第三十四録:継戦 二節「奔走」
刀を振り積極的に攻める、それに喰らい付いてくるリネット…中々、決着をつける事ができない、リネットの魔法での強化が俺との膂力の差を埋めるがまだ少しだけ俺の方が上だ。
近距離戦闘に持ち込んでいる今は俺が有利、対するリネットは離れたくて仕方がない。
魔法使いらしく正しく中距離、遠距離から魔法を使いたいが張り付いた俺を引き剥がせない、その怒りと焦りが顔に出ている。
防御魔法と杖を巧みに駆使して俺の刀を捌いていく…軽いダメージは無視して致命傷だけ的確に防御される。
……これは、防御の上から叩き斬るしかない、俺は刀を握り込み息を大きく吐く。
瞬時にリネットの懐に入り左足で大地を大きく踏み込む、ダンッ!と足音を立てる。
踏み込んだ足から腰へさらに上半身へ力を増幅させ伝播させていく。
俺の構えを見たリネットは防御体制を取る。
あと先を考えない、俺は右上段から渾身の力で刀を振り下ろした…が、それはリネットへ当たることはなかった。
既の所で避けられてしまう、勘だろうか異様さを感じ取ったリネットは刀が直撃する寸前で回避に回られる、背後の石の家屋に深い斬撃が刻まれた。
隙の大きい攻撃に俺は反撃に備えたがその気配がない、リネットに視線をやると唖然としていた。
その様子には予想通りだ…構わずに俺は攻撃を仕掛ける、すぐに意識をこちらに戻したリネットは先ほどよりさらに逃げの一手、本気で俺から距離を取ろうと必死だ。
(この男!!…危険だわ!私が力を始めて使った時、一番強力な石化を施したこの街の石を斬った!!?あんなものを喰らうわけにはいかない!!常軌を逸している!!!)
リネットは今、俺の刀を最大限の警戒をしているだろう…それでいい。
お前はそのまま勘違いしたままでいてくれ。
入り組んだ街を駆け回る、今はリネットが優位になっていたこの街はリネットの庭。
迷いなく道を選択して逃げる、俺は見失わない様に家屋の屋根からリネットを補足する。
そして……ダンッ!!再び足を踏み込む、リネットが振り返り目が合う。
(ッ!アレが来る!!)
身構えるリネットに向けて刀を振り下ろすも避けられ家屋を斬ってしまう、そして反撃──ではなく僅かな隙さえも逃げに徹する。
「…必死だな」
再度屋根に登り俺は追跡に集中する…逃げるリネットに対して疑問がある奴は一体どこに向かっているんだ?
逃げて距離を空けるなら今の状態はリネットの理想のはずだ…攻撃を仕掛けてこないのは不自然、戦う意思がない?それにしては中途半端だ
なにかを企んでいる気がする。
「……逃げてるのう?」
変わらずわしらは旦那様とリネットの戦闘の様子を伺っている、現状は芳しくはない。
リネットは逃げ、旦那様が追いかける…イタチごっこが続いていた。
「うーん…アイツあの場所に向かっているわね…先回りしましょうか。」
「あの場所…ですか?」
アルケイドがおうむ返しに問う。
その問いに対してステンノはとある方向へ指を差し示した。
───(早く!早くあの場所へ!!)
私は全速力でそこへ向かう、そこにさえ行けばあんな男など──ダンッ!!
地を強く踏み締める音が響き、閃光の様な刃が私に襲いかかってくる。
幸い…音がそれを知らせてくれ私は避ける事ができていた。
避けた先の石には深い斬撃が刻まれている、背筋に冷たいものが走る。
男の方へ視線を向ける…あの目、あの黄色の不気味な月模様の瞳が私を見据えている。
──恐ろしい、石化が効かない、魔法が当たらない、投擲が切り伏せられる。
だから早く、一刻も早くあの男を排除するためにあの場所でアレを起動させなければ。
ダンッ!!またあの音が響く、反射的に背後へ視線を向けるも誰もいない。
瞬間、視界の端に男が低く刀を構えて──ダンッ!音と共に下方から迫り上がってくる、その刃は的確に私の首を捉えていた。
もはや回避は不可能…死、強くそれを思わせる…死んでたまるものか!!
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!」
私は魔法防御を三重に展開…だがまるでバターを切る様に防御が裂かれてゆく。
斬られた瞬間にまた新たに魔法防御を展開、止まらない、私は焦りを感じ始めたが──
「…チッ」
男から舌打ちが聞こえてくる、私を殺すはずの必殺が首に展開した最後の魔法防御に阻まれていた、止めてなお力が込められているせいで火花を散らす。
「ッ…ハァッ!…ハァッ!」
神経がすり減る。
一瞬の隙が、一度のミスが、命を刈り取りにくる…死神、目の前に人の形をした死神が立っている。恐ろしい、はやく排除しなければいけない。




