余談「箱の中の世界」
「ほー…この板がテレビとやらなんじゃな」
「そうそう、夜天羅もこの時代に慣れて来たしね」
─夜天羅がはなれの書院で生活をする様になって2ヶ月
今までは本などで暇を潰しておりそれだけでは退屈だろうとTVを置いた。
今日まで置かなかったのは彼女を混乱させないため…
タイムスリップして来た夜天羅にはTVや映画は
刺激が強すぎると徐々に現代のことを学んでもらった。
「?この小さい板はなんじゃ?」
「コレはリモコン、こっちの本体を操作できるんだよ。こんな感じでね。」
試しにTVの赤いボタンを押して
電源を入れて実演する、映ったのは土曜のワイドショー。
芸能人のロケの様子が映し出される。
「ほう!すごいのう!人が映っとんじゃ!」
夜天羅はTVをぐるりと一周する、俺は座りその新鮮な様子を眺める。
「夜天羅、来て」
「なんじゃ〜?」
彼女を手招きする、直ぐに俺の元へ来てくれ隣…俺の体に密着する。
すごい近い…やはりドキドキと心臓が早鐘を打つ、まだこの距離に慣れない。
「こ、コイツの使い方をざっくり説明するよ」
気を取り直してリモコンの使い方を説明
といってもいきなり全部を教えても頭がパンクする
一先ずは電源のオンオフ、チャンネルを説明。
…本当は動画のサブスクも入っているが今回は基礎だけにとどめる。
「ふむふむ…色んな番組?があるんじゃな…」
手渡した新聞の番組表を見ている夜天羅。
番組表はTVは見れるが今はこっちの方がいいだろう。
「土日のこの時間はあまり派手な番組はないがなんか気になる奴あるか?」
「うーむ…これはなんじゃ?」
夜天羅が新聞を指差す、その番組は"大格闘!黒いダイヤの夢!!"
「漁師の番組だな」
チャンネルを回して該当の番組を映す
画面は荒い海が映し出され船が激しく揺られる
「おー!?す、すごいのう!」
俺たちとっては当たり前のTVの映像。
だが夜天羅とっては全てが新鮮で刺激的だ。
しばらくは興味深々でTVに齧り付く夜天羅。
その間も俺の腕を抱いて密着していた。
…ぜんっぜん集中できねぇ
いやある意味腕の感覚に集中してしまっている。
その日は土曜ということもあり
書院で寝泊まりをする、もちろん布団は別々だ。
健全なお付き合いをしているからな。
夜が更け太陽が昇り始めた早朝。
「…すぅ…すぅ」
俺の間隣でなんらなは軽く抱きついているのは夜天羅だ。
まぁ…書院の朝はこうなる。
寝相が悪いのか、夜起きた時に間違えるのか…
俺は起こさない様にそっと起き上がる。
背伸びをして休日のため軽い朝支度を済ませた
いつもはランニングや朝の鍛錬をするが
土日や祝日は夜天羅と過ごすと決めている。
「んぁ…」
のそりと夜天羅が起き上がる。
彼女はまだ意識が覚醒しきっていないのか
ボーとしていた。
「おはよう、夜天羅」
「お前様…」
「…うおっ」
俺は夜天羅に近づくすると彼女は
俺の胸元へ顔を埋め始めた…これもいつもの事。
だが惚れている異性にこんな甘えられるのは俺にはまだ刺激が強い。
夜天羅が満足するまでそのままにしておく
10分ほどで意識が覚醒すると。
「おはよう!お前様」
「あぁ」
変わらず抱きついたままだが顔だけを上げる
笑顔の彼女が目に映る、眩しいほどの笑顔。
かわいっ…
夜天羅が朝の支度を済ませている間に
俺と両親が住む家に行き朝食を調達。
「いただきます」
「いただきますじゃ〜」
二人で朝食を囲む、TVのニュースを
BGMに会話を楽しみながら進む。
食事が終わり片付けも終わらせて
穏やかなゆったりした時間が流れる。
ふと夜天羅がTVのチャンネル変えた。
軽快な音楽が流れる"仮面ニンジャ!"タイトルが
映し出された。朝の特撮番組。
「ほう!お前様!お前様!なんじゃこれ!」
少し興奮気味で声を掛けてくる。
…意外にこういうのが好きなんだろうか?
「あぁ…これ──」
朝の子供向け番組だよと言葉を続けようとしたが
悪い考えが頭をよぎる、やめようと考えたのは一瞬。
いたずら心が抑えきれなかった。
「…昨日の海の番組あっただろ?」
「ドキュメンタリーというやつじゃな?」
「これもそれだよ街を守る人たちの活躍を
国民にエンタメとして見せているんだ」
かなり嘘である。軽い冗談のつもりだったが─
「ほー!そうなんじゃな!」
「えっ」
信じてしまった、いやこういう展開を望んだのは
俺だが今になって急に罪悪感が湧いてくる。
「夜天羅、実は──」
「すごいのう!まるで戦国時代の妖術師みたいじゃ!」
なんて?過去の武士たちは
こんな…戦闘を繰り広げていたのか?魔境じゃねぇか。
そうして特撮番組が終わったが
俺は失念していた…もう一つあることを。
続いて戦隊モノが始まってまった。
「!巨大なカラクリじゃ!伽藍菩薩を思い出すのう!」
やばい…昔の日本どうなってんだよ!?
巨大ロボまでいたらいよいよだろ!
「お前様!すごいのう!」
「あ、あぁ…」
色々驚いてしまって嘘を訂正し忘れる。
そして全ての特撮番組が終わった。
「いやぁ!こんな猛者がいればこの国は安泰じゃな!お前様!」
「お、おう」
この日から…夜天羅がスマホを手にする数ヶ月間
お袋と通話をするまでこの嘘を訂正を忘れてしまい
バレたお袋にまあまあ叱られる
親父は過呼吸になるぐらい爆笑していた。
お袋曰く
「びっくりしたわよ!?夜天羅ちゃんが
急にロボの話し出すから慌てちゃったわ!」
俺は夜天羅にも謝り2週間高いアイスを献上することで許された。
閲覧ありがとうございます!
明日も余談の投稿になります、よろしくお願いします。




