第二十二録:問題提起 三節「選択」
──ゴルドーさんとの話し合いが終わり
俺たち全員はギルドの貸し個室に集まった。
議題はもちろん今後のこと。
「ウル…俺たちの次の目的地はオーザンガールだお前だは?」
「僕たちはカルラス帝国だね!」
「獣人の国…じゃったか?」
「…そうですわね」
心なしか雰囲気が暗い。
そんな中ブランカが口火を切る。
「…ねぇウル!ヤテンラとヨリツグを
このままにしてもいいの!?」
…ブランカの気持ちはありがたい
ウルたちがいれば困難はないだろう。
しかしだ、ウルたちの旅を邪魔するわけにはいかない。
ウルと話していた時、俺はなぜ
真実の鏡を求めているか聞いたことがある。
──「なぁ真実の鏡を探してるけどなんでだ?」
アルカラドへ帰る最中、傷が回復した俺とウル
二人で夜間の火の番をしていた。夜天羅たちは就寝中。
パチパチと弾ける薪を見ながら雑談混じりに問う。
「気になるかい?」
「まぁな、本気で探しているだろ?」
ウルが鏡を本気で求めているのはその態度でわかる
今回の鏡は目的のものではなかったとわかった時
表に出さなかったが本気で落胆していた。
「…証明するためさ。僕の恋人たちは
重いものを背負っている。人に同種にすら迫害された…
そんな彼女たちに証明してやりたいのさ!君たちは美しいとね!」
「…心のしこりってやつか」
「まぁそんなとこだね!」
ウルは他者に証明する気はない
ブランカ、レミリア、ネローズたち本人に証明をする
どうだ、君たちは美しい!それを誰がどう見ても
本人たちでさえ否定できないほどに。
正直…気持ちはわかる、夜天羅にも当てはまる
「大変な旅だな…」
「ハハ!そうでもないさ!楽しい旅だよ」
「早く見つかるといいな」
「だね!」
会話が終わり心地よい沈黙の中…パチパチと燃える火を眺める。
…俺はこの時から予感はしていた
ウルたちとはアルカラドで別れると。
必然ではある、互いの目的が違うのだ
今はただ道が交わっただけ。
──「ブランカ…気持ちはわかりますわ
でもわたくしたちが居てはだめなんですの」
「な、なんで!?みんなで居た方があんしんだよ!?」
ブランカの意見は一理あるだが今回はそれが逆に駄目なんだ。
「そうもいかないのが現状よね…
ヨリツグやヤテンラと旅をしたとするわ
そうすると教会に難癖をつけられるのよ特に私たちはね…」
第三者から見れば半悪魔、神殺し、魔王ノ宿木…
国や教会が黙っていられないメンツなのは確かだ
…ここに突かれる可能性が高い。
そうなればウルたちも巻き添えだ、それは絶対に避けたい。
ブランカはその事実に気がついたのか耳をへたらせて寂しそうな顔をする。
「ハハ!ここで別れたとしても旅をしていればそのうち会えるさ!」
ブランカの頭を撫でるウル。
レミリア、ネローズも二人でブランカを慰めている。
「せっかく…仲間と思える人に出会ったのに…あんまりだよ…」
「ブランカ…ありがとうなんじゃ」
「気持ちは受け取っておく、ありがとな」
「ウルたちはいつ街を出るんだ」
「そうだね…今の状況だと長居は無用、3日後に乗合馬車で行こうかな!」
最速で準備をして3日、俺と夜天羅が準備をしても多分それくらいにはなるな…
「3日か…なら見送りくらいはするぜ」
「ハハ!ありがたいね!」
「さて!辛気臭いのは終わりよ!」
ネローズが2回手を叩く。
その通りだな…いつまでもこの雰囲気じゃ息が詰まる
俺たちは気分を切り替える。
「なら何か食べれば気分も変わると言うものさ!」
「いいな、甘いものでも食べようぜ」
「ぱんけーき!!」
ブランカは甘いものと聞き気分が戻ってきたようだ
一番元気な奴が元気になれば自然と周りも引っ張られるものだ
「いいですわね」
「パンケーキ!パンケーキ?」
ドロシーは首を傾げる
人の名前だと思っているんだろう、それに気づいた夜天羅
「食べ物の名前じゃよ」
「パンケーキ!食べ物!!」
「甘くておいしーよ!」
それから個室を後にして街に繰り出す。
…これが最後のウルたちとの食事になるだろう。




