第二十三録:オーザンガールへ 一節「レーヴァテイン」
ウルと別れた俺たちはアルカラドから出て森の中。
馬車を借りようとした時にドロシーから
呼び止められてこう言われた。
「ヨリツグ!ヨリツグ!レーヴァテイン!
ドロシーの代わりに運転して!」
「俺が…運転?」
んにゃ?にゃんにゃ!
屈んで体勢を低くしドロシーに目線を
合わせるついでの様に俺の肩に乗るコイスケ。
原付すら運転した事のない俺がレーヴァテインを運転なんて…。
「うん!ドロシーじゃあまだ動かせないの!呼べるだけ!」
「うむ?…呼べるが動かせないのじゃ?それはおかしいのう」
まさか…あの操縦が可能っていうのは
ドロシーにってことじゃないのか?…
いや、そうかあの時点でドロシーにレーヴァテインを
動かすことが出来るならなりふりかまわず無茶をしてしまう
そうならない様に託した俺たちに操縦を任せたのか。
「…よし、わかった!とりあえず近くの森へ行こうか」
「わかった!早く!早く!」
パタパタと忙しなく動き回るドロシー。
本当に幼な子の様だ、この世界じゃ機械による学習ができない
だからドロシーにはゆっくりと知識をつけてもらう必要がある。
「あっ!」
ドロシーの車輪が何かに引っかかり宙に浮く
そのまま地面へ激突──とはならず夜天羅が空中でキャッチし抱き上げる。
「これこれ、危ないのじゃよドロシー」
「…ヤテンラ!ヤテンラ!ありがとう!」
一瞬、ドロシーが固まった気がした
…転倒しかけてびっくりしたんだろうか?
そんな一悶着もありつつ、俺たちはアルカラドを出て森に来た。
「…改めてみるとすげーロボット」
木漏れ日が差す穏やかな森の中にSFチックな戦闘機という違和感。
実際の戦闘機より一回り小さく乗る場所が見当たらない
どうしたものかと思いノーズ部分を触った、するとレーヴァテインが反応。
[…生体を検知、ヨリツグ、ヤテンラ、猫の
三体を検知ドロシーの保護者と認定。
レーヴァテインの操縦を許可します、操作モードを変更]
アナウンスがそう告げるや否やガシャガシャと
音を立てて変形するレーヴァテイン。
人形へではなく戦闘機を人が操縦できる様に自らを改造している。
ものの数分で改造が完了した。
機首部分やや後ろに露出した複座式の搭乗席が出来上がった。
「ほー…すんごいのう」
思わず感嘆の声を上げる夜天羅。
その気持ちは俺もよくわかる…しかし恵まれている
これで馬車などは利用せず自前での移動手段をが手に入った。
「…どう運転すりゃいいんだ?」
目下の問題はこれだ、初見のしかも空を飛ぶ乗り物…
飛行機などは車とは違い操縦難易度はめちゃくちゃに高い。
「ヨリツグ!ヨリツグ!」
「どうした?ドロシー」
「直感!直感!」
驚きドロシーへ視線を向けると笑顔で
手をパタパタさせている…
なんて無茶振りをするんだこの子は
俺はまだ死にたくない。
夜天羅も目線でやめろと訴え掛ける。
「…ドロシー直感は大事だが今は違うかな」
「えー!」
えーじゃない。
だけど乗って見ないことにはわからない事があるのも確かだ
俺は恐る恐るレーヴァテインの操縦席に
跨り夜天羅は後ろの副座席に乗る。
おお…なんだか感動している自分がいる。
心の男児の部分をくすぐって仕方がない。
試しに左右にある操縦ハンドルを握ってみる。
「お前様…?」
「…なんか、いける気がする!」
「ダメじゃからな?絶対にダメじゃからな?」
夜天羅からの注意…これがお笑いなら完璧なフリではある。
「フリでもないからの?」
…考えている事が筒抜けである。
夜天羅も現代に馴染んだ様で嬉しいよ
ピコン、電子音が耳に入ってきた。
目の前にあるハンドルの真ん中の液晶に文字が表示される。
"操縦説明"
どうやらチュートリアルがある親切な設計らしい
画面をタップすると説明が始まる。
俺は真剣に操縦の仕方を進めていく、シンプルな操縦方法だ。
「一通りは大丈夫そうだが試していいか?」
「…わかったのじゃ、お前様を信じるのじゃ」
うにゃんにゃにゃん!
「じゃあ…全員しっかり捕まってろよ!」
俺はそう注意すると右ペダルを慎重に踏み込む
風を巻き上げ機体はゆっくりと上昇してゆく。
そして俺たちは木々を抜け出す
次に両手のレバーを握ると前進してゆく。
ゆっくりとスピードを上げていき40キロに達する。
「ほー!凄いのう!お前様の運転も初めてじゃないみたいじゃ!」
「ヨリツグ!ヨリツグ?」
後ろで夜天羅とドロシーが声を掛けてくれるが
俺はそれどころではない、楽しいのは楽しい。
だがやはり怖さもある…運転に集中する。
地球とは違い空は鳥や飛行する魔物だけしかいない
邪魔が入らないのは救いだ




