の命を一番に考える奴が命を賭けるに値するのか?
そう考えている間に住宅街を抜けて大通りに出てきた…やはりかリネットの目的血それは──
(私の城だ!!)
この国の城が見えてきた、今のスピードならあと数分で到着するだろうな。
その前に、今ゴールを目の前にして気が緩んでいるであろうリネットを仕留める。
そのために面倒な事までしたんだ…一発勝負だ
俺は走る速度を上げてトップスピードになる。
「ッ!!?は、はや──」
リネットの真横に躍り出た俺は首目掛けて刀を振るう…もちろんリネットは杖に魔法防御を展開をする、だが見立てが甘い。
俺の斬撃はリネットの防御その全てを容易く切り伏せる、油断を誘うためにわざわざ大袈裟な動作をして切り掛かってきた。
確かに全身の力の連動による増幅はあったがリネットの防御を突破するぐらいなら腰の捻りによる力の増幅と連動そして切先の速度と正しい角度、これができれば問題ない。
街の石並み硬さなら全身の連動が必要だが今のリネットにそんな防御力はない。
俺は目の前の相手の顔を見る、その顔には恐怖がありありと浮かんでいる、あまりの事態に理解が追いついていない…否、恐怖の中にこの状況をどうにかしようという意思が見える、まだ瞳が死んじゃいない…諦めていない。
しかし…非常にも刃がリネットの首に沈み始めてくる、俺の手に肉を断つ感触が伝わり始める
(痛い!痛い!!死ッ──いや!まだよ!!)
「ッ!?やってくれるぜ!!」
思わず声が出てしまう、まさか…まさかこんな対応をされるとは夢にも思わなかった。
完全に盲点、奴はリネットは────自らの首を石化させて俺の刀を止めた。
それも俺の刀に反射した自身の首を見てだ。
勢いを殺されてしまった、そんな予想外の対応をされた俺は悪あがきで刀を引き斬った。
だが…硬度がこの街の石並みなのか火花を散らすだけで斬るに至れなかった…恐らくは石化の魔眼、その最大出力で石化をしている。
「がっ!?」
リネットはその蛇の様な下半身をしならせて攻撃、俺は間一髪の所で左腕を挟んでガード
重鞭の如き威力に吹っ飛ばされる。
数十メートルは飛ばされ石の木にぶつかり止まった、左腕も痛むがぶつかった背中が特に痛む
「クッソ…痛て──!!」
文句を言う口を閉じる、俺は目の前の光景に目を疑う俺を囲む様にして魔法陣が展開され無数とも思える数の石が宙に浮かぶ。
まずい!そう思った時にはもう轟音が鳴り響く




