第四録:平穏な村 一節「仕立屋」
リリーは夜天羅の事を魔族と言った…この世界に似た種族がいると推測しとりあえずは魔族で通すことに、鬼族と言って余計な混乱招く必要もない。
「そ、そうなんですね…あぁ申し遅れました私はリグレと申します」
リリーの父親リグレがこちらに名乗り、続いて兵士二人も名乗りをあげてくれた。
「私は村の治安維持部隊のファスと申します」
二十代後半だろうか?槍を装備した恐らくリーダーの兵士がファス。
「同じくメルサです」
青年、自分より少し上の剣を装備した若い兵がメルサ。
「俺は縁継です」
「わしは夜天羅じゃ」
全員が短い自己紹介を終える。
「では立ち話もなんですからお礼も兼ねて村へご案内致します。」
「それに今ここは危険ですからね」
願ってもない提案をしてくれるリグレさん。
あぁでもその前に放置したアレを伝えないと口を開こうとした時リリーが声を上げる。
「パパ!このお兄ちゃんすごいんだよ!おっきい魔物一人でやっつけちゃったんだ!」
リリーの言葉に兵士二人は顔を見合わせる
「ヨリツグさん…その魔物はこの様な姿でしたか?」
ファスはウエストバックから一枚の紙を取り出してこちらに見せる、それに描かれていたのは先ほど倒したばかりの魔物だった。
「そうです、この道で襲って来たのでやむなく…あとリリーちゃんを優先したので死体も放置してしまって」
俺が経緯の説明をするや否やメルサは走り出しファスも慌てていた。
「ご協力感謝致します!、詳しいご説明は私が村に帰った際致します。では!」
矢継ぎ早にファスも走り出したリグレは開いた口が塞がらないと言った様子でこちらを見ている。
「本当にありがとうございます!貴方達は娘のいや村の恩人です!」
俺と夜天羅に熱烈な握手をする、自体が飲み込めず少し困惑するがあの魔物がえらく悪さをしていたのだけは予想がつく。
まぁ…なんか上手くいってるっぽいしいいか、夜天羅を見ると同じ様な表情をしていた。
それからリグレとリリーを先頭に皆で歩き出すと割と村に程近い場所まで来ていた様で15分ほど歩くと村が見えて来た入り口には細目の髭を蓄えた中年の兵士が立っておりこちらに視線を向ける。
「ご苦労様です、タリス」
「いえいえ、リリーちゃん見つかってよかったですなぁ…所で後ろのお二人は?」
リグレとリリーを確認した後俺達に視線を向けられる…やはり夜天羅に向ける視線は珍しさだ、この世界ではやはり魔族は珍しいのだろう。
「タリス!このお二人は”あの魔物”を討伐してくださったんだ」
嬉々として話すリグレにタリスは驚きの表情を見せる。
「なんと…吉報ですなぁ…まだお若いのにお強い、それに魔族の方が私どもに協力してくれるとは驚きました。私からもお礼を。」
兵士、タリスが胸に手を当ててお辞儀をする、魔族は多種族と交流していないのか?事情がわからず推測するしかできないそれにしてもあの魔物は強かっったのか?
「リリー!!!」
突如、女性の大声が聞こえて来た視線が否応なしにそちらに向く立っていた女性はズンズンとこちらへ向かってくる…ふとリリーを見ると青い顔をしていた。
その反応であぁリリーの母親だろうと察せられる、リリーの元まで来た母親はリリーを抱きしめた。
「もう!アンタって子は心配したんだからね!」
「ごめんなさいママ!」
その光景を見て二人して和んでいたがリグレさんの表情は何か…おかしい気がした。
「それはそれとして…ママの言いつけ破ったでしょー!!!」
雷が落ちた、先ほどまで和んでいた光景から一変、めちゃくちゃ怒られるリリー…なんだか幼少に怒られた記憶が引き摺り出されて居た堪れなくなった。
まぁ…仕方がないリリー…甘んじて母の愛を受けるといい。
親子の再会、リリーへの対応から厳しくも愛情あるよい母親なんだと感じる。
「セ、セイナ…その辺で、客人の前だし」
リグレさんはおずおずとリリーの母、セイナに話しかける。
「貴方は!リリーに甘すぎます!たまには…」
そこでハッとなり俺たち二人に気がついた。
「やだ、すみません、お見苦しいモノをアナタこのお2人は?」
リグレさんはセイナさんに対して経緯を説明。
「お礼が遅れてすみません、私はセイナと申しますリリーの事ありがとうございます!大したお礼はできませんが…私どもの家にどうぞ」
カルステ一家の後ろをついて行き村に入る、コイスケはリリーと遊びながら歩いている…気遣っているんだろうか?
入り口近くだからだろうか兵士の詰め所に酒場や飲食店があり詰め所では何やらバタバタと兵士が忙しそうに準備をしていた。
詰め所を通り過ぎると家が間隔を空けて建てられていた、住宅地だろうか通行人がまばらにいる程度だ、通行人の視線がチラチラとこちらに向けられる。
よそ者が珍しいというよりやはり夜天羅が珍しい様子、村の住宅地を抜けた先には小規模な市場があり日本で想像される市場ではなく野菜、肉、など食品全般の店が立ち並ぶ。
人でごった返すほどではないが人で賑わい過疎ではない事が見て取れる、ここが村の台所なんだろう。
「ささ、ヨリツグさん、ヤテンラさん私どもの家はこちらへここが私どもの家になります」
市場から少し離れた場所にある一軒の仕立て屋、リグレさんがそのドアの鍵を開けて先にセイナさん、リリーが入っていく。
「リグレさん、この子は大丈夫ですか?」
コイスケを抱っこして尋ねる。
にゃうにゃにゃ!
人の家、それもお店となれば許可を得るのは必須、俺と夜天羅はコイスケがイタズラをしない事を知っていて信頼しているがリグレさんからはそうではない。
「えぇ、大丈夫ですよ!道中娘の相手をしてくださいました、この子も恩人です」
「ありがとうございます」
それを聞き感謝を述べ俺と夜天羅も店の中へお邪魔した。
「お邪魔します」
「お邪魔しますのじゃ」
中には様々な洋服がディスプレイされており男女どちらの服も豊かな在庫がある、さらに他のから取り寄せをしているのか靴やバッグなどの関連商品が少量置かれていた。
店の一番目に着く場所にリグレさんの趣味なのかシックなホールクロックが目に映る、一定の間隔でゆらゆらと振り子が揺れていた。
「これ全部、リグレさんが?」
二人で店内を散策、仕立て屋はオーダーメイドのイメージが強いがここは手広くしているみたいだ。
「妻と二人で製作したものが殆どです。」
「ほーすごいのう」
夜天羅は興味津々で服を見ている。
「お二人とも旅をされているそうで、よければ先に汗を流されては?」
リグレは店の奥にある帳場の扉を開ける、店の奥が家族の生活圏。
「リリーちゃんは?」
ありがたい提案だがリリーが先だろうとリグレさんに尋ねた。
「娘は先に近くの治療院へ妻と一緒に向かうのでお気遣いなく。」
「わかりました…ありがとうございます、じゃあ、夜天羅から先に頂いてきたら?」
服を見ていた夜天羅に声を掛けて先にお風呂を譲る。
「よいのか?」
「あぁ、俺は後でも大丈夫。」
「じゃあ先に入らせてもらうのじゃ、リグレ殿も感謝するのじゃ」
「いえいえ、妻がまだいるので入浴室へ案内してくれます」
夜天羅は感謝を告げて扉へ入っていく、必然とリグレさんと二人きりになる。




