第二十二録:問題提起 一節「魔王の素質」
──無事に俺たちはアルカラドへ帰る事ができた
俺の負傷も道中で回復する。
先にギルドへ依頼の達成報告を済ます
ギルドから離れ適当な店に入り休む暇なく直ぐに話し合いを始める。
「…まずはすまない、面倒な事に巻き込んで」
「ハハ!これは仕方がないさ!僕たちは気にしてないよ」
「災難と言わざる得ない事ですわ」
「そう言ってくれると助かるのじゃ」
「ヤテンラ!ヤテンラ悪くない!」
「だよねー!!」
にゃんにゃー
夜天羅の膝の上でピコピコと両手を振るドロシー
それに相槌を打つブランカ
俺の肩に乗るコイスケも励ます様に鳴く。
「…にしてもなんで教会は夜天羅…というよりは
多分魔族を敵視してんだ?魔王戦争は
かなり昔なんだよな?逆ならまだしも…」
「それは教会内でもごく一部の過激な信者によるものだね!」
「そんな奴らが?」
「ヨハンナ過激派ね…」
「ヨハンナ教皇、リフロディア教の
初代教皇ですわ…魔法戦争における五大英雄の1人。」
「父親の手記ではそのヨハンナが後世に
魔王が再び訪れると予言をしたのよ」
ネローズはコーヒーのカップを
見つめながら話す、その様子はどこか変だった。
「それを今でも信用していると…」
「客観的な事実を言えば予言は半分当たりよ
魔王ノ宿木を持つヤテンラが現れた訳だし
…ただ当たってない部分が重要よね」
「あぁ…夜天羅は魔王なんぞになる義理も必要もない」
夜天羅は夜天羅だ、それに魔王ノ宿木に困っている…
こんなもの必要ない、なのに手放したくても手放せない。
ブランカは手を挙げてから言葉を発する
「はい!前にてきごうしてないってネローズ言ってたよね?」
「えぇ、そうね予測だけど」
「ならさー!この世界の魔族に返したりできないのー!」
…全員で顔を見合わせる、その発想はなかった
そうか、他の適合者である魔族にに返せばいい
だが…簡単にはいかない、問題がいくつかある
「そうね、出来れば一番ね」
「無理なのー?」
「わからないですわ魔王ノ宿木の
選別条件、譲渡の可否、全てが不明ですの」
「唯一、判明してる譲渡条件が──」
「持ち主の死じゃな…」
「そっかぁ…」
ブランカの耳がぺたんと折れてへたれる。
いい案であるが不明点が多い、それに不明点が
解決して譲渡が可能になっても
適合者を探し出す手間と拒否されれば終わりだ。
話が振り出し…よりは停滞してしまう。
魔王ノ宿木に関しては
今話した以上の事は何も話せない、情報もない。
しかしもう一つ議題がある。
「あの騎士たちは味方…だよな?」
「だと思うけどね!わざわざ僕たちに内緒話をするくらいだからね」
「のう…国と教会は仲が悪いなかのう?」
あの時、全員が騎士たちの教会へ嫌悪感を感じとっていた。
「いえ…良好な関係と認識していますわ」
「あの反応は異常よ、それにわざわざ私たちを逃したのは
多分、あの場に教会のヤツが潜り込んでたんじゃないかしら?」
「…表向きは教会側についた、ということなんですの?」
「だろうさ!彼らは教会に協力する義務がある」
「……騎士協定ですわね」
「なんじゃそれ?」
「簡単に言えば兵の派遣ですわ
互いの軍に助力を求めることができますの」
俺の世界で言うところの安全保障条約に近いものか…
国の騎士はそれに従事しなければならない
教会に非がなければ突っぱねる事もできないだろう。
「うーん!モヤモヤするー!!」
ブランカは駄々っ子のような声を上げる。
考えるのに疲れた様子だ。
でもその気持ちもよくわかる
現状を整理したが分からない事が多い。
国と騎士の思惑、教会の動向…
特に教会だ、夜天羅をどうしたいのかわからない
わざわざ回りくどい方法で魔王ノ宿木を判明させた…
夜天羅を殺したいのなら直接仕掛ければいい
霜田を使った理由がわからない。
「今はあの騎士たち…ロッカとリブラーを待つしかないね
僕たちは目立つからすぐに見つけるだろうさ!」
「…だな」
「じゃあ!ごはん食べよー!!」
「そうですわね…休息は必要ですわ」
メニューを開き各々が食事を注文する。
しばらくして俺たちは運ばれてきた
食事を食べて一先ず解散した。




